デジタル民主主義は一般意志を提示できるか?
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——— 最近、落合陽一氏や東浩紀氏らが、AIを活用したデジタル民主主義という新しい概念を提唱しているようです。これは、AIを用いて人々の行動パターンや需要を大規模データから分析し、その結果を政策立案や社会運営に活用しようという試みかもしれません。このような構想は、近代民主主義の基盤となった一般意志の概念を、現代技術を用いて具現化しようとする試みとも捉えられるのではないでしょうか。
しかし、東浩紀氏自身も指摘しているように、この構想には様々な課題が存在する可能性があります。東氏の見解を参考に、私なりにまとめると、主な問題点として以下が考えられます:
●AIのアルゴリズムの結果をどのように認識するかは最終的に個人の意識の確信であり、データそのものを一般意志ということはできない。
●AIのアルゴリズムそのものが不透明で、意思決定プロセスが見えにくくなり、訂正やアップグレードが難しい。
●人工知能は過去のデータに基づいて学習するため、そのデータ自体に偏りがあった場合(データ自体コレクターの欲望関心と相関しているので、ニュートラルなデータはありえない)、偏見や不適切な判断が固定されやすい。
●人工知能は「大多数」の人間の傾向を提示するので、異なる意見や少数意見が反映されにくく、民主的な合意形成が困難。
●デジタル民主主義を管理する企業(デジタル民主主義には多額の費用がいる)や政府の意向が反映されやすく、公平性が損なわれるリスクがある。
●ある特定の文化圏やある特定の時代のデータに基づく最適解が提示された場合、人間の倫理や価値観を反映せず、社会にそぐわない決定がされる恐れがある。
●そもそもデジタル民主主義には市民の対話のプロセスが含まれていないので、市民の直接関与が欠け、合意形成や異論を受け入れるプロセスが消失しやすい。
●AIの計算力に過信すると、科学的エビデンス至上主義になりやすく、反省的・経験的エビデンスが軽視され、人間的な判断が軽視される恐れがある。
このように、AIに過度に依存したデジタル民主主義には多くの課題があるように思われます。ただし、AIの活用自体を否定するのではなく、それを意思決定の補助ツールとして適切に活用することが重要かもしれません。最終的な判断は人間が行い、多様な意見を包含した合意形成を目指すべきではないでしょうか。つまり、偏った結論を避け、より多くの人々が納得できる解決策を見出すには、やはり人間による慎重な判断と対話が不可欠なのかもしれません。
【参考文献】
東浩紀「訂正可能性の哲学」(ゲンロン叢書)