ピーター・ユスティノフ主演ポワロシリーズ(1978~1988)映画3本+ドラマ3本
概要
ピーター・ユスティノフがエルキュール・ポワロを演じたシリーズは以下の6本になります。
映画
1978年『ナイル殺人事件』 原作:『ナイルに死す』(1937)
1982年『地中海殺人事件』 原作:『白昼の悪魔』(1941)
1988年『死海殺人事件』 原作:『死との約束』(1938)
ドラマ
1985年『エッジウェア卿殺人事件』 原作:『エッジウェア卿の死』(1933)
1986年『死者のあやまち』 原作:『死者のあやまち』(1956)
1986年『三幕の殺人』 原作:『三幕の殺人』(1935)
映画版は全て海外が舞台で映像とキャストが豪華なこと、ドラマ版は撮影当時の年代を舞台にしていることが特徴だと思います。
ユスティノフのポワロは大柄で好々爺な雰囲気が強く、原作のエルキュール・ポワロとは違うのですが、ユスティノフの演技力の高さと、シリーズの何となくゆったり余裕ある空気感によって、このシリーズにはこれでピッタリなんだと思えてきます。
映画
映画版は、『ナイル』『地中海』が特に有名で、面白さも『死海』と比べて先行の2作品の方が面白いものになっています。
特徴は大作映画観溢れる映像と出演陣の豪華さにあります。『オリエント急行殺人事件』から続いてオールスターキャストを全面に押し出し、ロケ地も豪華と言う映画は、画面のどこを切り取っても目の保養になります。
特に、レイス大佐を演じるデヴィッド・ニーヴンのかっこよさは、いつ見ても惚れ惚れします。
一般的には、『ナイル殺人事件』が一番人気になると思いますが、個人的には原作に比べて大味すぎないかしら、と思ってしまうところがあり、よりミステリ的にスッキリさせた『地中海殺人事件』の方を高く評価しています。
『死海殺人事件』については、少しのっぺりしているとはいえ、80年代ドラマ版の劇場版的な雰囲気は嫌いではないです。
しかし、キャラクター設定の変更や、原作にない第2の殺人の追加など、原作と違うところ全てが足を引っ張っているという印象がぬぐえないのが残念でした。
映画の個人的ベストは『地中海殺人事件』です。
ドラマ
1作目と2作目は原作に合わせてイギリスの事件ですが、3作目はアカプルコが舞台になっています。
現代が舞台なため、ポワロが自伝を書くのにパソコンを使ったりしています。
事件自体は原作の展開をしっかりなぞっており、今観ても80年代の娯楽物テレビ映画として面白く観ることができ、3作とも結構お気に入りです。
古き良き時代の明るい謎解きドラマを観たい時にはお勧めです。
また、アメリカ製作のため、『三幕の殺人』はアメリカ版がもとになっており、動機の部分でスーシェ版との違いを楽しむことができます。
現代を舞台にしたことが特にシナリオで活かされてないどころか、むしろマイナスじゃないかなど短所もありますが、時代の道具立て以外は現代であることを殊更意識させることもないので、観る時にはいつも原作の時代に現代の道具立てというパラレルワールドを頭に描いて観ています。
登場人物面では、3作全てにヘイスティングズが居るのが特徴です。
そのため、原作では観ることのできない、ヘイスティングズとオリヴァ夫人の共演を観ることができます。
このヘイスティングズ、あまり評判が良くないと聞いたことがありますが、個人的には嫌いではなく、『死者のあやまち』ではポワロとヘイスティングズの関係についても描かれているため、意外と印象にも残っています。
映画版を意識してか、メインゲストには有名俳優を迎えており、
『エッジウェア卿殺人事件』では、フェイ・ダナウェイ
『死者のあやまち』では、ジーン・ステイプルトン
『三幕の殺人』では、トニー・カーティス
が、出演しています。
また、『エッジウェア卿』にはデビッド・スーシェがジャップ警部で出ています。スーシェ本人はこの際の演技に満足できていないようです。
確かにジャップ警部っぽくなく、名探偵物に出るいかにもな警察になっていますが、後のポワロが演じていると部分でむしろ面白く観れてしまいます。
ドラマ版はビデオしかなく、最近は再放送もないため、ヘレン・ヘイズがマープルを演じた2作を含めた、他の80年代アメリカ製作クリスティー原作ドラマと一緒に新たにソフト化して欲しいと思っています。
そして、その際には以前作られたらしい吹替版が収録されて欲しい所です。
ドラマの個人的ベストは『死者のあやまち』です。
作品情報
原作主要登場人物キャスト
エルキュール・ポワロ/ピーター・ユスティノフ(田中明夫)
アーサー・ヘイスティングズ/ジョナサン・セシル(ドラマ全て)
ジャップ警部/デビッド・スーシェ(エッジウェア卿)
オリヴァ夫人/ジーン・ステイプルトン(死者のあやまち)
ナイル殺人事件 Death on the Nile(1978/英)
原作:アガサ・クリスティー『ナイルに死す Death on the Nile』(1937)
脚本:アンソニー・シェーファー
監督:ジョン・ギラーミン
音楽:ニーノ・ロータ
時間:140分
ジャクリーン・ド・ベルフォール/ミア・ファロー(武藤礼子)
ジョニー・レイス大佐/デヴィッド・ニーヴン(中村正)
マリー・ヴァン・スカイラー/ベティ・デイヴィス(鳳八千代)
アンドリュー・ペニントン/ジョージ・ケネディ(北村和夫)
リネット・リッジウェイ/ロイス・チャイルズ(藤田淑子)
サロメ・オッタボーン/アンジェラ・ランズベリー(関弘子)
ロザリー・オッタボーン/オリヴィア・ハッセー(二木てるみ)
地中海殺人事件 Evil Under the Sun(1982/英)
原作:アガサ・クリスティー『白昼の悪魔 Evil under the Sun』(1941)
脚本:アンソニー・シェーファー
監督:ガイ・ハミルトン
音楽:コール・ポーター
編曲:ジョン・ダルビー
時間:117分
ダフネ・カースル/マギー・スミス(寺島信子)
アリーナ・マーシャル/ダイアナ・リグ(小原乃梨子)
クリスティン・レッドファン/ジェーン・バーキン(宗形智子)
オデル・ガードナー/ジェームズ・メイソン(内田稔)
マイラ・ガードナー/シルヴィア・マイルズ(翠準子)
レックス・ブルースター/ロディ・マクドウォール(羽佐間道夫)
パトリック・レッドファン/ニコラス・クレイ(津嘉山正種)
死海殺人事件 Appointment with Death(1988/米)
原作:アガサ・クリスティー『死との約束 Appointment with Death』(1938)
脚本:アンソニー・シェーファー/ピーター・バッグマン/マイケル・ウィナー
監督:マイケル・ウィナー
音楽:ピノ・ドナッジオ
時間:103分
エミリー・ボイントン/パイパー・ローリー(此島愛子)
レノックス・ボイントン/ニコラス・ゲスト(原康義)
ナディーン・ボイントン/キャリー・フィッシャー(弥永和子)
レイモンド・ボイントン/ジョン・ターレスキー(田中秀幸)
カーベリー大佐/ジョン・ギールグッド(梶哲也)
ウェストホルム卿夫人/ローレン・バコール(藤波京子)
ミス・クイントン/ヘイリー・ミルズ(太田淑子)
エッジウェア卿殺人事件 13 at Dinner(1985/米)
原作:アガサ・クリスティー『エッジウェア卿の死 Lord Edgware Dies』(1933)
脚本:ロッド・ブラウニング
監督:ルー・アントニオ
時間:90分
ジェーン・ウィルキンソン/フェイ・ダナウェイ
ロナルド・マーシュ/ビル・ナイ
ジェニー・ドライバー/ダイアン・キートン
死者のあやまち Dead Man's Folly(1986/米)
原作:アガサ・クリスティー『死者のあやまち Dead Man's Folly』(1956)
脚本:ロッド・ブラウニング
監督:クライブ・ドナー
時間:94分
ハティ・スタップス/ニコレット・シェリダン
エイミィ・フォリアット/コンスタンス・カミングス
ジョージ・スタッブズ卿/ティム・ピゴット=スミス
三幕の殺人 Murder in Three Acts(1986/米)
原作:アガサ・クリスティ『三幕の悲劇 Murder in Three Acts』(1934)
※創元推理文庫からの出版は、米版がもとになっています。
脚本:スコット・スワンソン
監督:ゲイリー・ネルソン
時間:96分
チャールズ・カートライト/トニー・カーティス
エッグ/エマ・サムズ
リカルド・モントーヤ/フェルナンド・アレンデ
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