「教育移住でみんながハマる落とし穴」にハマらない学校選びの4つのコツ
マレーシアで2年半ほどバイリンガル子育てをしているYurikoです。
マレーシア在住の編集者&文筆家、野本響子さんのVoicyの、「東南アジアから未来が見えるラジオ」の#16「教育移住でみんながハマる落とし穴」を聞きました。
(15分くらいサラッと聞けて、今後海外での教育機会を選択肢として考えている人にとって知っておいた方がいいお話だったので、そういった方はぜひ本編を聞いてみてください)
我が子は2年半前に、マレーシアのインターナショナルスクール(小学校)に入学したのですが、そこで
「入学時にああすればよかった」と少し後悔したこと
「いいと思ったのによくなかった」と思ったこと
「こういう視点は抜けていたな」と入学した後に気づいたこと
などを思い出したので、これからマレーシアのインターナショナルスクールを目指す方の参考になればな、と思って、書いてみます。
同じクラスに日本人がいるといいの?悪いの?
まずはこのポイント。もちろんこれは、善し悪しです。それぞれのメリット・デメリットについて2年半の実体験から考えたことを書いてみます。
メリットについて考えてみます。
と、実はメリットもいろいろあります。
子どもの毎日の生活にとって、学校の友達はとても大きな存在です。
全く新しい環境でも、日本語で気軽に話せる友達がいることで、「楽しい!」という前向きな気持ちになれるのはいちばんのメリットでしょう。
(特に自らの意志でなく親の意志や都合で来た場合には)
親にとっても、子どもが毎日泣いて帰ってきたり、つまらないと暗い顔をしていると辛いもの。毎日を楽しんでくれている、と思えるのは親の心の平穏にもつながります。
しかし、当然デメリットもあります。
「英語が上達しづらい」ということ以外に、私の経験では、以下が大きいデメリットだと思っています。
言葉が通じるからって、気が合うわけじゃない
上記のメリットとして挙げたものは、実は諸刃の剣です。
日本人の(特に同性で似たような生活環境から来た)生徒が他にいれば、当然、まずはその子とお近づきになることでしょう。しかし、言葉が通じるからって、気が合うわけではありません。むしろ、言葉が通じる方が小さな面倒ごとが起きやすいです。
日本の学校では、ひとクラス30人前後の生徒がいる中から、気の合う子を選んで付き合いますよね。しかし、海外のインターナショナルスクールに来て日本人を見つけると、ただそこにいるというだけの限られた人と、気が合う合わないを度外視して、濃い密度で付き合うことになりがちです。
すると、小さな妬みや意地悪が起きやすいことがあります。
例えば、後から来た子が、先にいた日本人生徒のローカルの友達を含んだグループに入ったら、ローカル友達ととても仲良くなってしまったりした場合。先にいた方は「私の/ぼくの友達だったのに」「自分が紹介してあげたのに」と不満を持ち、嫉妬しやすいです。
また、後から来た子の方が英語や算数ができるなどの場合。「おまえの英語は下手だ」「何を言っているかわからない」など、隠れて意地悪を言ってくることがあります。
余計なトラブルを避けるためには、どうすれば?
中には、日本の教育の窮屈さが嫌で、自由でおおらかそうなマレーシアを目指す人もいると思いますが、一歩間違えると上記のようなもっと窮屈な状況にもなり得ますので注意が必要です。
そういう事態を招かないように、以下の対策をおすすめします。
■なるべく英語は学んでくる
やはり、いくらESL(English as a second languageの略。英語力が一般の授業についていけない子のための、「第二外国語としての英語」の授業)があるからといっても、英語で学ぶ環境にくるのだから、日本である程度話せるようになってくる方がもちろんいいです。
(ESLはできれば半年~1年以内で抜けることを目標にする方がいいです。ESLのクラスにいる以上、本流のEnglishのクラスに参加できないという損失が大きいからです)
目安としては、英検でいうと、年齢にもよりますが、小学校低~中学年で4級くらいとれるようにしておいて、オンライン英会話である程度の会話慣れをしておくと、さほど戸惑わずに学校生活をスタートできるんじゃないかな、と思います。
4級は、問題全体の6割程度正解できれば合格です。少し対策をすればまずまず受かりますし、4級に受かるくらいの英語力なら実生活でもまずまず役立ちます。
逆に言えば、4級に受かるくらいの英語力を日本でつける方法を探すこともできずに、いきなりマレーシアのインターに来るのはお金も時間ももったいないんじゃないかな、って思います。
(急に決まった場合を除き。英語ができなくても別になんとかはなりますから、事情があれば大丈夫なんですが)
うちの娘の場合でいうと、英語塾にも通っていましたが、英検前はこの本で家庭学習し、6歳で4級に合格しました。ムダがない良書で、おうちで模試のように使えます。リスニングテストのCD付き。Amazonでも長いことベストセラー1位になっています。
■日本人だからというだけの理由で飛びつかない
親としても、できれば英語を話す友達を作ってほしいもの。
でも、日本人とは付き合わないで外国人の友達を作りなさい、と子どもに指示するのも違います。
「日本人とか外国人とか、何語を話すかでなく、気の合う友達を見つけて付き合う方がいい」とうマインドがいいのではないでしょうか。日本でそうしているように。
「言葉が通じるからって気が合うこととイコールなわけじゃないよ、そこは気をつけようね」ということは予め伝えておくといいかもしれません。
気の合う度合いに合致した付き合いをしないと、あとあとが大変です。
一度濃密な関係になってから距離を取るのは、思ったよりも大変です。一気に近づきすぎず、ある程度時間をかけて親しいお友達になりましょう。(ママもです!)
■先生にお願いしておく
ある程度英語ができる子限定にはなってしまいますが、学校の先生に予め、「日本人以外の子をサポートでつけてほしい」と頼んでおくのも有効でしょう。そう申し出ない限り、学校は良かれと思って同じ国出身の子をサポートにつけてくることが多いです。
子ども本人が「英語できない」「怖い」などと苦手意識を持っていない限り、思い切ってトライしてみるのも一案かと思います。子ども同士って、結構すぐに通じ合います。たいがい、そういう役を買って出る子(先生から指名される子)はとっても親切でいい子なので、最初のお友達にぴったりです。
■得意なことを1つ身につけておく
○○ができる子、というのは友達が作りやすいですし、認識してもらいやすいです。
サッカーができる、ダンスが踊れる、アニメに詳しい、絵が上手い、楽器ができる、走るのが速い、動画編集ができる、その他日本的なこと(武道や書道など)、何でもいいのですが、なにか一つあるといいです。レベルは、高くなくて全く構いません。普通にできれば、認めてもらえます。
(マレーシアの子は、学校にも個人にもよりますが、一般的に屋外スポーツのレベルはあまり高くないです。暑い国なので、あまり外で遊ばないからです。運動に関しては、日本で中の下レベルでも、マレーシアなら中の上~上の下レベルになれたりします)
女の子だったら、おしゃれ、可愛い文具雑貨を持っている、なんかでも、きっかけになります。
あと、オンラインゲームはみんなやっていますので、「ゲームが上手い」は友達を作りやすいです。マレーシアの小中学校では、ゲームは身を助けます。
男の子の間で流行っているのは、年齢にもよりますが、マイクラ、フォートナイト、Roblox、ブロスタ(ブロウル・スターズ)、クラロワ(クラッシュ・ロワイヤル)、エイペックスレジェンズあたりでしょうか。最近では高学年以降だとヴァロラントも人気です。
女の子はマイクラ、Animal Crossing(どうぶつの森)をよく聞きます。あとは、携帯で遊べる無料ゲームのファッション系のとか、お絵かきアプリや、おしゃれな加工写真が撮れるカメラアプリなんかで遊んでいますね。
アニメは、鬼滅の刃(Damon Slayer)、進撃の巨人(Attack on Titan)、
呪術廻戦(Jujutu Kaisen)、などの新しめの作品だけでなく、ナルト(Naruto)、ワンピース(One-Piece)、らんま½(Ranma ½)そしてドラえもん(Doraemon)、ちびまる子ちゃん(Chibi Maruko-chan)、ドラゴンボール(Dragon Ball)、ジョジョの奇妙な冒険(JoJo's Bizarre Adventure)などのレジェンダリーな作品も人気。
日本で流行っているものは、たいがい人気ですので、知っていると話題のきっかけになります。
英語版の人気アニメマンガを持参するのもいいかも。
最近は「スパイ・ファミリー」や「ぼくのヒーローアカデミア」などが人気です。(上記リンクから試し読みできます)
「スパイ・ファミリー」などは、主人公のロイドの心の声の部分が多く、知的な話し方をするキャラなので、大人でも読みごたえがありますね。
「ヒロアカ」の方はスクールもので擬音なども多く、もう少し気楽に読めますが、長セリフもあるのでこちらもまずまずの読み応え。
Year5~7あたりで人体のことも生物でやりますから、「はたらく細胞」は実利も大きいマンガでおすすめ。
女の子には、すみっコぐらしは「Sumikko」としてマレーシアでも人気です。こちらでも売っていますが、偽物ちっくだったり2倍くらいの値段がしたりしますので、仲良くなった子にあげるようにあらかじめ、小さなキャラ小物を持参するのもおすすめです。(Tシャツなどのアパレルものよりも、文具や小物、おもちゃ系のほうがマレーシアで手に入りにくいのでおすすめ)
このように、ゲームや漫画も知識・経験、キャラクターグッズも会話のきっかけとして役立つ大切なツールです。
■親自身が、ローカルのママ友を作る
もちろん無理することはないのですが、親も、どうせ新しく知り合いや友達を作るなら、日本人ママとばかりつるまずローカルのお友達を作るといいです。理由は、子どもの場合と一緒です。
それに、ローカルはやはり情報量が全然違います。少し親しくなると、本当に役立つことを教えてくれます。
ローカルママ友の作り方は、また別のエントリで書きたいと思いますが、まずは、なるべく学校行事に参加するとか、コミュニティに貢献できるように心がけてみるといいんじゃないかな、と思います。
まずは笑顔であいさつができればOK!
■子どもの学年をズラす
日本では、1学年は4/2生まれ~4/1生まれ、という区切りですが、マレーシアの多くの9月始まりのインターでは9/1生まれ~8/31生まれという区切りで学年が決まります。
日本と半年くらいずれますから、英語力とお誕生日の時期によっては「学年をひとつ下げてもいいかもしれない」と思うことがあると思います。
学校は、学年を下げることをあまり勧めないこともありますが、私の個人的経験では、10歳を超えてから来るなら、一つ下げるのはアリだな、と思っています。もちろん、能力だけでなく体格、精神年齢など、総合的に見てバランスが合えばということですが。
なぜなら、小学校の英語は、Year3やYear4(7歳~9歳)頃から、基本的なことからライティングの技法などまで、徐々に高度なことを教わり始めるからです。この時期をちゃんと「English」のクラスで(ESLでなく)なるべくやっておくと後が楽だな、と実感しているので、理想的にはYear 4か Year 5あたりからEnglishのクラスに入れるといいなーと思います。
これは、マレーシアのインターに何年いるつもりなのかにもよりますし、絶対におすすめ、というわけではないですが、もし「一つ下の学年なら日本人がいない」などの条件も加わるのであれば、検討の価値ありだと思います。
入学時に意外に思いつかない点ですが、一つ下の学年の日本人の数や性別も入学前に聞いてみるか、授業を見学させてもらえるといいです。
クラスの担任との相性も大切な要素ではあるので、もし可能であるなら、入学前(編入学年を決める前)に候補学年の担任の先生と話せる機会があるとなおいいです。それにもし、その候補学年の中で、担任がローカルの先生かネイティブの先生か、という違いがあったりしたら、あとから「こっちにすればよかったかも!」って思うかもしれませんし。
■学校以外の場でも友達をつくる
日本でもやっていたスポーツや楽器の習い事、もしくは、マレーシアに来たならやってみたいコンピューティングやコーディングなど、何か習い事をして、学校外のお友達を作るのもおすすめです。
(もしくは、同じ学校の子と同じ習いごとをしても、親しくなるきっかけになる)
マレーシアは、ローカルの習い事ならとても安いものが多いので、日本よりもお月謝を気にせずどんどん試せます。「英語で学ぶ」経験の蓄積にも最適です。
英語そのものを習うのもいいですね。ローカルの子どもたちも、中華系・インド系などの子がたくさん、ランゲージセンターに習いに来ています。
英語で公文(Kumon)、なんていう選択肢もいいかも。
ローカルのママ友を作ることができれば、同じ習いごとでもレベルの高い教室、リーズナブルで教え方が上手な個人の先生、オンラインでできる人気塾など、有意義でお得ないろいろな情報を教えてもらえますよ。
じゃあ、日本人が一人もいない学校ならベスト?
日本人がいない、ということは、「普通の日本人が大丈夫な感じじゃないから」ということも。
例えば、施設が自分の思う学校らしくない(プールや体育館、図書室など当たり前だと思っていた設備がない、など)、トイレの様式があまりにも日本と違う、給食が全部辛い、特定の人種で占められていて日本人であることに疎外感を感じすぎる、とか。もちろん、本人や家族がそれをどう感じるかによるので、一概によしあしは語れませんが。
欧米の学校への留学と違って、マレーシアでは、日本人であることを理由に見下されることはまずないので、その点は安心できます。でも、「日本人が少ない学校を!」と探して見学に行ってみたら、少ない理由に納得して帰ってきたという声も多々あり、「やはりそこには理由があった」ということも。
日本人が一人もいない!ってだけで飛びつくのも、当然ながらリスクあり、ということです。
また、日本人がほぼいない学校は、ESLを設置していなく、レギュラーの授業について行けるだけの英語力を入学時から求められる学校も多いです。子どもなら入れば慣れることができると思いますが、そもそも入学が認められなければ入れません。
しかし総じて、ESLを設置していないような学校には、いい感じの教育内容で学費が高くない、コスパのいい学校が多々あります。
こちらで知り合ったある日本人ママは、「毎年学費があがっていくマレーシアのインター校で、複数の子どもを今の学校(ESL完備で学費が高い)に在籍し続けさせるのは経済的に厳しいから、子どもたちには早く英語のレベルをあげてもらって、ローカルの多い学校に転校させたい」と言っておられました。
ほしい環境は、つくれる
学校は、どんなに他人にとっての評判がよくても、最終的には入ってみないとわかりません。どんな学校で合っても、すごく気の合うお友達一人、大好きになれる先生が一人いるだけで、全く居心地が変わるものでもあります。
教育方針、学費、住まいからの距離など、いろいろな要素の組み合わせで学校を決めることになると思いますが、日本人が多くても少なくても、「罠にハマらない」環境を自ら作ろうと心がけて、「その環境に何をプラス/マイナスすれば、より希望にマッチするかな?」と広い視野で見て考えてみるといいと思います。
そして、どうしても合わなければ、現地にいる強みを生かして情報を収集し、転校先を見つけたらいいです。
今はどこのインターも生徒が足りないですから(留学生や駐在員がコロナで本帰国してしまったり、長引くオンライン授業でコスパが悪いと言ってローカルが退学してしまったり)、どこでも歓迎してくれると思いますよ。
ここに書ききれなかったお話
ここに書ききれなかったお話の続きを、少しずつ書いていきます。
書き次第マガジンに入れていきますので、よかったらフォローしてくださいね。
冒頭でお話したマレーシア在住の編集者、野本響子さんのVoicyはこちら。
この#16以外のお話も、どれもとても興味深いです。
特に必聴は、高校生の息子さん登場の回。
IB(インターナショナル・バカロレア)教育のDP(ディプロマ・プログラム。IB教育の最終仕上げ)に在籍するご本人のお話はなかなか聞けない貴重なお話です。
私自身も、IBDPは、学習者を選ぶ(=万人には向かない)教育方だと思っているので、「IBってイイ!」で簡単に飛びつけないものがあります。(学習者である子ども自身が「なんかイイ!」って飛び込むのならいいのですが)
セミナーや公式機関からの発表でわからない「ホントのところ」は、こうした生の意見に詰まっています。
野本さんの書籍も、イギリス式とIB式の特徴や違いなど、世界各国の教育システムの違いがとてもわかりやすくまとまっていておすすめです。マレーシアに限らず国内外のインタナショナルスクールを考えている人は辞書のように使えると思います。(リンクから試し読みできます)
ではでは。