【カヌーポロ】2022年世界選手権の話①
フランス・サントメールにて8月16日(火)~21日(日)まで開催された世界選手権が終了しました。
新型コロナウィルスによって延期・中止を経て4年ぶりの開催でしたが、無事に全日程が実施されました。オーストラリア、ブラジル、ロシアなど常連国の不参加や、エントリーしていたけどキャンセルとなったカナダ・イラン・インド・ポーランド(女子のみキャンセル)などコロナや国際情勢の影響を色濃く感じる大会でもありました。一方で初出場や久々の出場など、いつもとは違う顔ぶれも登場し、カヌーポロの国際的な普及・拡大も垣間見えて嬉しい気持ちもありました。
全体的な所感としては、大きな波乱は起こらず概ね妥当な順位に落ち着いたという感想です。とはいえ、日本の順位についてはもっと上位に行けるのではと期待していたので残念ではありました。
記事にしたい内容が非常に盛りだくさんなので複数回にわたって連載したいと思いますが、
今回はまず男子シニアの結果について触れたいと思います。
1位 ドイツ
前回大会に続き2連覇を達成!カヌーポロ大国ドイツは今回も強かったです。2次リーグと決勝で当たったスペインとは2回とも好勝負を繰り広げましたが、その他のチームには危なげなく勝ち上がりました。準決勝のイギリス戦で8-2のスコアになったときは決勝戦も興醒めな展開になっちゃうかも、と心配しました。
ドイツの強さの一端がわかるような面白いデータがあります。得点者の内訳を見てみると14点、13点、12点、11点がそれぞれ1人ずつ、7点×2人と各選手が高い得点能力を持っており、エース的存在がいないことがわかります。これは他の国には見られない傾向で、他は上位国であってもエース的な得点力のある選手が1人か2人はいます。
ディフェンス側から見れば誰かを抑え込めば済むわけじゃないので守りづらいです。得点パターンのバリエーションが多いのだと思います。ドイツの強さの理由の一つかもしれませんね。
2位 スペイン
ドイツ相手に2次リーグでも1点差、決勝は延長戦にもつれ込むなど好勝負を繰り広げました。近年ずっと銅メダルが続いていましたが、ついに今回ここまで上がってきました。
3位 イタリア
「強いのはわかるんだけどフランス、GBのが強そうなんだけどなぁ~」といつも思うのだけど、なぜか勝ち上がるのがイタリア。
準決勝は最後の最後に没収試合で7-0。今回で引退を表明しているルカはこれまで優勝も経験し、間違いなくカヌーポロ界のスター選手なのに、晩節を汚すような行為で残念。
ただ3位決定戦は立て直し、しっかり勝ちきるところはさすがでした。
4位 イギリス
2019年のヨーロッパ選手権の時とはメンバーもチームカラーもだいぶ変わった印象。2019年のGBはJack PlayfordとRoss Montgomeryの2枚による超攻撃的なイケイケチームでしたが、今回はディフェンシブなチームに変わった気がします。Ross Montgomeryは今回も出場していましたが、得点は9点(GB内では最多)といまいちな印象。
事実、準決勝に勝ち上がった4強の中ではGBの合計得点数は圧倒的に少なかったです。
・ドイツ 66点
・スペイン 53点
・イタリア 41点
・イギリス 28点
火力アップが今後の課題かもしれません。
5位 デンマーク
2010年頃から力をつけてきたデンマーク。今回は過去最高の5位になりました。2次リーグではGBとも引き分けていますし、5位決定戦でフランスに勝ち切ったのがすごいです。
キャプテンのマシアスを筆頭にパワー系の選手が多く、フランスのディフェンスを崩しまくっていたのはすごかったです。ちなみに9番のIVERSEN ANDREAS KAADは日本の木村選手に次ぐ得点ランキング2位(18点)でした。
6位 フランス
ここ最近の大会動画を見て、とても強い印象だったのですが思ったほど順位は伸びず。速攻時にロングシュートを撃つのを徹底していました。何本も決めていて強力な武器である反面、GB、イタリア、デンマーク戦など重要な試合で外しててもったいないとも感じました。
7位 ポルトガル
上位国に対しても得点できる攻撃力の高さがうかがえました。(ドイツ戦は例外・・・)
8位 オランダ
2次予選では1勝1敗3分という成績。スペイン相手にも試合もロースコアでドローに持ち込むなど実力はあったのだが、勝ちきれずにこの順位。かつてのJDのような絶対的エースが誕生すると、もう1段階上の領域に行けるのかもしれないですね。
9位 スイス
今回もキーパーの1番は健在。2010年にオランダを破る大番狂わせを起こして4位という大快挙を成し遂げた時からずっといます。それ以降も強いっちゃ強いけどやや停滞気味な印象です。
10位 ポーランド
予選のフランス戦をはじめ、今大会はかなり仕上がっている印象だったが終わってみればこの順位。2番の相手を乗り越える貫通力の高いドライブと、キーパーだけ出てくる10番が特徴的なチームでした。キーパーが出てくると解説の人も思わず笑っていましたね。
11位 ニュージーランド
予選はオーストリアに引き分け、マレーシアにも僅差で勝ちなんとか上位リーグに進出。ごくごく平凡なチームです。この辺りは下位リーグと実力的に差はないと感じます。
12位 台湾
予選の顔ぶれを見る限り楽勝リーグでいいなぁ、なんて思っていましたが、ニュージーと同じく大苦戦。なんと今回の台湾は、香港戦での1勝とアメリカとの引き分け以外は全て負け。アメリカ戦を見ましたが、なんとか引き分けに持ち込めたという感じでした。もしかしたらアメリカが上位リーグに勝ち上がる・・・なんて大番狂わせがあったかもしれないですね。
13位 日本
ポルトガル戦の残り20秒からの逆点はショッキングでした。シード権の獲得はもとより少しでも順位を上げることが次回大会を有利に進めるのに大事なことなので下位リーグの最上位13位につけたのは非常に良かったです。次回に期待できる順位となりました。
14位 ベルギー
2大会ぶりの出場。1次リーグのポーランドに引き分けた試合展開は今大会屈指の面白い試合でした。下位リーグでは蹂躙しまくるのかと思いきや、スウェーデンとは引き分け、リトアニアには負けている展開の中、相手チームが3人退場したので7-0で勝ちというパッとしない感じでした。
15位 スウェーデン
2012年の7位が最高位。その後はパッとしない結果が続いています。今回はなんとかシード権獲得。
16位 オーストリア
以前の記事でも書きましたが、1994年の第1回大会以来の出場。一時はカヌーポロ自体廃れてしまっていたのかもしれませんが、2010年代から少しずつ情報が出始め、現在は首都ウィーンやザルツブルクなどを中心に国内の5ヶ所にチームがあるようです。(我ながらとてもマニアックな情報です。)
2019年のヨーロッパ選手権に出場した際は最下位でしたが、今大会ではニュージーランドに引き分け、日本に勝つなど徐々に力をつけてきています。次回大会のシード権も獲得。
17位 リトアニア
2002年の世界選手権にエントリーしていたがキャンセル。その後ヨーロッパ選手権にはときどき出場していたけど、なんと世界選手権は初出場。特に注目もしていなかったので試合は全然見なかったし、このくらいの順位だろうなと思っていたので特筆事項はありません。
18位 マレーシア
2次リーグでオーストリアに勝ったのは日本的には大感謝ですね。ニュージーにも僅差に迫るなど、国際大会の経験を積むごとにレベルアップしている印象です。ヨーロッパとの差を埋めるには、直に戦って経験値を積むのが一番です。
19位 アメリカ
前述の通りなぜか台湾と引き分けました。そこが今大会のピークの試合で、残る対戦相手にはやられまくり。香港とは予選と最終戦の2回戦って勝利。結果を見ればいつも通りのアメリカといったところです。
20位 香港
2004年以来18年ぶりの出場。アジアのカヌーポロの中では最も歴史が古く、90年代半ばまではアジアの王者でした。ちなみに日本にカヌーポロが伝わったのも香港からと言われています。・・・と今大会に全く関係ない情報ばかりなのは、試合に関して特筆すべきところはなかったからです、はい。
21位 ウクライナ
2012年にワイルドカードで申請していたが出場できず、今回が初出場。国際大会は2017年のヨーロッパ選手権以来です。
結果については順当と言えば順当ですが大変な状況の中、大会に出場したことが素晴らしいと思いました。
一日も早く平穏にカヌーポロを楽しめる時が来てほしいと願うばかりです。
まとめ
今回の記事ではシニア男子の感想を書きました。上位6ヶ国は新6強と呼べるような強豪国ですが、7位以下の実力差はそれほど開いていないようにも思いました。今回参加できなかったオーストラリア、イラン、カナダ、ブラジル、ロシアなど中堅クラスの国が次回の世界選手権には出場してくるかもしれません。そうなるとますます楽しい世界選手権になりそうですね。
まだ今大会の試合をすべて見たわけではないので、まずは気になる試合から徐々に見ていきたいと思います。