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2024年8月の記事一覧

鞍馬天狗シリーズ短編「鬼面の老女」「西国道中記」紹介と感想

「鬼面の老女」(1924) 大佛次郎『鞍馬天狗 第十巻』中央公論社, 1969, p.3-32 あらすじ 小野宗春亡き後、弟の小野宗行が全てを奪ってしまった。 宗春の忠臣・浦部甚太夫に連れられ、逢阪山で武術を教えられながら育った宗春の一子・宗房。 成人し、甚太夫も亡くなり、金に困って叔父を頼って実家へ行くが、計略に嵌められ一銭ももらえなかった。 その帰り、密使を捕まえようとしていた鞍馬天狗一味と刀を交わす宗房。 誤解も解け、父を知っているという鞍馬天狗と知己を得る。

鞍馬天狗 長編第22作『女郎蜘蛛』(1957)紹介と感想

大佛次郎『鞍馬天狗 第八巻』中央公論社, 1969, p.1-212 あらすじ 京で起きた公卿連続予告殺人。死の日を予告した書状が舞い込むと、その予告通りに人が死ぬのだ。 高倉三位という最初の犠牲者から手紙を見せてもらった鞍馬天狗。その後、高倉は血染めの衣類だけを残して消えてしまった。 鞍馬天狗は岡っ引の長次や、犬猿の仲である与力の鹿倉藤十郎とも情報を交換し合い事件を調べ始める。 事件を調べて見えてきたのは、人を見下し秘密主義、しかし内実は金もないのに物欲と色欲に溢れる公

小市民シリーズ3『秋季限定栗きんとん事件』(2009)紹介と感想

米澤穂信『秋季限定栗きんとん事件 上』東京創元社, 2009 米澤穂信『秋季限定栗きんとん事件 下』東京創元社, 2009 あらすじ 高校二年の二学期、小鳩君はクラスメイトの仲丸さんに告白されて付き合い始めた。 その頃、新聞部の一年・瓜野君は、保守的な学内新聞を改革しようとしていたが上手くいかない日々を過ごしていた。 しかし、偶然出会った小佐内さんに告白して付き合うようになってから、瓜野君には次々とチャンスが訪れるようになる。 木良市で毎月起こっている放火事件に共通点を見

小市民シリーズ番外編『巴里マカロンの謎』(2020)紹介と感想

米澤穂信『巴里マカロンの謎』東京創元社, 2020 収録作品あらすじ 巴里マカロンの謎(2016) 新しくオープンした店のマカロンを食べに名古屋まで来た小佐内さんと小鳩くん。美味しくマカロンを堪能するはずが、ティー&マカロンセットについてくるマカロンは3種類のはずなのに、席を離れていた小佐内さんの更には4種類のマカロンが乗っていて……。 紐育チーズケーキの謎(2017) 礼智中学の学祭でお菓子作り同好会が作るニューヨークチーズケーキを目当てに、日曜日に学祭まで出向いた小

村田沙耶香『コンビニ人間』(2016)紹介と感想

村田沙耶香『コンビニ人間』文藝春秋, 2016 あらすじ 古倉恵子は18歳の頃から18年間コンビニでバイトをしながら生活している。 世間の常識に馴染めない彼女は、コンビニで働き始めてから初めて人間として生まれた実感を感じられた。 しかし、36歳になって独身でコンビニバイトしか経験のない恵子に、周囲の人間は奇異の目で見るようになっていた。 家族や周囲の人から「普通の人」に見られるように意識して生活している恵子だったが、コンビニで働く以外の人生が考えられなかった。 しかし、社

芥川龍之介 読書記録③(鼠小僧次郎吉/奇妙な再会/藪の中/報恩記/闇中問答/歯車)

鼠小僧次郎吉(「中央公論」1920年1月) 汐留の船宿で盃をかわす二人の男。鼠小僧の話題になり、親分と呼ばれた男が旅の途中に経験した笑い話を語りだす。 江戸を離れた初日に出会った旅の連れと一緒に宿に泊まる。その夜、懐に手を入れられるが、返り討ちにして男を店へと付き出した。 さて、寝付けないし早めに宿を立とうと帳場へ下りようとした時に耳に入った泥棒の話とは…。 題名がそのものずばりだが、出てくるのは鼠小僧には程遠い、勝手に名前を騙り痛い目にあった小悪党、と思いきや…という

2024年7月の読書まとめ+『もふピヨ』『紫京院ひびきの華麗なるお遊戯 1』『ぷにるはかわいいスライム 1』『豆狸のバケル 1』感想

7月は小説と漫画ともに程よく読め、小説も新規と再読のバランスが良かったので満足しています。 特に、読めていなかった『アフター・アガサクリスティー』を読んだのは大きかったです。 さんぽいも『もふピヨ』(2024) もふピヨ達が暮らすもふもふの里の四季折々の中で、もふピヨの日常と多量のもふもふを描いた癒しの一冊です。 もふピヨの少し精神不安定な部分が程よく癖になる世界観になっています。 こんなに日常的にもふもふできる環境は夢の里すぎて過剰摂取注意ですね。もふもふになってもふも