結局「感情」には勝てない。
ヤンゴンは夜中の11時半。こんな時間までオフィスにいることは珍しいのだけど、少し何かを忘れたくて仕事に没頭していた。そして多分今も、そう思って文章を書いている。
目の前には飲みかけのオレンジジュースがあって、そこに羽蟻がたかっている。ミャンマーは油断するといつもこうだ。家のどこかに巣があるのかなんなのか知らないが、どこからともなく彼らは現れて、そして自らジュースという液体の中に、自分の身を投げていく。私は不思議でしょうがない。
もう飲めないそのジュースの表面には、死んだ蟻が次々と浮いている。気持ち悪い話でごめんなさい。でも不思議じゃないですか。どうして蟻は、自らの命を滅ぼすものに惹かれて、そして落っこちて、自ら命を落としていくんだろう。
作業に没頭していた私は、蟻さんたちがどんどんオレンジジュースの池に落っこちていくことを、先ほどようやく気が付いたわけだけれども。ずっと見ていたらなんだか、これは人間の恋愛のようだなと気が付いた。
絶対に行ってはいけない、そうなったら戻ってこれない、はまってしまう。
そうなることがわかっていても、人にだって止められない瞬間があるものだ。甘い甘いジュースに喜んで飛び込んでいく蟻さんたちのように。
と、ここまで書いて、だからなんだって言われそうだ。なんだってわけじゃない。ごめんね。夜中に書いているんだ。
私たちには時に理性ではとめられない衝動のようなものがあることを、蟻さんたちは教えてくれた。そう。私の中にもある。それを人は「感情」と呼ぶのだろうと思っている。
「理性」の方が強そうで、実は「感情」のパワーの方がずっと強い。食べたい。悲しい。苦しい。悔しい。嬉しい。愛されたい。愛したい。わからないけど、結局自分を動かすものは、「こうすべきだ」なんてものじゃなくて、いつも感情だ。
トランプが勝ったことも、戦争が終わらないのも、SDGsは達成されそうにないのも、チームワークがうまくいかないのも、多分、「感情」へのアプローチがヒントなんだと思うよ。
人の頭にじゃなくて、どうそのさきの心に届けるのか。
少なくとも目の前のオレンジジュースは、私よりそれがよっぽど得意だ。
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