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読書感想文

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#読書感想

2024年の読書まとめ

2024年も沢山の本を読むことが出来ました。 上半期で特徴的なのは、入院により強制的に時間ができたため、かなり集中して多くの本を読めたこと、しかも病院の本棚にある本を積極的に読んだことで読めていなかった作家の作品を読めたことになります。 下半期は、新しい仕事を始めたため総量としては減りましたが、意識して実用書を読む量が増えたことが印象に残っています。 去年を振り返った時に特に印象に残っているのは、漫画では『夜明けの図書館』と『税金で買った本』に夢中になったこと、小説では

鞍馬天狗 長編第6作『山嶽党奇談』(1928~1930)紹介と感想

大佛次郎『鞍馬天狗 第一巻』中央公論社, 1969, p.201-499 あらすじ 京都東山の高台寺横の路地には、白髪の老人の姿をした化物が姿を見せると騒がれていた。 また、化物だけでなく最近は山嶽党という暗殺集団まで現れていた。 鞍馬天狗は、ただの人殺し集団を野放しには出来ないと山嶽党を追いかけるが、中々尻尾を掴めず、何度も命を狙われてしまう。 隠れ家を変えようとしていたある夜も、鞍馬天狗と杉作は山嶽党の一味に命を狙われる。 同士である大前田逸郎の援助もあり、短筒で撃た

水野敬也『夢をかなえるゾウ』(2007)紹介と感想

水野敬也『夢をかなえるゾウ』飛鳥新社, 2011(文庫版) あらすじ うだつの上がらない僕は「変わりたい」と思っていながら、毎日の生活に流されて一歩を踏み出せていなかった。 しかし、ある時ガネーシャの置物と同じ姿をした神様が眼の前に現れる。 そして、ガネーシャとの奇妙な騒がしい共同生活が始まった。 自分を変えるためにガネーシャと契約した僕は、毎日ガネーシャが出してくる課題を実践していくことになった。 「靴をみがく」「食事を腹八分におさえる」などの課題に始めは半信半疑だっ

小市民シリーズ1『春期限定いちごタルト事件』(2004)紹介と感想

米澤穂信『春期限定いちごタルト事件』東京創元社, 2004 作者の作品は〈古典部〉シリーズが好きで全作読んでいますが、後はドラマ化された作品を見ている位になります。 〈古典部〉を読み始めた時に〈小市民〉シリーズも読もうと思いながら時間が経ってしまいましたが。 そして2024年、完結編の出版にアニメ化という流れの中で、今が読み時だと思い遂に手に取りました。 収録短編あらすじ 羊の着ぐるみ 小市民を目指す小鳩常悟朗と小佐内ゆきは船戸高校に入学した。順調な高校生活を始めたと思

小市民シリーズ2『夏期限定トロピカルパフェ事件』(2006)紹介と感想

米澤穂信『夏期限定トロピカルパフェ事件』東京創元社, 2006 あらすじ 高校二年の夏休み初日、小佐内さんに〈小山内スイーツセレクション・夏〉を渡された小鳩君は、なぜだかスイーツショップ巡りに付き合わされることになる。 疑念を抱きながらも付き合う小鳩君は、ひょんなことから堂島健吾からも厄介毎の話を聞いた。 果たして、小鳩君は小市民的にひと夏の思い出を作ることができるのか。 紹介と感想 シリーズ2作目は、小さな謎も挟みながらも、前作と違い長編の構成となっていました。 長

黒岩涙香「生命保険」「帽子の痕」「間違ひ」「秘密の手帳」紹介と感想

黒岩涙香著『黒岩涙香探偵小説選Ⅰ』論創社, 2006 黒岩涙香著『黒岩涙香探偵小説選Ⅱ』論創社, 2006 今回は、原作不詳のミステリー風味な翻案短編小説を紹介したいと思います。 ミステリーと一言で言っても、サスペンス小説から推理的興味がメインの小説など、様々な作品を日本に紹介しようとしていたことが分かります。 生命保険(1890/明治二十三年) あらすじ 継母と上手くいかず、家を出て女教師として自立して生活している夏子。 昔から、金儲けをしたいが失敗ばかりの父だけが