見出し画像

《海の上のカムデン》シリーズ6『メリー殺しマス』Ho - Ho Homicide(1995)紹介と感想

コリン・ホルト・ソーヤー/中村有希・訳『メリー殺しマス』東京創元社, 2009


あらすじ

〈海の上のカムデン〉も12月に入りクリスマスの色に染まっていた。
リースやツリーが飾られ、降誕祭の場面を描いた寸劇ではアンジェラも羊の役を割り振られていた。
毎日のように催し物も開かれており、本日は少年少女聖歌隊によるクリスマスキャロルの合唱が行われた。
しかし、子供の一人がツリーの下に死体を見つけたことで催しは強制終了となる。
死んでいたのはバーディと言う人間よりも小鳥を愛する女性だった。
警察も殺人との確証が掴めない中、殺人を主張するアンジェラとキャレドニアは、マーティネス警部補に言われた言葉を拡大解釈し、公式な調査員と名乗りながら捜査に邁進していく。


紹介と感想

久しぶりにカムデン内で入居者が殺される事件が発生する第6弾。
季節はクリスマスシーズンですが、アンジェラは大好きなクリスマスの準備よりも殺人(と決めつけた)捜査に夢中になります。

先手を打って二人に危険のない任務を与えたつもりのマーティス警部補でしたが、言っても聞かない二人に今回はかなり手を焼いていました。

それでも、キャレドニアはまだ常識的な範囲に考えを巡らせることができますが、アンジェラを止めることは誰にもできず、前回キャレドニアに活躍の場をとられた分を取り戻せとばかりに今回は痛い目にあってしまいます。

久しぶりのホームの住人達もレギュラー、新規ともに騒がしく活躍してくれ、本書終盤で描かれるクリスマスの寸劇は爆笑ものでした。

ミステリーとしては、比較的緩めの本シリーズの中でも緩いものでしたが、犯人像や、クリスマスストーリーらしいマーティネス警部補の判断は良かったと思います。

ミステリーとして読むと、本の分量の割に緩い展開が気になると思いますが、キャラクター小説としての面白さは文句なしの一冊でした。

また、本の内容とは関係ないですが、本書が日本で翻訳された時の奥付の初版が12月25日になっているのも気が利いていました。

「間違ってる? どういう意味だ? ある程度の歳になりゃ、人間、好きなことを言うのも、するのも自由ってもんさ。おれを見てみな。おれが何をしようが、誰も気にしやせん。〝しかたない、年寄りだから〟って言われるだけだ。おれに比べりゃ、あんたらはどっちもまだまだ若いが、誰でも歳は取り続けるんだ。なあに、おれの言うとおりにすりゃいいんだよ——若い頃に習ったルールなんて、忘れちまいな。長生きしたってだけで、ご褒美もんだ」

コリン・ホルト・ソーヤー/中村有希・訳『メリー殺しマス』東京創元社, 2009, p.194
ホーム最年長102歳の入居者エルマーが二人に教える見つけた物は貰っておけ理論

シリーズ一覧

01.老人たちの生活と推理 The J. Alfred Prufrck Murders(1988)
02.氷の女王が死んだ Murder in Gray and White(1989)
03.フクロウは夜ふかしをする Murder by Owl Light(1992)
04.ピーナッツバター殺人事件 The Peanut Butter Murders(1993)
05.殺しはノンカロリー Murder Has No Calories(1994)
06.メリー殺しマス Ho - Ho Homicide(1995)
07.年寄り工場の秘密 The Geezer Factory Murders(1996)
08.旅のお供に殺人を Murder Olé!(1997)
09.Bed, Breakfast and Bodies(1999)

いいなと思ったら応援しよう!

北極羆
今後の本やDVD代に充てさせてもらいます。

この記事が参加している募集