マガジンのカバー画像

読書感想文

71
シリーズでまとめていない本の感想をまとめています
運営しているクリエイター

#黒岩涙香

黒岩涙香「無惨」(1889) 紹介と感想

黒岩涙香『黒岩涙香探偵小説選Ⅰ』論創社, 2006, p.1-54 黒岩涙香『黒岩涙香探偵小説選Ⅱ』論創社, 2006, p.249-255 黒岩涙香(1862~1920)は、主に明治期に活躍しており、ミステリー好きにとっては外国作家の小説を翻案して日本に紹介したことで知られています。 無惨(1889/明治二十二年) あらすじ 数多くの創傷、擦剥、打傷があり、頭も裂けている世にも無惨な死体が見つかる。谷間田と大鞆、二人の刑事が目を付けた手がかりは、死体が握っていた縮れた

黒岩涙香「血の文字」「紳士の行ゑ」+エミール・ガボリオ「バチニョルの小男」 紹介と感想

黒岩涙香著『黒岩涙香探偵小説選Ⅱ』論創社, 2006 各務三郎編『クイーンの定員Ⅰ 傑作短編で編むミステリー史』光文社, 1992, p.127-203 今回は、エミール・ガボリオの作品を翻案した2作品と、「血の文字」原作である「バチニョルの小男」を紹介したいと思います。 カボリオの原作もホームズとライバルたちの時代に負けない面白い物語ですが、それを涙香がどう調理したのかを観ることで、涙香が論理的な考え方を重視していたのが分かるものとなっていました。 エミール・ガボリオ

黒岩涙香「広告」「父知らず」「田舎医者」「女探偵」紹介と感想

黒岩涙香『黒岩涙香探偵小説選Ⅰ』論創社, 2006 黒岩涙香『黒岩涙香探偵小説選Ⅱ』論創社, 2006 今回は、ショートショート程の分量で展開される涙香オリジナル作品を4作、紹介していきたいと思います。 ジャンルの幅も広く、楽しめる作品が揃っています。 もし涙香が、もっと創作者としての方向に力を入れていたら、どのような作品を生み出していたのかが気になってしまいます。 広告(1889/明治二十二年) あらすじ ある新聞記者の男が、夫婦で俳優の稽古を始めてみると、仏国の俳

黒岩涙香「生命保険」「帽子の痕」「間違ひ」「秘密の手帳」紹介と感想

黒岩涙香著『黒岩涙香探偵小説選Ⅰ』論創社, 2006 黒岩涙香著『黒岩涙香探偵小説選Ⅱ』論創社, 2006 今回は、原作不詳のミステリー風味な翻案短編小説を紹介したいと思います。 ミステリーと一言で言っても、サスペンス小説から推理的興味がメインの小説など、様々な作品を日本に紹介しようとしていたことが分かります。 生命保険(1890/明治二十三年) あらすじ 継母と上手くいかず、家を出て女教師として自立して生活している夏子。 昔から、金儲けをしたいが失敗ばかりの父だけが