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「窓口ごとで対応が違うので、他の窓口や支店も試して見てください」


ミャンマーは10月の終わり、まんまるの満月の連休。

この時期はダティンジュのお祭りといって、世間はちょっと賑わいたつ。屋台が出たり、明らかに危ないだろうそれは、っていう観覧車がぐるぐると勢いよく回る。

去年は私もここにいたのだけど、今年はちょっとお休みをいただいて日本に帰ってきた。私は年のほとんどをミャンマーで過ごすので、日本にいられる時間というのはなかなかない。

日本に帰ってくると何をしているのかといえば、結構手続きに追われている。免許の更新とか、健康診断とか、送金とか。

今回も例に倣ってそんな感じだったわけだ。

特に送金はなかなか、ドラマチックだった。というか未だに完了していないので振り返っている場合ではないんだけど(笑)。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆

銀行のカウンターにて。

「1万ドルを送金したいです」

「はい、どちらに?」

「ええと...ミャンマーに。」

この時点でカウンター越しのお姉さんは明らかに引きつっている。

本当にあからさまに顔が引きつるので、そんなに慌てなくても大丈夫よと思っていたのだけど、まぁしょうがない。

ここからが大変だった。スタッフがカウンターの奥から入れ替わり立ち代わり、いろんなことを聞いてくるのだ。


「その会社はミャンマーで本当に登記されていますか」(してます)

「送金が必要だという証拠はどこにありますか」(証拠って何よ)

「あなたの口座のこの入金は何ですか、それを証明できるものはありますか」(それってむしろどうやって証明するか教えて)

「ミャンマーって送金できるんですか」(そこは知っておいてください)


もう私は送金という”サービス”を受けにきたわけではない。これは面談だ。私がマネーロンタリングしていないか、遠回しに聞かれ続けるのだ。

(そりゃ、女性で、ミャンマーとか言わなさそうな顔つきの(おい)、エレガントな私が(おい)、経営者だとか言ってちょこんとカウンターに座っているのである。怪しい・・怪しいのはわかる。だけど、そりゃないぜ!こちとら毎日ミャンマー語喋りながら一生懸命事業してるっての!)


一番びっくりしたことは、TVカウンターに案内された後、登記書類を見たいと言われた時。私はPDFで登記書類を持っているんだけど、PDFなので画面越しに見ていただくわけにもいかないと思い、そちらに送りますよ、と言ってみた。

キョトンとするお姉さん。

「ええと、PDFは印刷が必要です。(どこかで)印刷してからまたこちらに出向いて頂き、そこのスキャナに入れていただき、こちらで確認します」

へ?もう意味がわからない。

PDFを印刷して→スキャンして→またPDFに戻して→確認するだって?

明らかにドンびいている私をよそに、お姉さんは

「こういう決まりなので」

と、涼しい顔をしている。こんなんで、3時間も拘束され、なんなら送金の許可もおりず、3時を過ぎましたので〜と言って終了した。

そして私は、お姉さんの最後の一言を忘れない。

「窓口ごとで対応が違うので、他の窓口や支店も試して見てください」


◆ ◆ ◆ ◆ ◆

どういうこっちゃねん。日本。マネーロンタリングを防ぐために、必要書類をめちゃくちゃ用意することも、用意しなきゃいけない書類が毎回変わることも、もうなんならPDFの件も我慢しよう。

だけど、もしこれを読んでいる方の中に、東京三菱UFJの方がいれば、せめて「窓口ごとで対応が違う」とかいう不思議を解消してほしいと切に願う。

どういうこと?つまり私はこの件について責任を取りたくないけど、たまたま良い心意気のお姉さんのカウンターだったら(またはその方の上司がイケてる理解ある人だったら)いけるかもね!ってこと?

ミャンマーにいると言うと、よく「インフラ整ってなくて大変ですね〜」とまるで日本の方が優れているかのように言われることがあるのだけれど、こういうところはよっぽどミャンマーの方がやりやすい。整っていない分だけ柔軟でしなやかだし、人々は謎のトラブル解決にはことさら強いのだ。

こういった一個一個の小さな違和感が、日本をいつか(もうすでに)衰退へと導いていくと私は本気で思うのだけれど。そしてその違和感に気がつかず真顔で言えることがすごいよね、日本。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

さてと、だいぶ愚痴っぽくなってしまった。

だけどもちろん日本には日本のよさもあるわけで。この清潔さや道の平さや、コンビニスイーツや、いつも忘れずにいてくれる暖かい友人、恩師たち。

日本は日本でとても好きですよ、私は。でもミャンマーで頻発する停電や断水より、こういうことの方がよっぱどマズイよ、と思っちゃったなぁ。

マニュアルやオペレーションの枠をこえて行動できる人が出世する世の中になりますように。

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むーこ
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