OLDIES GOODIES #102_「ZARD6週連続SPECIAL (second week)
ミュージックフリークマガジンいち押しラジオ番組♪♪♪ フォークシンガー・ばんばひろふみ氏と、音楽プロデューサー・長戸大幸氏が圧倒的な音楽知識と豊富な経験で、1950~70年代の洋楽を中心に多くのアーティストがカバーする大ヒット曲や、ここでしか聴けない激レア音源等を紹介してくれる「OLDIES GOODIES」をご紹介!
ばんばん)今週も始まりました、ばんばん・大幸の「OLDIES GOODOES」。ばんばひろふみです。
大幸)長戸大幸です。
ばんばん)大幸さん、今週もZARD特集ということで、
大幸)大変僭越ですけど、ZARDのミュージアムを大阪で好評だったので、東京でもやろうってことで、それであればZARDの特集をやろうと。
ばんばん)「ZARD MUSEUM」は、いつからやるの?
大幸)東京は9/16(金)〜10/23(日)までです。この番組では6週連続で、ZARDの後ろで頑張っていた色々な人たちをゲストで来てもらおうということで。
ばんばん)先週はデザイナーの鈴木謙一さんに来ていただきましたが。
大幸)はい。今日はエンジニアの島田さんをお迎えしたんで。
島田)よろしくお願いします。
ばんばん)島田勝弘(※注釈1)さん、よろしくお願いします。島田さんはどういう関わりでZARDのエンジニアをやることになったんですか?
島田)関わりは〜、、、。今日は長戸さんというよりも大幸さんと呼ばせていただきますけれども。当時、エンジニアもディレクターもある程度同じ位の年齢で、そういう(当時若手だった)人たちをレコーディング担当として大幸さんがピックアップしたと思うんですよ。
ばんばん)なるほど。特にZARDをやるにあたり、大幸さんから注文とかなかった?
島田)その当時は多分なかったと思うんですけどね。
ばんばん)あっそうか〜。でも最初から関わってるんだもんね。
島田)そうです。
ばんばん)どんどん売れていく様子をずっと見ているわけでしょ? どうでしたか?
島田)自分の中では、仕事に追われてるっていうか、もう次から次へと仕事が入ってきちゃったんで・・・当時を振り返ってみるとそういう感じですね。
ばんばん)大幸さんは、ZARDの音をどういう感じの音でというのは、コンセプトはあったんですか?
大幸)もちろんありましたよね。僕はやっぱりロックを基盤にしたポップスをやりたかったんですよ。だからロックをどこかで感じさせる、で、めちゃくちゃハードロックなアレンジでも、ヴォーカルが女性で、例えばマドンナが歌ったらマドンナになるし、別にサウンドはポップだからってあんまりポップにする必要はなくて、サウンドはあくまでもロックで、声が昔のオールディーズみたいな延長線上にやりたかったんですけどね。
ばんばん)うんうん、なるほど。
大幸)で、島田さん当初はサブエンジニアみたいな感じだったんだけれども、途中からメインのエンジニアになったんですよね。確か「おどるポンポコリン」もそうじゃなかった?
島田)あっ、そうですね。
大幸)「おどるポンポコリン」を彼がメインでやってたんで、そこから彼が出てきた。ちょうど「おどるポンポコリン」の後からZARDが出てきたので、ずっと彼がZARDをやってたんだと思うんですけどね。
ばんばん)色んなヴォーカリストの声って、100あれば100違うわけで、坂井さんの声ってやりやすい声でしたか?
島田)声は基本的にはいい声してますよ。あと声量もやっぱりすごいですからね。
ばんばん)ということは、基本的にやりやすかった?
島田)そうですね。
大幸)僕は1991年に彼女がデビューして、1993年の末まで約2年間しかやってないんですよ。1993年の末くらいから僕は大阪に来ましたから。ただ大阪の今このラジオを録ってるスタジオに彼女が来て、2000年くらいからここでもレコーディングをやるようになってましたけど。彼女は大阪にも来るけど、東京のスタジオにも行くんで、東京でのレコーディングは彼が全部やってたと思うんですけど。だから僕本当に彼とはあまり会ってないんですよ。
島田)そうですね。具体的にこうやって対談してるのが本当に珍しいです。
大幸)だから、30年間のうち彼に本当に会ってないと思いますよ。
ばんばん)ホンマ〜(笑)
大幸)30歳年取ったってことだよね。だってあの頃まだ20代? 今いくつになったか知らないけど、彼も若く見えるから。
ばんばん)会う必要がなかったということですか?
大幸)いや、基本的に誰とも会ってませんよ、私は。
ばんばん)なんか大幸さんって人とあまり会わないですね。
大幸)いや全然会ってないんですよ、誰とも。音楽業界の人と全然会ってないです。
ばんばん)その方がやりやすい?
大幸)やりやすいですよね。
ばんばん)なるほどね。
大幸)前も話したかもしれないけど、僕は忙しかった時は9割断る話なんです。秘書が僕に会いたいっていう人のスケジュールを埋めていくもんだから、2、3ヶ月ずっとスケジュールがいっぱいになるんですよ。で、向こうが会いたいってことは、こっちが会いたいわけではないってことなんですよ。
ばんばん)そりゃ、そうやね(笑)
大幸)でしょー。で、向こうが会いたいってことは、会って何かして欲しいとか、私の後ろにいるアーティストのことで会いたいってことだから、9割は断る話なんですよ。だから人から「会いたい、会いたい」って言われて、大変煮詰まってましたよ。有名な人は大変だと思いますよ、みんなから会いたいって言われて。
ばんばん)だからさ、大幸さん神格化みたいにされていくんじゃない?「なかなか会えへん!」って。
大幸)いや、だから僕自身に会いたい人と会いたいんですよ。もしくは僕が会いたい人に会いたいのに、向こうが会いたいって人が増えてきたら、とてもじゃないけど〜。
ばんばん)そりゃ、しょうがないですよ(笑)
大幸)うん、だから逃げたんですよ。逃げたっていうかやめたんです。
ばんばん)なるほど。そうなんや。
大幸)自分が会いたい人と会いたいじゃないですか。男性でも、女性でも。会いたい人と会えるためには、向こうから会いたいと言われないことなんですよ。ばんばんさんも若い頃から有名になって大変だったんじゃないですか?
ばんばん)そんなことないですよ。僕は大丈夫ですけれども。
大幸)ばんばんさん、私が会社を作る前に有名だったんですよ。「SACHIKO」が売れた時がうちの会社を作った年ですからね。うちのビーイングってのは1978年からスタートしてるんです。「SACHIKO」も1978年じゃないですか?
ばんばん)そうですね。(※正確には1978年に「バンバン」を解散後、ソロとなり、1979年9月21日に「SACHIKO」をリリース)
大幸)そこから私はスタートですから。そちらはそれまでに1位を2回も獲ってるわけだから、スターになって大変だったと思う。
まぁ〜、なんか何の話か分からなくなっちゃったけど(笑)
ばんばん)今やそんな二人が一緒にラジオをやってますけどね(笑)
大幸)僕は滋賀県出身で、ばんばんさんは滋賀県在住なの。
島田)はい。
大幸)だから滋賀県のためにも頑張ってやっていこうと思ってるんですが。
ばんばん)島田さんは出身はどこですか?
島田)僕は千葉県ですね。
ばんばん)あ〜そうですか。ほな、色々ZARDの曲について具体的に聞いていかないといけないんですが。
大幸)はい。ではまず最初に「心を開いて」(※注釈2)からいきましょうかね。これミックスは確かアンディーさんでしたっけ?
島田)はい。アンディー・ジョーンズ(※注釈3)さんですね。例えばツェッペリンとか、イーグルスとか、ヴァン・ヘイレンとかやってた人で、うちではB’zでちょっと関わってた人なんですけれども、それでZARDのミックスもお願いして。バードマンウエストという自社スタジオが六本木にあるんですけれども、そこにアンディーさんを呼んで、ミックスもそこでやったんですけどね。
ばんばん)エンジニア?
島田)そうです。
大幸)どんな人でした?
島田)その時の逸話がすごいんですよ。とんでるっていうか(笑)。ミックスは一流なんですけど、作業の間に例えばビールをですね、もう水代わりに飲んでました(笑)。冷蔵庫に例えば1ダースビールが入ってるとしますよね。終わってる時はほとんど空なんですよ。
ばんばん)ほ〜(笑)。酔っ払いながら?
島田)まあ、全然酔っ払ってはいないんですよ。
ばんばん)音の作り方とかは、やっぱり参考になりましたか?
島田)参考になりました。本当に。ちょっと専門的な話になっちゃうんですけど、自分でエンジニアをやるにあたって、音の録り方っていうんですかね、実はオンマイクの他にアンビエンスといってオフマイク、部屋の鳴りを録ったりとか、雰囲気を録るマイクが非常に必要だってすごく勉強になりましたね。
ばんばん)色んなエンジニアの本とか呼んでると、マイクのセッティングで全然音が変わったという話が載ってますけど。
島田)本当にそうです。
ばんばん)それがまあ、ZARDにいかされているわけですね。
島田)そうですね。最終的に「心を開いて」は打ち込みドラムなんですけれども、あたかもドラマーが叩いてるかのような躍動感がすごく出てるんです。
ばんばん)打ち込みであっても、今だとちょっとずらしたりだとか、本当の人間が叩いてるかのように出来るけど、当時そこまでの技術はなかったですよね?
島田)そこまでは行ってなかったと思います。
ばんばん)だから、そういう雰囲気を出すのはすごく大変やったと思う。
島田)本当に素晴らしかったです。
ばんばん)じゃあ、その曲を聴いてみましょうか。
大幸)はい。ZARDの「心を開いて」。
大幸)「心を開いて」はね、元々Mi-Ke用に書いてもらった曲の、ボツ曲なんですよ。
島田)あっ、そうなんですか。
大幸)そう。良くないってことだったんだけど、じゃあいい詞をハメたら曲がいきるんじゃないかと考えたの。曲が良くない時っていうのは、いい詞がハマることがよくあるんですよ。
ばんばん)あ〜、逆にね。
大幸)はい。で、たまたまこういう風にうまく行ったんですけどね。
ばんばん)1位ですもんね
大幸)はい。続きまして次の曲は「永遠」(※注釈4)。
島田)コレは思い出がありまして、ロスに撮影に行ってるはずなんですよ。その時にお土産で、コレいただいたんですけれども。
ばんばん)今日着てるTシャツ?
島田)はい。25年前くらいで色褪せちゃってるんですけれども、今回の出演が決まった時に、ぜひこれを着ていこうと。
大幸)なるほど(笑)
ばんばん)この曲はロスで撮影したってことですけど、サウンドはウエストコーストとかは意識しました?
島田)いや、特にそれはなかったですね。元々エンジニアがマイケル・ブラウアー(※注釈5)さんって方で、ニューヨークをホームグラウンドにしている方なんですよ。特にロスっていう意識はなかったですけれども。
大幸)コレ、彼がストリングス・ダビングをやってる。
島田)ストリング・ダビングはバードマンウエストで、僕と、坂井さんも立ち会ってやってます。で、ミックスはマイケル・ブラウアーさんがニューヨークでやってますね。
確認用の音源(データ)が当時ネットの回線の問題っていうか、技術的な問題で、モノラル(以下モノ)で送られてきたんですよ。で、その音の印象がすごく強くて、坂井さんが後にステレオで送られてきたミックスの音を聴いて、「間奏からモノにしてくれ」と。ヘッドフォンで聴くとよく分かります。
ばんばん)はっは〜。明らかに大幸さんとか僕らはモノで育ったじゃないですか。だからモノの音圧とか凝縮感とかすごく分かりますけど。で、コレを途中からモノにした効果ってのはすごく出てますか?
島田)そうですね。やっぱりギュっと、
ばんばん)しまるというか?
島田)そうですね。
ばんばん)それは坂井さんの希望で?
島田)はい。やっぱり最初にモノで送られてきた時に聴いた音のイメージが強かったんじゃないですかね。
ばんばん)ほ〜。そうなんや。じゃあ途中でモノになるという、この曲をぜひ聴いていただきたいですね。
大幸)はい。では、ZARDで「永遠」。
ばんばん)さて続いては、「きっと忘れない」(※注釈6)。それぞれ曲をレコーディングしてこられた中で、全部思い入れがあるでしょう?
島田)そうですね。
ばんばん)この曲はどうですか?
島田)コレ最初は(アレンジの)構成が違ってたんですよ。元々は、シンセのイントロが鳴っていきなりAメロだったんですけれども、ミックス直前だったと思うんですが急遽サビ頭に構成を変えたんです。それで、当時はコンピューターとかそういうものがないので、コピペするみたいにパッパッといかないので。
ばんばん)ホンマやね、今だったら簡単に出来るけど。
島田)昔「3348」っていう機材を2台同期させて、位置をずらしてはめ込んでいったんですけれどもね。
ばんばん)そうか。今はいくらでも切り貼り出来ますやんね。それがまだ出来ない時代という、その苦労はやっぱりありますよね。
島田)ありましたね。その他にも結構構成変えした曲もいっぱいありますね。
大幸)構成変えした大半は私が関わってるんですけれどもね(笑)。コレなんか完全にサビ以外良かったので、頭サビに変えたかったんですけれども。
ばんばん)でも、変えていくっていうのもなかなか。
大幸)いやもう〜現場は大変だったと思います(笑)
島田)そうですね(笑)
ばんばん)今の時代とちゃうからね。
大幸)すみません。僕毎回変えてた、色んなこと(笑)
ばんばん)(笑)。エンジニア泣かせやないですか。
大幸)いやレコーディングだけは、本当に何十回じゃなくて、何百回やってますから、同じ曲を。完全に出来て発売したのに、発売何十万枚とプレスしているのに、全部回収してやり直したりとかもありました。
島田)あ〜、そういうのもありましたね。
大幸)発売日延ばして。
ばんばん)それは何? 途中で気に入らなくなって?
大幸)はい。やっぱりダメだなって。ダメなものを出してるってのは良くないじゃないですか。
ばんばん)まあ〜確かに(笑)
大幸)だからダメなもの出すくらいだったら全部回収しようって。で、もう一度やり直して出したりして。2001年にリリースしたアルバム『時間(とき)の翼』に関しては、やっぱり納得いかないからって回収したまま、長年そのまま(廃盤)になっていて、この間再発したんじゃないですか? やり直して。
島田)そうですね。
大幸)良くないからって回収したはいいけど、一度発売してるわけだから市場には出回ってるわけじゃないですか。で、レコード会社が途中で出荷停止にしたもんだから、その良くないものが高値で売られるようになってしまったんですよ。
ばんばん)それ、完全にコレクターズアイテムじゃないですか。
島田)そうです。
大幸)そうなっちゃってるんで、アレンジからやり直してもう一度発売し直しましたよ。
島田)タイトル曲の「時間(とき)の翼」も途中でフェイドアウトしちゃってますからね。フルサイズじゃなくて、時間短くして。
大幸)それはやっぱり良くないからなんですよ。っていうのはね、当時彼女は2004、5年位から体調がすごく悪くなって、結局最終的には癌で亡くなるんですけど。それ以前から何回も体調が悪くなり、良くなりの繰り返しだったんです。だから体調はもうずーっと悪かったんですよ。
島田)そうですね。2004年のライブも結構体調悪かったですよね。
大幸)本当にそういう中でやってきたんで。彼は一番彼女といる時間(スタジオワーク)が多かったと思います。
ばんばん)そういう意味ではすごく気を遣いますよね。体調が悪いし。
島田)基本的には自分のポリシーとして、自分は「旅館の女将」ってスタンスなんです。あまり気を遣わせないで、さりげない気の遣い方というか、そういうスタンスでやってましたんで。だからまあ(坂井さんが)家にいる時とあまり変わらない感じでレコーディング出来るようにっていうか。
ばんばん)うんうん。では、続いて聴くのは「きっと忘れない」。コレが(アレンジの)構成が入れ替わってる曲ですね。
島田)はい。
ばんばん)では、アレンジを気にしながら聴きましょう。
大幸)続きまして「雨に濡れて」(※注釈7)。
ばんばん)コレあの〜、いいですね、色んなレコーディングの時の話とか聞けて。
大幸)ねぇ。では「雨に濡れて」はどうですか?
島田)僕は学生時代に軽音楽部でドラムをやっていたんですけれども、ドラマーへのこだわりが強いんですよね。だからこの曲を聴くと、当時の青山純さんのノリがすごいんですよ。本当にドラムが歌っているような感じなので。あと、歌とのノリのグルーヴですね。やっぱりすごいですよ、コレは。
ばんばん)そういう演奏がええ時って、ミキシングしていても気持ちええでしょ? エンジニア的には。
島田)そうですね。あと、聴いている時にも気持ちいいです。
ばんばん)大幸さん、この曲はどうですか?
大幸)いやこの曲は僕すごく好きで。コレ、長嶋茂雄さんとやったシングルのB面なんですよ。
ばんばん)長嶋茂雄さんって、あの野球の?
大幸)そうそう。
ばんばん)えっ?
大幸)長嶋さんが監督やってダメになってからもう一回監督に戻られた後に、「長嶋さんに歌わせられないかな?」って、まずテレビ朝日に聴いたんですよ。テレビ朝日でやるってことになっていたんで。そしたら「読売ジャイアンツに聞いてくれ」って言われて、読売ジャイアンツに聞いたら、「そんなの無理無理」って言われて。でも「直接本人にだったらいいんだけど」っていう言われ方をチラッとされたんで、「あっそうなんですか? 完全に直接ご本人と話せばいいんですか?」って聞いたら、「ま〜それはしょうがないですね」ってことになったんで、本人に話に、
ばんばん)行ったんですか?
大幸)会いに行けないじゃないですか。
ばんばん)そりゃ、そうやね(笑)
大幸)で、色々情報を集めているうちに、梅宮辰夫さんが気に入ってる「辰」という、彼がやってたのかな? いわゆるお寿司屋さんにジャイアンツが勝った日は必ず来ると。いうことで、ジャイアンツが勝った日の夜に、坂井泉水さんと私とかで待機して、寿司屋で。そしたら本当に来られたんですよ、長嶋さんが。
ばんばん)ほ〜(笑)
大幸)それで長嶋さんに、坂井さんがお酒を散々注いで。
ばんばん)長嶋さんは坂井泉水を理解してたんですか?
大幸)いえいえ、全然理解してません。「可愛い女の子だな〜」くらいの感じで。それで今レコーディングしてるからいっぺんちょっと歌ってくださいよ〜って言ったら、「いいよ〜」みたいな感じで。そのまま歩いて、いや車かなんか用意させたんだっけかな? すぐ近くのうちのスタジオに連れてきて。
ばんばん)寿司屋から? 酔ったまま?
大幸)そう酔ったまま。そこにうちのスタッフが全員スタンバってるんですよ。
ばんばん)すでに仕込んである?
大幸)もちろん。その時はWANDSのヴォーカルだった上杉昇さんもいたんですよ。それから、スタジオのエンジニアから、撮影のカメラマンから、だ〜っといて。そこに長嶋さんいらして「どこ歌うの?」って(笑)。2小節くらい歌って、それでやったシングル「果てしない夢を」(※注釈8)も、いわゆるミリオンに行ったんですよ。
ばんばん)すごい!!
大幸)「雨に濡れて」はそれのB面の曲だったんです。まあそういう因縁のB面に使われた曲ですが、なかなかいい曲なんで、ぜひ聴いてください。「雨に濡れて」ZARDです。
島田)この曲なんですけれども、シングルで発売して、初回出荷分がある程度はけた後にもう一回ミックスし直して、発売し直してるんです。
ばんばん)それはなんで? 気に入らなかったの?
大幸)多分そうでしょうね。
ばんばん)それ何が違ったんですか?
島田)やっぱり歌の感じとドラムが違いますよね。前のテイクと聴き比べた感じは。
ばんばん)良くなったんですか?
島田)全然良くなりましたよ。
ばんばん)ということは歌も入れ直した?
島田)歌はそのままだと思います。
大幸)ミックス違いでしょ?
島田)そうです。
大幸)結局OKしたものの、イニシャル分(初回出荷分)だけプレスに出すじゃないですか。で、よく聴くとやっぱりやり直したいなとなって、イニシャル分がはけた後に、やり直した音源に差し替えてプレスしたってことなんですよ。
あのね、ミックスが良くても、その後マスタリングすると音が変わるんですよ。マスタリングってのはCDになる前の音源なんですけどね。だから写真と一緒で、その時(ミックスの時)良くても、上がってくる商品(マスタリング後の音)が全然違くなることがよくあるんで。プレス工場の機械によって音が違うんですよ。
ばんばん)なるほど。
大幸)分からない人にとっては、そんなの分からないよね。
島田)そうですね、分からないですね。
大幸)一見同じですから。
ばんばん)長さも一緒やもんね。
大幸)うん一緒。
島田)こうやって切り替えて聴き比べれば分かりますよ。まあ通常パッと聴いたくらいでは分からない。
ばんばん)そうだよね。
大幸)では、次の曲行きましょう。「運命のルーレット廻して」(※注釈9)。コレはどうですか?
島田)コレはアレンジ構成の直しが、ZARDの中で一番多いですね。
大幸)何パターンくらいやったっけ?
島田)13パターンくらいはシングルでやって、実はアルバムの時にまたさらに。
ばんばん)それアレンジが全部違うんですか?
島田)それも細かい所なので、パッと聴きはそんなに違いは分からないかもしれないですけど。
ばんばん)お〜。それ最終的に大幸さんが決めるの?
大幸)ま〜そうですけど。コレめっちゃ難しいんですよ。色んなアレンジがあって、どれも気に入らなくて、結局十何回やってるはずなんです。
ばんばん)それは曲が難しい? 歌詞が難しい?
大幸)あのね〜とにかく彼女の体調が悪くて、大きな声を出したらすごく痛いってことで、声量もなかったし。それが一番の原因なんだけど、それは本人に言えないので、何とかその声で、アレンジでカッコ良くしようと思ったんだけど・・・。それともう一つ、どうしても使いたいドラムのおかず(フィルイン)があったんですよ。それをどこに入れるかっていうのとか、それからテンポ感だとか、どれだけロックっぽくしたらいいのかとか、色々考えながらやったんですけどね。
島田)当時はミュージシャンを呼んでドラムもダビングしてるんですよ。それを僕と坂井さんでエディットしたんですけれども、まとめたドラムの音をループにして、一番いい所だけ切り取って、それをシーケンスではめ込んでいってる形なんですよね。
ばんばん)わ〜、そうですか〜。
島田)コレ、アレンジだけじゃなくて、実はミックスも3人のエンジニアがやってて、1曲の中で箇所ごとに3人のミックスを切り貼りして使ってるんです。例えばイントロは別のエンジニアで、1、2番は僕がやってとか。しかもコレ、僕がやった音はミックスの音じゃなくて、フィードバックなんですよ。(フィードバックっていうのは)その日のダビングが終わって、こんな感じって確認のために行ったラフミックスですね。で、間奏からまた別のエンジニア、大阪のエンジニアがやってるんですけど。
それを坂井さんが聴いて、最終的には大幸さんなのか分からないですけど、確認していただいて。
ばんばん)大変な作業ですね。
島田)はい。
大幸)僕はミックスがいいっていうのは、むしろ疑問があって。一番いいのは、ばんばんさんも歌手だから分かると思うんですけど、一番自分の声が良かった時、「わ、今日調子いいな!」っていう日は、声じゃないんですよ。その時のミックスの音が良かったからなんですよ。いわゆるマルチテープを毎回使ってカラオケを作るもんですから、当然その日ごとにカラオケの音が変わるんですよ。その時のカラオケがすごく気持ちいいと声も出るじゃないですか。ところがそのカラオケ(ヴォーカル抜きのオケ)があまり良くない時はいい声出ないじゃないですか。だから一番いいヴォーカルが録れた時の、その時のミックスが一番カラオケがいい音してるはずなんですよ。
島田)そうですね。だから「自分はミックスしてます!」っていう意識でやっちゃうと、色々いじりすぎちゃって平均化しちゃうんですよ。で、つまらない音になっちゃうんで。それは重々大幸さんから言われてきました。
大幸)(笑)。この頃彼女の歌が良くなかったから、良かった時のミックスを、「アレ、いつだったっけ? あの時のミックスないの?」って探させて、それをはめ込んだりとかして。
ばんばん)結局出来上がって満足?
大幸)ま〜その時はね。先ほど島田さんも話してましたけど、この時は3人くらいミックスしたのをくっつけ直してるんで。
ばんばん)それはおかしくならないんですか?
島田)聴いてみると結構辻褄が合っているというか、違和感はそんなに感じないですね。
大幸)では聴いてみましょうか?「運命のルーレット廻して」ZARDです。
ばんばん)島田さんも数々曲をレコーディングしてきはったと思うけど、聴き直したりしたことはあります?
島田)最近は、ZARDをサブスクで自分のプレイリストにしてアップしてるんですよ。それはメジャーな曲よりもマイナーな曲で、結構暗いイメージの曲ばかりなんです。
ばんばん)わざとそういう選曲で?
島田)ええ。ある意味裏ZARDっていう形で(笑)。メインが一個あって、裏ZARDってことで。
ばんばん)なるほど。で、次は「二人の夏」(※注釈10)って曲ですけれども、これ大幸さんはなんかあります?
大幸)コレはそんなに目立った曲ではないんですよ。多分彼が好きなんでしょう。
島田)そうなんです。自分の中で好きな曲なんです。
ばんばん)あ〜そう。どういう部分に魅かれますか?
島田)やっぱり青春時代、当時の思い出っていうか(笑)
ばんばん)なるほどね(笑)。大事ですよね。当時の情景が浮かんでくるって。
島田)そうですね、やっぱりシーンが思い浮かんでくるんです。
ばんばん)それが歌のええ所でもあるんですよね。
島田)そうですね。
大幸)では、「二人の夏」ZARDで。
大幸)続いて「遠い日のNostalgia」(※注釈11)。これはどうですか?
島田)コレもやはり青春時代のシーンが蘇ってくるんですね。この曲はミュージシャンが好きだっていう人が結構多いんですよ。
ばんばん)そうですか。
大幸)コレはB.B.クイーンズのメンバーだった望月衛介君というのがいて、彼にも一曲書かせようってことで、何曲かデモテープがあった中から選んだんですけど、大変いい曲になりました。では「遠い日のNostalgia」。
大幸)続いて「グロリアス マインド」(注釈12)はどうですか?
島田)コレはやっぱり当時坂井さんが具合が悪くて、お母さんと一緒にスタジオに来たんですよ。だからもう自分の方で落ち度がないように、かなり緊張したのを覚えていますね。
ばんばん)ああそうか、もう体力的にね。
島田)はい。
ばんばん)声は出てたんですか?
島田)出てました。なんていうか、ピーンと一回で終わらせるっていう緊張感がありましたね。
ばんばん)ほぼテイクワンで終わったの?
島田)2、3テイクは録ったと思うんですけど。
ばんばん)普通もっとやりますもんね。
島田)ええ。
大幸)彼女はね、他の人より声がデカいんですよ。めちゃくちゃ声がデカい。そう聴こえないだけなんですよ。
ばんばん)ホンマやね。
大幸)聴こえないでしょ?
ばんばん)うん。
大幸)音圧がすごいですよ。ビーンっていう音圧が。だから、馬力のあるエンジンで同じ60キロ走るにしても、ガーッと踏んだ60じゃなくて、ちょっと踏んでバーンと行く、そういう声。
ばんばん)でもそういう感じはあまり受けなかったですね。
大幸)受けないんだけど、実はバックの音がすごいロックなんですよ。それに答えられないですよね、よっぽど音圧が強くないと。
ばんばん)なるほど。そっかそっか〜。
大幸)この「グロリアス マインド」は亡くなる半年くらい前ですかね?
島田)そうですね。
大幸)3、4ヶ月前? 要するに入院する、抗がん剤を打つ前くらいだと思います。打ったらもう声が出ないとか。しかもこの曲は最終的にフルに出来上がらなかったんですよね。タイアップの15秒とか、30秒使える範囲しか歌ってないんです。歌詞もそこまでしか出来上がってないんで。彼女歌詞が出来る前に嘘英語ではめ込むんですね。その嘘英語までは出来てたんですけど、結局彼女が亡くなった後に発売したんですよ。大変懐かしい曲です。
ばんばん)ホントやね、色々思い入れがあるでしょうね。
大幸)はい。では、「グロリアス マインド」。ZARD。
ばんばん)「OLDIES GOODIES」今週もそろそろお別れの時間となりましたが、今週はレコーディングエンジニアの島田勝弘さんに色々お話伺いましたが、島田さんは今独立してレコーディングを?
島田)レコーディングというよりも、どちらかというとマスタリングのエンジニアですね。
ばんばん)東京で?
島田)はい。
ばんばん)わざわざ今日東京から来ていただいて。
大幸)ありがとうございました。
島田)ありがとうございました。
ばんばん)また何かあったら。
島田)よろしくお願いいたします。
ばんばん)ということで、次回は?
大幸)次回はまたそれなりの裏方さんを。
ばんばん)(笑)。また色んな関係者に来ていただいて、ZARD話を第3回目をお送りしたいと思います。ということで、「OLDIES GOODIES」お相手は、ばんばひろふみと、
大幸)長戸大幸でした。
ばんばん)それではまた来週までご機嫌よう。
二人)さよなら。
今年6月、大阪・堂島リバーフォーラムにて過去最大規模で開催された3日間限定のZARD MUSEUMが、関東での開催希望の声を多数受け、【ZARD MUSEUM 鳥居坂ラボ六本木】として開催!
[Movie展]9/16~9/26
会場に上映スペースを設け、堂島リバーフォーラムで開催期間中に日替わり上映していた3本の映像をまとめて上映。【上映時間:約100分】
[前期展示]9/30~10/10は【制作ラボ】
Movieラボから一転、ZARD MUSEUMの特長の一つであった膨大な量の「坂井泉水の詞」の展示やレコーディングスタジオの再現など、ZARDの制作にスポットを当てた企画展示を行う。
[後期展示]10/14~10/23は【プライベートラボ】
制作ラボから坂井泉水のプライベートアイテムを中心とした企画展へと変化。
前期・後期を通じて、衣装や写真の展示(一部入れ替え予定)の他、堂島リバーフォーラムで来場者の多くが足を止めていた貴重な展示ファイルの一部を手に取って見ることが出来る閲覧コーナーも設けられる。
※ZARD MUSEUM 鳥居坂ラボ六本木の最新情報はZARD MUSEUM Twitterアカウント(@ZARDMUSEUM)をご確認ください。
※MUSEUMの内容については予告なく変更される場合がございます。予めご了承ください。
「ZARD MUSEUM 鳥居坂ラボ六本木」
【日程】
●Movieラボ 2022年9月16日(金)~9月26日(月)
●制作ラボ 2022年9月30日(金)~10月10日(月)
●プライベートラボ 2022年10月14日(金)~10月23日(日)
【時間】
・Movieラボ <上映時間約100分の完全入替制>
平日12時~20時 (12時~,14時~,16時~,18時~/最終入場 18時)
土日祝 10時~20時(10時~,12時~,14時~,16時~,18時~/最終入場 18時)
・制作ラボ <90分完全入替制>
平日 14時~20時 (14時~,15時30分~,17時~,18時30分~/最終入場 18時30分)
土日祝 10時~19時(10時~,11時30分~,13時~,14時30分~,16時~,17時30分~/最終入場 17時30分~)
・プライベートラボ <90分完全入替制>
平日 14時~20時 (14時~,15時30分~,17時~,18時30分~/最終入場 18時30分)
土日祝 10時~19時(10時~,11時30分~,13時~,14時30分~,16時~,17時30分~/最終入場 17時30分~)
【会場】ビーイング鳥居坂ビル
【住所】〒106-0032 東京都港区六本木5-14-35鳥居坂ビル
【チケット料金】(入場特典付き)
ZARD MUSEUM Movieラボ入場チケット ¥6,000(税込)
ZARD MUSEUM制作ラボ入場チケット ¥3,000(税込)
ZARD MUSEUMプライベートラボ入場チケット ¥3,000(税込)
【チケット発売中】eplus.jp/zard-m/
【問い合わせ】
サウンドクリエーター
TEL:06-6357-4400(平日12:00~15:00 ※祝日を除く)
メールでのお問い合わせ:https://www.sound-c.co.jp/contact/