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マレーシア留学のリスクと「3つの心構え」
コロナ明けから、マレーシア留学はとても活況の様子。きっとこれを読んでいる方にも、マレーシア留学を検討中・マレーシアのインターナショナルスクールを選択中・インターナショナルスクール決定でもうすぐ渡航……という方もいらっしゃるのかな、と思います。
マレーシア教育移住の現在の人気ぶりは、統計的な数字はまだ出ていないと思いますが、渡航が解禁された昨年夏以降、コロナ前の2~3倍の母子留学・単身留学生がマレーシア入りしている実感がある、と関係者の間でいわれています。また、加えて留学生の「低年齢化」が進んでいると語られていて、現在のボリュームゾーンは小学校3年生前後だといいます。
SNSでのにぎわいも増し、これから数年はますますマレーシアで学ぶ日本人の子どもが増える予兆がありますね。
私も、2人の子どもを連れての3年間のマレーシア母子留学を経験していますが、楽しく、得るものが多い体験で「マレーシア留学そのもの」は非常に価値あるものになりうると考えています。マレーシア教育移住を終えた今となっても思い入れたっぷり(今はカナダにいます)、友人・知人・先生方に感謝の気持ちでいっぱいで、引き続き親しくお付き合いさせていただいています。
そして、これからチャレンジする方を応援したい気持ちでいっぱいです。
(一方で、チャレンジしたいけど今はできない、という方も、そんなに残念がることも焦る必要もないとも思っています。留学は、子どもが望めば、いつか何らかの形で必ずできるものですし、今すぐ海外に出なくてもできることは山ほどあります。日本は世界的に見て教育水準が高く、教育リソースがめちゃくちゃ豊富な国であることを低く見積る必要はないのです)
そこで、「マレーシア留学」をより充実させ、後悔のない選択ができるようにおすすめしたい心構えを、個人的な実体験と、これまでさまざまな人・学校と出あい、数々の留学セミナーや教育セミナーや書籍から学び、心理学をかじったりした経験などから、お伝えしたいと思います。
マレーシア留学のリスクと「3つの心構え」
マレーシア留学は素晴らしい経験。しかしながら、何事も「万人にとって素晴らしい」ものはないわけで、
「安さにつられたマレーシア留学」
「子どもの意思を無視したマレーシア留学」
「無意識に日本の教育水準を常識として期待していくマレーシア留学」
は、必ずしも納得のいく結果をもたらさないと危機感を感じてもいます。
私がおすすめしたい3つの心構えは、「目的」「出口戦略」そして「プランB」です。
目的:「何を主目的としてマレーシアに留学するのか」
多様な文化や人種の中に身を置いて暮らす体験を子どもにさせたい?
子どもが英語ができるようにさせたい?
中学受験を回避したい?
日本の教育システムに疑問があり、そこから出たい?
日本以外の世界を見せたい?
常夏の国でのんびりと開放的で身軽な数年をすごしたい?
地震や原発の不安から逃れたい?
「ここではないどこか」に行って自由になりたい?
それは本当の気持ちで真の目的か、
それはマレーシア留学で適うものなのか、それ以外の方法が最適ではないのか。
そのためのリスクを無視してはいないか。
「得たいベネフィット」と「失うもののリスク」を紙に書き出して考えてみるといいです。
マレーシア留学を志していると、「英語ができるようになり、子どもの将来の選択肢が広がる」、「日本の窮屈さから逃れた自由さ」、「子どもの自己肯定感が高まる」、「多文化の中で生き、寛容な人々」、「常夏の開放的な気候」など、「人生そのものが輝く!」というキラキラな情報が目に入りがちですが、確実にリスクもあります。
考え得る具体的なリスクについてはまた改めますが、「我が家にとってリスクって何だろう、代償ってなんだろう」ということは意識が必要です。リスク要素がわかれば回避もできます。
A4のコピー用紙の真ん中に線を引き、左にキラキラなポジティブ情報や期待・右側にネガティブ要素や懸念・リスクを書き出して考えてみるようにしましょう。
(懸念・リスク・デメリットについては、こちらの別記事で書きました)
出口戦略:「その目的に応じて、いつ・どの状態でマレーシアを出るのか」
マレーシアは永住権の取りやすい国ではないので、母子留学や単身留学の多くの人にとって通過点となります。
とくに低年齢で行く場合、何年をマレーシアで過ごすかはあまり決めずにいくことも多いと思いますが(低年齢ならそれでよいと思います)、小学校高学年にさしかかるタイミングなら一応「出口のカタチ」をイメージしておく方がいいかな、と考えています。また、中学生・高校生であれば現実的な戦略と準備、適性が必要です。
「出口戦略」はひとつに決める必要はないですが、「1年後ならこの状態」「2年後ならこの状態」と、タイミングと状態のバランスを考えて、それによって得られるメリットと失うもののバランスを考えてみるといいです。
よくある「出口」のひとつに、「帰国子女枠受験で日本の教育システムに戻る」がありますが、これも中学校受験・高校受験・大学受験で事情も受け入れ校の多さも難易度も変わります。
さらにこれから先、「インターナショナルスクール卒業・アジア圏留学帰り・英検等資格保持者」で「帰国子女枠受験ができる人」が増えることが予想されるので、なんとなく動向をチェックしておくといいかもしれません。
現状では、特に東京では「帰国子女枠の中学受験」は「英語力・学力インフレ」が起こっていて、誰でもその学校名を知っているような有名校は超難関校となり「ネイティブをも凌駕するズバ抜けた英語力」と「高いアカデミックレベル」と「自己表現力」を兼ね備えていないと難しくなってきています。
(「英語圏で5年も10年も過ごした外交官の子ども」とか「大都市TOKYOの優れた教育リソースを使って学校外でも惜しみなく学んだ国内インター生」とかと同じ土俵で受験すると考えると、東南アジアで数年過ごす間にどんな強みをつけられるのか長期視点で意識的に考えないとな、という感じがしますよね。とはいえ、なにもそこの「競争」に加わる必要もないのですが、加わるのであればそれが実態、ということですね)
東京以外でも、「国際化」する学校や「オルタナティブ教育」を掲げる学校が日本全国でみると増えてきていますが、地域を絞ると選択肢は少ないのが現状かな、という気がします。
その「出口」を考えている方は、気にしてアンテナを張っておくといいかもしれませんね。私もまた気づいたことなどをnoteにまとめていきます。
プランB:「それが予定通りに行かなかった場合の代案」
初めての海外留学(いえ、初めてでなくても)、思い通りにいくことばかりではありません。
こうだと思っていたけど、うまくいかなかった!
これは想定外!
まさか子どもがこうなるとは!
というときに臨機応変に対応できるよう、そして「想定外」をなるべく減らすよう、予めイメージしておくといいです。
実際、特に2年以上の留学を実行した人の中で「プランBって大事!」(考えておいてよかった/考えておくべきだった)という実感のある声はよく聞かれます。
例えば、「子どもが新しい学校でHappyでないようだ」とか「英語が思ったより伸びない」というときの「プランB」。
どういう対策を取るのか。対策を取るための原因を探るには何が必要かを意識しておくといいです。(具体的には、子どもと対話すること、学校と対話することが対策の第一歩です)
また例えば、「小5あたりまでマレーシアで過ごして帰国生枠で中学入試を狙う」という主目的の場合。
「英語力の伸びと子どもの満足度が期待値より低ければ〇年生までに帰国して日本で中学受験に備える/地元中学校に馴染めるよう地元小学校に入る」
とか、
「子どもが英国式インターに上手くハマったらマレーシアでIGCSE(※イギリス式の教育の中等教育修了認定)まで受けて、その成績次第で次の一手を考える。その判断をするのは〇歳時点、その場合の費用はいつまでにどれくらい用意する」
などという感じです。
親の意思と子どもの意思のどちらにどれくらい重きを置くのかも、年齢や家庭によってそれぞれでしょう。
他国に住む、ということは(特に世界的に非常に稀なほどなにもかもが整っていて便利で信頼できる日本が自国である場合)、ただでさえ面倒なことの連続です。おまけに母子留学で完全ワンオペになるとしたら、なおさらです。
そんな日々の雑事の中でも迷わず判断していけるだけの基本ラインは、予め家族でよく話し合い、子どもの気持ちも把握しておくとよいと思います。
3つの心構えで、ブレない留学を
海外生活は、ときには理不尽なことも起こるし、自分に落ち度が全くなくても損害を被ることだってあり得ます。さまざまなリスクがあり、それらを「お金で解決」したり快適さや便利さやスピードを「お金で買う」ために想定外の費用がかかることも多々あります。
自分が必要以上の不利益を被らないための交渉術も必要でしょうし、内心ではそうしたあれこれを考えてイライラもやもやしたとしても、落ち着いて穏やかに接する国際的マナーも必要です。
(日本では「お客様は神様」でゴネたり怒って見せたり大声で主張したりすれば優先してもらえる「ゴネ得」なことも多いですが、マレーシアをはじめ海外でそれをやるとほぼ確実に無視されるようになるか、対応の優先順位を落とされます)
そうした「想定外」のときにもにブレない判断をするために、「目的」「出口戦略」そして「プランB」をよく考えてから留学を実行することを強くおすすめしたいです。
目的や計画は時間の経過とともに変わっていくことがあるでしょう。もちろんそれでいいのですが、「絶対変わらないであろう軸」「譲れない優先順位」「今の気持ち」がどうであるのか、自分として、子どもの意思として、家族の共通認識として、それぞれ意識的に考えることは大切です。
アジアと北米の「教育移住2か国目」の視点でこれからもいろいろシェアしていきます。よかったらnote/Twitterのフォローをお願いします。
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