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銭形平次について

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#読書感想文

野村胡堂『銭形平次捕物控』第1話~第5話 紹介と感想

野村胡堂『銭形平次・青春篇』講談社, 1996 第1話「金色の処女」(『オール讀物號』1931年4月号) あらすじ 鷹狩の最中に毒矢で狙われた将軍・家光。笹野新三郎は、銭形平次に調査を頼む。 平次は、家光が鷹狩の帰りに娘目当てで必ず立ち寄る『大塚御薬園』と、最近出店しながら既に話題となっている『唐花屋』という化粧品店へ目を付ける。 お静に頼み唐花屋を探りに行ってもらった平次だったが、そのお静が囚われてしまった。 平次は、お静の後を追って大塚御薬園へ潜入するが、そこで世にも

野村胡堂『銭形平次捕物控』第6話~第10話 紹介と感想

野村胡堂『銭形平次・青春篇』講談社, 1996 第6話「復讐鬼の姿」(『オール讀物號』1931年9月号) あらすじ 与力・笹野新三郎の子・新太郎と臆病者の使用人・勇吉の前に磔柱を背負った男が現れた。 その後も、次々と不思議な怪異が起こり始め、新三郎の妻・お国に相談された利助は、使用人のお吉を捕まえる。 しかし、新三郎が家を空けている間に、新太郎と行儀見習いで奉公に来ていたお静が誘拐される。 さらに、笹野新三郎の命まで狙われる事態に、平次が命懸けで駆け回る。 紹介と感想

野村胡堂『銭形平次捕物控』第11話~第15話 紹介と感想

第11話「南蛮秘法箋」(『オール讀物號』1932年2月号) 野村胡堂『銭形平次捕物控(三)酒屋火事』嶋中書店, 2004, p.224-261 野村胡堂/著 末國善己/編『奇譚 銭形平次 「銭形平次捕物控」傑作選』PHP研究所, 2008, p.149-190 野村胡堂『銭形平次捕物控傑作選1』文藝春秋, 2014, p.63-99 あらすじ 質屋で大身代を築いた田代屋又左衛門が毒矢で狙われ、左腕を一本失った。 その疑いは、次男・又次郎の嫁・お冬に向けられた。 事件に乗

野村胡堂『銭形平次捕物控』第16話~第20話 紹介と感想

148話「九尾の狐」は以前別のタイミングで公開されたからか、今週はYouTubeでの銭形平次の配信が無かったので、久しぶりに原作の感想をあげたいと思います。 今回は、お品さんが活躍する連作のようなエピソードも含まれるここまでの総決算的な物語となります。 第16話「人魚の死」(『オール讀物號』1932年7月号) 野村胡堂『銭形平次捕物控(四)城の絵図面』嶋中書店, 2004, p.83-110 野村胡堂/著 末國善己/編『櫛の文字 銭形平次ミステリ傑作選』東京創元社, 20

野村胡堂『銭形平次捕物控』第21話~第25話 紹介と感想

第21話「雪の精」(『オール讀物號』1932年12月号) 野村胡堂『銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ』嶋中書店, 2004, p.291-325 あらすじ 越後屋佐吉と女房・お市が雪の日の夜に酒を飲んでいると、ドアを叩く音が聞こえる。 お市が外へ出てみるが誰もいない。と思う間もなくお市の首が一瞬で切り裂かれた。 現場には下駄の足跡が残っていたが、周囲には誰もいない。 佐吉に直接頼まれた平次は、八五郎へ調べを頼む。 不可解な状況で起こった殺人事件に、平次の明智が光る。

野村胡堂『銭形平次捕物控』第26話~第30話 紹介と感想

第26話「綾吉殺し」(『オール讀物』1934年3月号) 野村胡堂『銭形平次捕物控(二)八人芸の女』嶋中書店, 2004, p.120-158 あらすじ 恵大寺の墓場に美女の幽霊が出るため、植木屋幸助の声かけに町内の腕利き衆が退治に出かけることになり、面白半分に八五郎も参加した。 幽霊を取り逃した帰り、町内の男衆で唯一人来なかった地紙屋の綾吉の家に寄ると、当の綾吉が死んでいるのが発見された。 現場に落ちていた凶器から万七は石屋の力松を捕まえるが、八五郎は現場の状況から違和

野村胡堂『銭形平次捕物控』第31話~第35話 紹介と感想

第31話 濡れた千両箱(『オール讀物』1934年8月号) 野村胡堂『銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ』嶋中書店, 2004, p.75-117 野村胡堂『時代推理小説傑作選 銭形平次捕物控 新装版』光文社, 2004, p.71-114 あらすじ 材木問屋・春木屋の主人が寄進した三千両が煙のように消え失せた。 笹野様に頼まれた平次は、万七の縄張りという事もあり八五郎を派遣する。 八五郎は寺の敷地から千両箱を見つけるが、中には砂利が詰まっているだけで、小判は見つからなかっ

銭形平次捕物控7「お珊文身調べ」(1931)+映像化作品 紹介と感想

野村胡堂『銭形平次・青春篇』講談社, 1996, p178-205 あらすじ 八五郎と平次も参加した文身自慢の会を騒がした、腹に蛇の文身をした男と体中に十二支の文身をした女。 平次は、何かしら騒ぎが起こるだろうと検討を付けていたとのこと。 どうやら、十二支組の一味が次々と殺されている事件と関係していると狙いをつけ、調べの為に顔を出したらしい。 十二支組の生き残りは残り三人。 奇妙な発端と、そこから推論された平次の鋭い着眼が事件を解決へ導く。 紹介と感想 初期平次なので

銭形平次捕物控10「七人の花嫁」(1932)+大川橋蔵・主演 第14話 紹介と感想

野村胡堂『銭形平次・青春篇』講談社, 1996, p266-297 あらすじ 祝言の席で次々と拐かされる花嫁。 八五郎に利助、平次までもが、その目の前でさらわれてしまった。 平次はお静との祝言を早めて犯人を見つけ出そうとするが、お静まで拐かされてしまう。 果たして平次はお静を見つけ、事件を解決することができるのか。 紹介と感想 平次二十七歳、お静十八歳の時に起こった年明けの事件です。 利助との和解も描かれる、初期平次の完結編とも言える内容となります。 ミステリーとし

銭形平次捕物控35「傀儡名臣」(1934)+北大路欣也・主演 第2シーズン 第15話 紹介と感想

野村胡堂『銭形平次捕物控(三)酒屋火事』嶋中書店, 2004, p.150-189 あらすじ のんびり詰将棋をしていた平次と八五郎のもとへ、妖艶な年増が手紙を持参してきた。手紙に名前はなく「至急相談したいことがある」と記されていた。 平次は八五郎を一人で使いに出すが、八五郎が戻ってきたのは戌刻の鐘が鳴り終わった後だった。 八五郎が話すところによると、散々方々を歩かされた上に、天王寺の前で侍に因縁をつけられ投げられてしまったとのこと。 話を聞いた平次は、夜が遅いのも気にせず

銭形平次捕物控36「八人芸の女」(1935)+大川橋蔵・主演 第23話「闇夜の目」(1966)紹介と感想

野村胡堂『銭形平次捕物控(二)八人芸の女』嶋中書店, 2004, p268-305 あらすじ最近噂の若い女と腕利きの侍の二人組の強盗『疾風』。 その巧妙な手口で次々と盗みを成功させ江戸中を震え上がらせていた。 遂に平次の縄張りにも現れ、あろうことか盗んだ金の一割を平次の家へ投げ込んできた。 八五郎が調べてきたのは、尤も怪しい人物二人と怪しくない人物二人。 平次は、事件の舞台に現れる八人芸の女・お島に接触を計る。 紹介と感想(ネタバレあり)凛々しい女性の生き方と平次の心持ち

銭形平次捕物控39「赤い疵」(1935)+大川橋蔵・主演 第25話「ふたり平次」(1966)紹介と感想

野村胡堂『銭形平次捕物控(五)金の鯉』嶋中書店, 2004, p.282-316 あらすじ 平次そっくりの強盗が江戸の町を荒らしまわり、誰もが平次を疑い始めた。 強盗は平次の縄張りを避けて仕事をしており、今までに調べを担当したのは万七など平次以外の岡っ引だった。 笹野から発破をかけられた平次は、縄張りなどと言っていられず調べに乗り出す。 平次は、桔梗屋の娘お藤が攫われた件に目を付け、周辺の人間関係を調べる事で解決への糸口をつかんでいく。 紹介と感想 平次とお静が結婚し

銭形平次捕物控43「和蘭カルタ」(1935)+大川橋蔵・主演 第26話「母恋い星」(1966)紹介と感想

あらすじ 子どもをさらう事件が頻発しているが一人も行方がわからない。 平次の所にも石井平四郎の息子・勇太郎を探して欲しいと、乳母・お霜と小間使い・お春が訪ねてくる。 今までの誘拐との相違点に疑問をもつ平次。 和蘭カルタから、人さらいを行っていた抜け荷の一味も捕まえ大手柄をあげるが、勇太郎だけが見つからず。 果たして、勇太郎はどこに消えたのか……。 紹介と感想 今回は子どもへの愛情が大切な要素となっていました。 子どもへの愛情は実の親だけが持つものではない。 どれだけ

銭形平次捕物控48「お藤は解く」(1936)+映像化作品 紹介と感想

あらすじ 甲州屋万兵衛が風呂場で首を切られて殺された。 事件の調べを笹野より直々に頼まれた平次は現場へ赴く。 妾に倅、番頭に弟と家中の者が怪しいが、行儀見習で住んでいる娘・お藤が次々と皆の疑いを解いていく。 容疑者が次々と消えていく中で、果たして事件の真実はどこにあるのか。 平次は少しの矛盾も逃さずに事件を解決へと導いていく。 感想 平次の捜査能力のすごさだけでなく、縮尻平次としての人情も見所です。 もちろん、縮尻平次の真意を理解している笹野様も素晴らしい。 お藤の真