頑張っても給料は高くならないこと

私は、大抵のことは仕組みで解決できるのだろうと思っている。

ミャンマー人の遅刻も、スキルも、お金を盗むか盗まないかについても、仕組みである程度は成功確率をあげることができるのだろう、と。

で、最近は会社のとっても大事なある仕組みを考えているところ。だけどやっぱりなんだかうまく頭のなかが整理できない。

こういう時に少しでも気持ちを切り替えようと文章を書いてみる。

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うちの給料の仕組みは、メイドさんがたくさん件数をこなせばこなすほど、給料が増えるように作られている。

つまり

給料=件数/月✖️その人の単価(スキル毎昇格)

といった具合だ。ざっくりと言うと。つまり月ごとに給料があがったり下がったりするわけだ。

事業をはじめて一年半。私たちはずっとこの仕組みを運用してきた。固定給ではなく。それには以下のような理由がある。

・頑張れば頑張るほど認められるという仕組みにしたい
・お客様に提供する価値を保ちたい

つまりざっくりと言うと「価値がちゃんとお金に変わる仕組みにしたい」と思ってきた。固定給にしなかったのは、緊張感がなくなってお客様に提供する価値がなくなってしまうのではないかと思っていたし、年上の人の意見がたとえ間違っていようとまかり通ってしまうミャンマーの文化の中で、固定給にすることで、そういったことがよりまかり通ってしまうのではないかと思ったからだ。

この人は価値が出せるから給料が高い(年長だからでもなく、経験が長いからでもなく)という仕組みは納得感があった。

しかし、ある日の給料日、事件は起こった。

実はそれまで私たちのメイドさんの給料は下がったことがなかった。そう、一度たりとも。それは考えてみれば簡単なことで、私たちが給料をむやみにあげ続けていたわけではない。単純に、(それもとってもありがたいことに)いるスタッフの数に対してお客さんが増え続けていたからだ。当初は少なかった給料も、どんどん多くなった。同時に一人のスタッフが抱えるお客さんの量は増え、疲労も蓄積していった。

だからお客さんが増えるごとに私たちは採用を増やした。スタッフに限界がやってきて、それこそ疲労のためにクオリティが下がるというのは避けたかった。それでも気をつけていたのは、スタッフが一人増えたからといってみんなの給料が突然、めちゃくちゃ下がったりしないバランスを保つこと。

だけどその月、そう新しいスタッフがトレーニングを終えてデビューしたその月、やっぱりみんなの給料は下がってしまった。あくまで前提として話をすれば、それでもHerBESTの給料は、同じ職業の人たちの2.5~3倍は高い。そしてそれをこの月も維持していた。

さらに問題は続く。一番年長のスタッフが脳梗塞で倒れたのだ。その結果彼女はみんなと同じように動くことができなくなってしまった。何をやるにも時間がかかるし、できる作業に限界もあり、当然クオリティも下がってしまった。当然彼女をアサインできる件数も減ってしまう。そしてこの月、彼女の給料は他の誰よりも低くなってしまった。(くどいけど、それでも相場の1.5倍くらいにはなっていた)

あの月のみんなの落胆の顔を忘れられない。

例の年長のスタッフに至っては泣いて私に抗議してきた。こんなのフェアじゃないと。「私だってもっと頑張れる、もっと部屋数をアサインして欲しい」と。年長者のプライドも合間って、彼女は憤慨していた。

「私だってもっと頑張れる。」

この言葉を聞いた時、しまったと思った。彼女たちは「頑張り=お金」になると思っているのだ。でもわかるように「頑張り=価値」ではない。彼女が頑張っていることはまぎれもない事実だが、彼女は他のスタッフと同じように美しく同じようなスピードで掃除をすることはできない。

「頑張っている」というのはあくまでも主観的な話であってお客さんは彼らの「頑張り」にお金を払っているのではない。お掃除の行き届いた気持ちのいいお部屋を「価値」と感じてお金を払っているのだ。

高い給料を払えば人は幸せになるのか。そんな問いにぶつかるようになった。安月給がいいという訳ではないけど、かといって給料が高くて人は幸せになれるほど単純でもない。

それを実現するには、納得感のある評価と昇級の仕組みが必要だ。固定給で年率で給料が上がっていく・・というのもポリシーとは違う。価値をだしているからではなく、頑張っているからお金が発生する、と言うのも企業としては健全ではない。

そしてそれは、教育を受けていない、日本とは文化も考え方も違う人たちにわかるようにわかりやすく、受け入れやすいものでなければならない。そういった健全な環境の中で、人は価値を出そうと努力する。その価値が認められて正しいヒエラルキーができること。それが私の会社に今一番必要で、私が目下取り組まなきゃいけないことだと思う。


つづく

むーこ頑張れ!と思った方は、サポートいただけると嬉しいです。サポートで帰国して報告会をひらくのが夢です。