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#鞍馬天狗

鞍馬天狗シリーズ短編「鬼面の老女」「西国道中記」紹介と感想

「鬼面の老女」(1924) 大佛次郎『鞍馬天狗 第十巻』中央公論社, 1969, p.3-32 あらすじ 小野宗春亡き後、弟の小野宗行が全てを奪ってしまった。 宗春の忠臣・浦部甚太夫に連れられ、逢阪山で武術を教えられながら育った宗春の一子・宗房。 成人し、甚太夫も亡くなり、金に困って叔父を頼って実家へ行くが、計略に嵌められ一銭ももらえなかった。 その帰り、密使を捕まえようとしていた鞍馬天狗一味と刀を交わす宗房。 誤解も解け、父を知っているという鞍馬天狗と知己を得る。

鞍馬天狗 長編第3作『角兵衛獅子』(1927~28)紹介と感想

大佛次郎『鞍馬天狗 第一巻』中央公論社, 1969, p.1-200 野村萬斎が鞍馬天狗を演じたNHK時代劇が好きで、いつか嵐寛寿郎の映画も観ようと思っていた『鞍馬天狗』。今回、原作を手に取る機会があり読んでみました。 最初に選んだのは、鞍馬天狗と言えば杉作少年とのイメージから、超有名作『角兵衛獅子』にしました。 ちょうど、入院中に読んだ『ねこぱんち』で大佛次郎と猫の関係を描いた漫画を読んだので、これもまた一つの運命だと思うのです。 あらすじ 角兵衛獅子の杉作は、稼ぎ

鞍馬天狗 長編第6作『山嶽党奇談』(1928~1930)紹介と感想

大佛次郎『鞍馬天狗 第一巻』中央公論社, 1969, p.201-499 あらすじ 京都東山の高台寺横の路地には、白髪の老人の姿をした化物が姿を見せると騒がれていた。 また、化物だけでなく最近は山嶽党という暗殺集団まで現れていた。 鞍馬天狗は、ただの人殺し集団を野放しには出来ないと山嶽党を追いかけるが、中々尻尾を掴めず、何度も命を狙われてしまう。 隠れ家を変えようとしていたある夜も、鞍馬天狗と杉作は山嶽党の一味に命を狙われる。 同士である大前田逸郎の援助もあり、短筒で撃た

鞍馬天狗 長編第22作『女郎蜘蛛』(1957)紹介と感想

大佛次郎『鞍馬天狗 第八巻』中央公論社, 1969, p.1-212 あらすじ 京で起きた公卿連続予告殺人。死の日を予告した書状が舞い込むと、その予告通りに人が死ぬのだ。 高倉三位という最初の犠牲者から手紙を見せてもらった鞍馬天狗。その後、高倉は血染めの衣類だけを残して消えてしまった。 鞍馬天狗は岡っ引の長次や、犬猿の仲である与力の鹿倉藤十郎とも情報を交換し合い事件を調べ始める。 事件を調べて見えてきたのは、人を見下し秘密主義、しかし内実は金もないのに物欲と色欲に溢れる公