『小松未歩ベスト ~once more~』 セルフライナーノーツ
メジャーデビュー25周年を祝し、デビュー日にあたる今年 5月28日に「サブスク&ダウンロードサービス」での配信が解禁になった小松未歩。
小松未歩と言えば、TVアニメ「名探偵コナン」のオープニングテーマに抜擢されたデビューシングル「謎」がいきなりのスマッシュヒットを放ち、その後も「願い事ひとつだけ」「氷の上に立つように」(「名探偵コナン」EDテーマ)、「チャンス」(「めざましテレビ」テーマソング)他、数々のヒット曲を世に送り出したシンガーソングライターだ。自身の作品以外にも、WANDS、DEEN、FIELD OF VIEW他、多数のアーティストに楽曲を提供するなど、90年代後半〜2000年代にコンポーザーとしても活躍した。
彼女は、卓越したメロディ・センスとリリカルな歌詞世界に定評があり、ヒットシングル以外にも名曲が多く、時代を越え今もなお根強いファンが存在する。最近では、スピッツの草野マサムネが自身のラジオ番組で、「ラジオで聴きたい過去の名曲」として彼女の7th Sg「さよならのかけら」を取り上げ、話題となったのも記憶に新しい。
さらに、彼女を見出し、育て上げたプロデューサー・長戸大幸のもと、YouTubeで小松未歩のカバーに挑戦するニューカマー・花リナが登場するなど、再び脚光を浴びている。
そこでmusic freak magazineでは、過去に掲載した多数のインタビューや特集記事より、2006年11月22日にリリースされたベストアルバム『小松未歩ベスト 〜once more〜』のセルフライナーノーツをピックアップ!(music freak magazine vol.144 / 2006年11月発行号)
制作当時の秘話などにも触れた貴重なコメントを振り返りつつ、ぜひ小松未歩の音楽ワールドに触れて欲しい!
[DISC 1]
■M-1「謎」
レコーディングが思った以上に難航してしまい、デモテープをスタッフみんなで何度も聴き返しながら、歌って歌っての毎日でした。今でも作業に取り掛かる前は、この時の気持ちが蘇ってきます。
■M-2「輝ける星」
メロディを聴いてもらう仮のつもりで乗せていた歌詞がOKだったので、あの時は困惑したのですが、これが私の作詞スタイルだったみたいで、これから先もこのテイストは続いています。
■M-3「願い事ひとつだけ」
作品はスタッフとのチームワークで出来ていくんだなぁと実感していた時期でした。テレビで観ていた憧れの世界に飛び込んだというプレッシャーもひしひしと感じ始めた頃だったでしょうか。
■M-4「anybody's game」
ストック曲がいくつかある中からこれが選ばれた時は“えっ?”という感じで……。すべてが駆け足で進む環境にも慣れなくて、それについて行くだけで当時はいっぱいいっぱいでしたね。
■M-5「チャンス」
曲のイメージとは真逆の暗〜い気持ちで制作していたので、テンションを上げるために大音量でスタジオ作業してました。いつも耳がキンキンなっていたのは、きっとそのせいなのでしょう。
■M-6「氷の上に立つように」
自分の弱さや存在の小ささを痛感していたようで、地球とか宇宙に自分を投影させながら曲を作っている時期でした。強くなりたい願望が当時は強く、声も歌い方も少し男の子っぽい気がします。
■M-7「さよならのかけら」
この曲を描いた時の、映像が迫ってくる哀しい感じを今でもハッキリ覚えています。この頃はシングルといえば前向きが定番だったのですが、急遽リリースしたので最後までネガティブですよね。
■M-8「最短距離で」
自分で言うのも何ですが、スポンジが水を吸い込むように、いろんな事柄を抵抗なく受け入れていた時期だったと思います。何をしてても新鮮な感動があって、それが次々と作品になってました。
■M-9「風がそよぐ場所」
ノストラダムスの大予言を少し信じていた世紀末あたりの作品には、ホントよく地球が出てきてました。大切にしたいと思いつつも、刹那的な生き方にも憧れたり……揺らいでたようです。
■M-10「あなたがいるから」
映画館で聴いたこの曲は、やはり飛び切りのものでした。我が家のオーディオ以外から自分のメロディが流れてくると、レコーディングでのみんなの苦労が報われていくようで、喜びが倍増します。
■M-11「君の瞳には映らない」
曲もジャケットもどうしてこのタイミングでリリースされたのかも、結局は全く説明出来ないのですが、何かに突き動かされるようにして出来た作品は、いつまでも新鮮な匂いを漂わせますね。
■M-12「Love gone」
やっとここら辺で“らしさ”を強く意識しながら、曲作りできるようになったのではないでしょうか。やはり私は、恨み節っぽい哀しげな恋を歌っている時の出来上がりが一番早い気がします。
■M-13「とどまることのない愛」
この頃は、歌いたい曲のイメージをしっかり抱きながら作詞、作曲してました。私の好みを熟知してくれるスタッフとの作業は、試行錯誤する事が楽しくて、寝不足もなんのそのでしたね。
■M-14「さいごの砦」
新鮮な発見や驚き、感情の揺れは作品に反映されやすいので、とても個人的な事柄を歌う事もこの頃はしばしば……。今読み返してみますと、日記みたいで恥ずかしさと懐かしさが交錯します。
[DISC 2]
■M-1「愛してる…」
シンプルな言葉で気持ちを伝えるのはとても照れくさいですけど、この曲は“愛してる”が素直に響いてくれたので、そのままタイトルにしました。でもたぶん「…」を入れたのは照れですね。
■M-2「dance」
感化されやすい私は、R&Bが日本の音楽シーンでもよく聴かれるようになったこの時期に、uhh・ahhが入った曲を……と、コーラスワークを駆使した歌が歌いたくなって作りました。
■M-3「mysterious love」
すべてお任せでしたのでMixされたものを聴いた時は、思わず感嘆の声をあげてしまったくらい、素敵な仕上がりに小躍りしたものです。原曲の面影ゼロなのは、この作品が群を抜いてますね。
■M-4「ふたりの願い」
デモの段階から“いつか世の中の人に聴いてもらいたいね”とスタッフに言われ、寝かせていた曲でした。嬉しい反応でしたけど、プレッシャーを感じながらその後の作業をしていた気がします。
■M-5「私さがし」
しっかり人生を語った曲も避けてないで作らなきゃと一念発起して挑んだ作品です。ちゃんとその気持ちに気づいてもらえたようで、ジャケット・PV撮影は日本海まで連れて行ってもらえました。
■M-6「翼はなくても」
頼りない自分は浮き彫りにされましたけど、軸のぶれないあたたかいスタッフに支えられてきたお陰で“しんどいながらも楽しく活動してこられたんだなあ”と改めて実感していた時期でした。
■M-7「涙キラリ飛ばせ」
うっかりしてるとなぜか悲劇の方に進んでしまうので、ヴィジョンをしっかり持って、マイナー調に傾かないように……。そんな創作活動を心掛けながら、この頃は軽やかな曲を仕上げていました。
■M-8「砂のしろ」
お部屋で山積みになっている資料を思いきり捨てるのも楽しみのひとつ。この企画は一年以上あたためていたので、作品につめ込めたときに一掃できて、ほんとスッキリしたのを覚えています。
■M-9「I 〜誰か…」
ずっと自分の存在の危うさみたいなものを漠然と感じていたのですが、ここでやっと声になった感じでした。そんな不安は今も全然変わりませんけど、詞を読み返しますとちょっと暗いですかね。
■M-10「I just wanna hold you tight」
テーマのある作業が久しぶりでしたので、忠実に守ろうとしてしまいNGばかり……。やっぱり「“らしさ”を忘れてはいけないんだなあ」とOKテイクを聴きながらしみじみ感じていました。
■M-11「あなた色」
自由に制作活動させてもらえる環境に感謝しながら、色んな私を見て頂きたくて曲を作っている時期でした。でもいつも私が感動をもらうばかりで、思ったようにお返し出来ていないのが現状です。
■M-12「恋になれ…」
「いつ作ったんだろう?」という曲がストックされている事はよくあるのですが、これもいつの間にか……でした。でもリリースされた時期に、ちゃんと作品が旬を迎えてくれる気がします。
■M-13「happy ending」
結果哀しくても、後々その場面を思い浮かべた時にクスッと笑える瞬間であって欲しいと願いながら、なるべくオチは温かい情景を描くようにしています。簡単なようで難しい永遠のテーマです。
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