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大川橋蔵・主演 銭形平次 第135話「呪われた能面」(1968)紹介と感想

原作:野村胡堂『銭形平次捕物控』シリーズ
脚本:柴英三郎
監督:長谷川安人


あらすじ

能の名門の家で起きた殺人事件。
千次郎という後の家元と目されていた男が一刀のもとに切り捨てられ、その際に能の面も真っ二つになった。
平次と万七が捜査に乗り出すが、家元は名誉を考え騒ぎ立ててほしくないと考えていた。
皆が黙り込む中で、平次は血だまりを洗った跡を発見、殺人事件として捜査を続ける。
そんな中、家元の傍に使える弟子である千介という男が、平次に協力を申し出る。
事件は兄弟間での跡目争いかと思いきや、長男の千太郎も殺されてしまう。
平次は、殺しを請け負う浪人の後を追いかけるが、更なる波乱が待ち受けていた。


紹介と感想

能の名門一族を舞台にした物語は、殺人事件の捜査と並行して、千太郎と良い仲の女・お甲と子どもの人情譚もサスペンスに絡めながら展開されていきます。
匿っている平次の家まで浪人が押しかけて来た時に、刀を突きつけられながら一歩も引かないお静の姿もさすがでした。

また、菅貫太郎演じる弟子の千介も良い味を出しています。
内弟子として20年、能楽一筋に打ち込んで来た千介は、血筋だけで後継が決められることに憎い気持を抱いています。
一見すると怪しく見える動きを行い、普段の役柄のイメージもあるため、有力容疑者の一人として良い存在感を発揮していました。

万七と清吉も良い存在感を発揮しており、特に清吉の存在が今回は目立っていました。
家元に言い含められて殺人だと口を割らない一門を相手に苦戦している万七に対して、「やっぱり親分の手に負える相手ではありませんや。なまじ腕を見せようとしたのが間違いでしたよ」とサラッと言う清吉が面白かったです。
その他にも、居もしないカカアの話をしたり、赤ちゃんをあやしたりと、清吉大活躍の巻でした。

もちろん、最後は平次が事件の展開に漂う違和感から黒幕を暴きます。
芸のために全てをかけるのは良いが、それに他人を巻き込んで人生を狂わせるのは予期せぬ恨みを生んでしまうという事件でした。

程よいサスペンス、レギュラーキャラクターの活躍、平次のアクションと全てのバランスが良く、好みの話でした。

「お静さんの啖呵で、殺し屋の浪人者が逃げ出したって言うんだな」
 感心した面持ちの万七が、お静とお甲から話を聞いている。
「啖呵だなんて、無我夢中で自分で何を言ったんだか」
「斬るなら私を斬りなさい。うちの人がきっと獄門台に送ってくれます。そうおっしゃったんですよ」
 お静の代わりにお甲が啖呵の内容を話すと、清吉が鼻をすすりながら口を開く。
「へぇー、泣かせるねぇ。うちのカカアに聞かせてやりてぇや」
「誰だ。お前まだ一人もんじゃねえか」

浪人が乗り込んで来た時の様子を番所で聞き取りしている場面より

※2024年6月21日11時頃まで東映時代劇YouTubeチャンネルでも観れます※

アマプラの東映オンデマンドでも観れます。

キャスト

ゲスト
 
お甲/桜町弘子
 千介/菅貫太郎
千太郎/小笠原良智
千次郎/中村友隆
 千翁/明石 潮

大川橋蔵版レギュラーキャスト(当話出演者のみ)

 銭形平次/大川橋蔵

  八五郎/林家珍平
   お静/八千草薫

   万七/遠藤辰雄
   清吉/池 信一


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