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読書感想文

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#読書感想文

2025年1月の読書まとめ+『ぷにるはかわいいスライム2』『うめともものふつうの暮らし9』『札幌乙女ごはん。』『となりのフィギュア原型師6』『生きのびるための事務』『小島よしおのボクといっしょに考えよう』『晴れた日は図書館へいこう ここから始まる物語』紹介と感想

1月は仕事が始まったらあまり本は読めないだろうなと思っていましたが、意外や隙間時間などを使って結構読めてしまいました。これは嬉しい誤算でした。 中々読めていなかった本や、自分に上手く刺さった本など内容面でも満足度が高いです。 まえだくん『ぷにるはかわいいスライム2』小学館, 2022 アリスとルンルーンの関係から人間とホビーの関係性を描いたルンルーン編の続きから、異世界転生を挟んで夏休みの日々を描いた第2巻。 前回読んでから間が空いてしまい、アニメで先に面白さを味わって

久生十蘭 読書記録(黒い手帳/湖畔/海豹島/墓地展望亭/昆虫図)

興味はあったけど読めていなかった多くの作家の一人、久生十蘭を初読みです。 黒い手帳(1937) 巴里にある安下宿の4階にはパトロンからの支援を打ち切られた夫婦、6階には人生を賭けてルーレットの法則を解き明かそうとしている男、そして研究のために巴里に来ていた私は5階に住んでいた。これは私が書き記した一冊の黒い手帳を巡る奇妙な人間模様。 夫婦や男は浅ましい人間に見えながらも、自分達では思いもつかなかった感情に襲われることになります。 それでは、私はどうなのか。私の手記で展開

任天堂ミュージアム旅行記(2024/12/7~8)

去年の12月、抽選に当選しニンテンドーミュージアムへ行ってきました。 遅まきながら感想を書いたので、突発弾丸旅行の記録を残しておきます。 写真と文字数多めです。 ニンテンドーミュージアムへの道中記 抽選で当たったのが特に祝日などでもない土曜日だったため、土曜日の早朝に出発、日曜日の昼までには帰ってくるというミュージアムに行くためだけの旅行日程を組みました。 早朝とはいえ、通常の仕事の出勤時間より少し早い位だったので出発については苦労なく、早めに空港へついて朝ごはんを食べ

2024年12月の読書まとめ+『「腸と脳」の科学 脳と体を整える、腸の知られざるはたらき』『論理的思考とは何か』『グッドモーニング・キス 22』『晴れた日は図書館へいこう』紹介と感想

12月も仕事に役立てられないかなと前半は実用書を読んでましたが、良いクリスマス絵本に出会えたり、比較的幅広く小説を読めたりと、忙しい年末にしてはしっかり読書できていたなと思います。 坪井貴司『「腸と脳」の科学 脳と体を整える、腸の知られざるはたらき』講談社, 2024 脳腸相関に興味が出て来たので、分かりやすく全体像を知ることができそうだと思い読了しました。 脳腸相関の基本から、睡眠や記憶、様々な疾患などにおける働き、腸と他の臓器の相関はどのように起こっているのかなどが

最後の晩ごはん20『最後の晩ごはん 優しい犬とカレーライス』(2024)紹介と感想

椹野道流『最後の晩ごはん 優しい犬とカレーライス』KADOKAWA, 2024 あらすじ 今日も海里は淡海邸で朗読の練習を行っていた。 サンドイッチを食べながら様々な話をした日の帰り、淡海邸の前に現れた黒い犬に導かれた海里と淡海は、近所にある邸宅でとあるものを見つけてしまう。 淡海は、行き先の無かった黒い犬を成り行きからマヤと名付けて一緒に暮らすことにした。 その頃から海里は不思議な声を聞くようになって…。 シリーズ概要 スキャンダルに巻き込まれ芸能界を追われた五十嵐

遠藤周作『私の履歴書 落第坊主の履歴書』(1989)紹介と感想

遠藤周作『私の履歴書 落第坊主の履歴書』日本経済新聞出版社, 2013 1989年6月に「日本経済新聞」へ掲載された、幼少期からの前半生を振り返る「私の履歴書」と、その内容に関連した過去のエッセイの再録で構成されています。 十数年振りに狐狸庵先生のエッセイを読みましたが変わらぬ面白さを感じることが出来て嬉しかったです。 滑稽で軽妙な軽さと人の深い所まで見抜くような深さのバランスが良く、そのどちらにも人間がしっかり描かれていました。 友人の自殺や戦時中の話など、シリアスな内

つんく♂『「だから、生きる。」』(2015)紹介と感想

つんく♂『「だから、生きる。」』新潮社, 2015 2015年4月に母校・近畿大学の入学式の日から振り返る、上京してからの仕事一色の忙しい毎日、後に妻となる女性と出会ってから結婚、子供が生まれて価値観や過ごし方が変化していく幸せな日々、喉頭癌発覚後の闘病から口頭全摘出となるまでを赤裸々に綴ったエッセイになります。 自分にとっては『リズム天国』のプロデューサーとしてのイメージが強いのですが、本作を読むことで悩みや嫉妬もする立体的な一人の人間として浮かび上がってきました。 不

又吉直樹『第2図書係補佐』(2011)紹介と感想

又吉直樹『第2図書係補佐』幻冬舎, 2011 紹介と感想 芸人であり作家である著者による、ヨシモト∞ホール発のフリーペーパーに掲載された本を媒介にした自分の人生や考えを語るエッセイに書下ろしを加えてまとめた一冊です。 本書には、あまりにも繊細で感情豊か、しかし社会に対して上手く表現できない一人の若者としての著者が描かれていました。 そして、その著者の語りを通して、紹介されている本にも興味を持てる所が本書の凄い所だと思います。 読んでいる自分と似ている様に見えながらも、

阿津川辰海『阿津川辰海読書日記 かくしてミステリー作家は語る〈新鋭奮闘編〉』紹介と感想

阿津川辰海『阿津川辰海読書日記 かくしてミステリー作家は語る〈新鋭奮闘編〉』光文社, 2022 本書は、ミステリー作家であり無類の読書好きである著者の、本への愛と博識ぶりが分かる、全3部構成の解説・エッセイ集になります。 その紹介数は総勢362名、1,018作品と驚きの量。 第23回本格ミステリ大賞[評論・研究部門]受賞作です。 「第1部 阿津川辰海は嘘をつかない~阿津川辰海 読書日記~」では、〈ジャーロ〉のサイト内で現在も連載しているエッセイから、2022年3月掲載の第

ケサランパサランについて~『ケサランパサラン日記』の紹介と感想+ケサランパサランについて調べたこと

西 君枝『ケサランパサラン日記』草風社, 1980 西 君枝『ケサランパサラン日記』紹介と感想  自宅の庭先で偶然ケサランパサランと出会った事から始まる、孫にも協力してもらいながらの観察の日々。 そして、ケサランパサランの持主が多いと言われている宮城県への旅の記録を、豊富な写真と一緒に送る。  自分にとってケサランパサランと言えば、スーパーマリオワールドで登場し、スーパーマリオブラザーズワンダーでも再登場している、あれでした(マリオではケセランでした)。  しかし、この

鞍馬天狗シリーズ短編「鬼面の老女」「西国道中記」紹介と感想

「鬼面の老女」(1924) 大佛次郎『鞍馬天狗 第十巻』中央公論社, 1969, p.3-32 あらすじ 小野宗春亡き後、弟の小野宗行が全てを奪ってしまった。 宗春の忠臣・浦部甚太夫に連れられ、逢阪山で武術を教えられながら育った宗春の一子・宗房。 成人し、甚太夫も亡くなり、金に困って叔父を頼って実家へ行くが、計略に嵌められ一銭ももらえなかった。 その帰り、密使を捕まえようとしていた鞍馬天狗一味と刀を交わす宗房。 誤解も解け、父を知っているという鞍馬天狗と知己を得る。

鞍馬天狗 長編第3作『角兵衛獅子』(1927~28)紹介と感想

大佛次郎『鞍馬天狗 第一巻』中央公論社, 1969, p.1-200 野村萬斎が鞍馬天狗を演じたNHK時代劇が好きで、いつか嵐寛寿郎の映画も観ようと思っていた『鞍馬天狗』。今回、原作を手に取る機会があり読んでみました。 最初に選んだのは、鞍馬天狗と言えば杉作少年とのイメージから、超有名作『角兵衛獅子』にしました。 ちょうど、入院中に読んだ『ねこぱんち』で大佛次郎と猫の関係を描いた漫画を読んだので、これもまた一つの運命だと思うのです。 あらすじ 角兵衛獅子の杉作は、稼ぎ

鞍馬天狗 長編第6作『山嶽党奇談』(1928~1930)紹介と感想

大佛次郎『鞍馬天狗 第一巻』中央公論社, 1969, p.201-499 あらすじ 京都東山の高台寺横の路地には、白髪の老人の姿をした化物が姿を見せると騒がれていた。 また、化物だけでなく最近は山嶽党という暗殺集団まで現れていた。 鞍馬天狗は、ただの人殺し集団を野放しには出来ないと山嶽党を追いかけるが、中々尻尾を掴めず、何度も命を狙われてしまう。 隠れ家を変えようとしていたある夜も、鞍馬天狗と杉作は山嶽党の一味に命を狙われる。 同士である大前田逸郎の援助もあり、短筒で撃た

鞍馬天狗 長編第22作『女郎蜘蛛』(1957)紹介と感想

大佛次郎『鞍馬天狗 第八巻』中央公論社, 1969, p.1-212 あらすじ 京で起きた公卿連続予告殺人。死の日を予告した書状が舞い込むと、その予告通りに人が死ぬのだ。 高倉三位という最初の犠牲者から手紙を見せてもらった鞍馬天狗。その後、高倉は血染めの衣類だけを残して消えてしまった。 鞍馬天狗は岡っ引の長次や、犬猿の仲である与力の鹿倉藤十郎とも情報を交換し合い事件を調べ始める。 事件を調べて見えてきたのは、人を見下し秘密主義、しかし内実は金もないのに物欲と色欲に溢れる公