The musiciann to the musician vol.15_Makoto Miyoshi(rumania montevideo)
1999年6月16日に1stアルバム『rumaniamania』をリリースしたrumaria montevideo。ポップでありながらも、曲のどこかに予想を裏切るコード・チェンジやアレンジを施している楽曲が多く、曲者っぽいパンドという印象を受ける。そのバンドのギタリストでありコンポーザーでもあるのが、三好誠さん。rumania nontevideoに漂っている音楽性は、作曲を手掛けている彼のバックボーンでもあると言える。一体彼はどのような音楽を聴いてきたのだろうか?
ー 取材当日、「絞れなかったんですよ」と言って三好さんは十数枚のCDを持ってきてくれた。さすがにフェイバリットというだけあって、かなり読き込んでいる様子が窺える。アナログ盤あり、CDに入っている歌詞カードがヨレヨレになっているものもありと、一目見ただけでも“音楽大好き少年、三好誠”の素顔が感じられた。ー
三好:昔はお金がなかったので、なかなかレコードやCDが買えなかったんです。だから貸しレコード屋で借りまくりましたね。1枚300円ぐらいで1週間に4枚とか。聴いていたのはその時に流行っていた洋楽が多かったかな。流行っていたっていっても僕の場合はまたちょっと違うかもしれないけど・・・・・。僕が借りに行っていた所は凄いマニアックな作品も置いてあって、レンタル屋では普通ないようなものとか、海賊盤みたいなものもレンタルされていたんです。その時はギターを始めていたので、やっぱりギター・バンド系を借りることが多かったですね。ずっとテープとかで聴いていたけど、やっぱりこれは買いたいって、最近はいっぱい買っていますね。特にここ何年かのものが多いんですけど」
ー rumania montevideoの音を聴いているとマニアックな部分の追求もしているように思えるのですが、その辺はミュージシャンとしてやっぱりそういう作品に興味がいってしまうのですか? ー
三好:でも、僕の友達とかはみんな買っていて、これ、いいよね”っていう話とかをするんですけど。まあ、知らない人は一つも知らないっていう感じだったりしますけど、自分の中ではマニアックって意識はないし。行く所に行けば大量に置いていたりもしますから。ジャンル的に言うと僕の好きな音楽はアメリカですね。やっていることはイギリスっぽいとか言われたりもするけど・。好きなのはアメリカ、あ、イギリスっぽいアメリカかも(笑)
大学時代の友達でマニアックな奴がいて、ある日「トム・ウェイツがいいよ」って言われて。その時はあまりにもパッと聴きがつまんなかったんです。なんか枯れている感じがして。この人は年が年なだけに、この人自身のイメージがカッコイイじゃないですか。だから音楽もカッコイイんじゃないかって錯覚しながら聴くのもあったりして(笑)。“酔いどれ詩人”とかって言われているけど、CDを聴いても英語で歌っているから実は何を言ってるのか分かんないんですけど、雰囲気が伝わってくるんですよね。でも、僕はこういうおじさんになろうとは思わないですけど(笑)。妖し過ぎますよね。音自体に集中してないんですけど、かけていたら止めたくなくなるっていうのがこの作品です。僕が作品を聴く重要なポイントは、音楽よりもどっちかっていうとイメージです。
これはアメリカのバンドです。1985年ぐらいからやっていると思うんですけど。昔はうるさいギターの感じだったんですけど、この『CLOUDS TASTE METALLIC』辺りからいい感じになってきて。何がいいかっていうと映画音楽っぽいんですね。聴いていて広い風景が見えて来るという。映画音楽が好きだったら映画音楽を聴いたらいいやないかって思うんですけど。なんかストリングスとかがこの作品から入っているんですけど、手作りでやっている感じがして。その辺にある機械で世界を作り出しているなって。それと基本はギター・バンドっていう所。ギターのノイズとか、ギターの面白いのとかも使っていて。(曲をかけながら)よく聴くと扇風機みたいなパタパタした音が入っていたりと細かいのに、音はダイナミックに感じるし、なんか生々しいですね。メンバーー人一人がマニアックなんですよね。ライン録りみたいなギターがあって。どうやってるのか分からないんですけど。電池がなくなりかけのエフェクターみたいな音で。
さらに面白いのが、この4枚組(ZAIREEKA97年10月リリース)なんですけど(笑)。4枚を同時再生して初めて成り立つという8曲入りのアルバムなんですよ。1枚には歌とドラムだけとか。(CDをかけながら)この始めのしゃべりで頭を合わせるんです。これを買った時、一応ジャケットの表にはそのことが書いてあったんだけど、英語だから分かんないじゃないですか。で、4枚組ってどんなんだろうって聴いたらこんなのでビックリしました。僕はハードディスク・レコーダーを持っていたので聴けたんですけど、普通の人は4枚同時なんて聴けないですよね。この間、スタッフの人ともやったんです、同じ機種のCDラジカセを並べて。1つのリモコンを押すと全部同時に動いて。感動的でした。このバンドはハマります。じっくり聴いてしまいます。
(別のアルバムをかけて)これの1曲目もかっこいいのでちょっと聴いてください。家でこれを聴いている時に友達が来たんですけど、これにはベンディングみたいな上物が入っているので「音悪いな」って。「いやいやそうじゃなくって、これがいいんだって」って(笑)。この人達はあくまでもポップ・ミュージックの中でやっているっていうのがあって、それでギリギリ僕とも接点があったのかな。
時代は違うんですけど、ギダーの練習に使ってました。これを聴くとギターを弾きたくなるじゃないですか。合わせやすいし。テケテケテケテケってかっこいいですね、テケテケ自体が。ダサくは思わないですよ。とりあえず僕はモズライト・ギターが好きですし。リバーブのかかったあの音が、いいんだか悪いんだか。あの音で速く弾くとけっこう下手くそに聴こえるんですよね。だからやっぱりベンチャーズの人は上手いんだろうなって。
これはブラーのギタリストのソロ・アルバムです。この人はアメリカ寄りなんですけど、空気感がいいですね。レコーディングも1日7時間の録音でたった5日間で終わったって書いてあるし、気の赴くままにやっているって感じで。でも、そうやるんだったらもっとパーソナルなものになってもいいと思うんですけど、最低限のラインが残っているんですよね。僕の周りにはこの人が好きっていう人が多くて、ブラーの中でもグレアムが一番かっこいいよなって。ソロはこれが初めてなんだけど、この前にブラーから出したアルバム「ブラー」の中の1曲「ユア・ソー・グレイト」を彼が歌ってるんですよ。ライヴを見に行った時も歌っていたんですけど、めっちゃ恥ずかしそうだった。「ほんまはやりたくないねんけど.....仕方なくやっている。どっちでもええねんけど、なんやったら歌おうか?」みたいな(笑)。同じギタリストって目で見ると、この人の弾き方と佇まいが何とも言えずかっこいいですね。徹底的に素なんですよね、自然な感じで。
プロになってからは作品の聴き方が変わったというよりは、昔はギター・バンド系の音楽が多かったけど、それ以外のものも幅広く聴くようになりましたね。いわゆる歌物でないものとか、テクノとか。ぜんぜん知らないんですけど、そういうのも面白いなって。映画音楽とかインストとかも好きです。サントラだと「時計じかけのオレンジ」とか(三好さんが持って来たのはアナログ盤!)。これは面白いですね。映画音楽はそんなに聴くっていうほどでもないし、映画自体もそんなに観ないんですけど。好きな作品は何回も観ますね。けっこうB級なものというか、ストーリーは無いけど場面場面が面白いっていう。そういう質感の物が好きです。イランの映画で友達にノートを借りて、それを帰すためにずっと歩いてその子の家を探すっていうのを2時間延々とやっている映画があって(「友達の家はどこ?」)あれも面白かったですね。
ー 好きなアルバムは「メチャクチャ聴く」という三好さん。好きな作品に巡り会うと、そのアーティストの過去の作品に遡りたくなる人が多いと思うが、彼はそうではないタイプだという。ー
三好:コレクターズ的な発想ではないですね。この人が好きだからシングルのB面の曲も聴きたいとかって、そういうのはないですね。
買うポイントですか? とりあえずCDに付いている帯は信用しません(笑)。あれだけでは分かりませんから。“パワーポップ”って書いていて、どこがパワーポップやねんっていうのが何回もありましたからね。“ジャケ買い”もありますけど、僕は全然当たらないですね。そういう意味では、最初はレンタルで借りて良いものを改めて買い直すっていうのがいいかもしれません。
ー 最後に、近況について教えてもらった。ー
三好:秋にシングルを出すので相変らずレコーディングです。大変なんですけど、これだけスタジオに入り続けているっていうのは、実は幸せなことなんだなって思います。
僕は長時間スタジオに入っていてもぜんぜん大丈夫ですし、家もスタジオみたいなもんですから。スタジオから帰って、まだスタジオみたいな(笑)。24時間体制ですね。音楽から離れようって思ってもやっぱり音楽を聴きますもん。
リフレッシュの仕方ですか?・・フリーマーケット。昨日も早朝から行って来て、ラジオ付きヘッドホンを買いました。右がチューナーで左がボリュームっていう。どうでもいい使えない物とか、戦力にならないガラクタと分かっている物も買ってしまいます。
(スタジオに渋いディストーションが置いてあったのでそれについて聞いてみると)これは去年ぐらいに買ったんだけど、これの価値が分からないおじさんがやっている店で買ったんです。ギターを売っている所ではなくて粗大ごみを売っているような店にあったんですよね。これはディストーションでボスのDS-1。「5個で1万円ぐらいで全部買わないと売らない」って言われて。でも、これがもう売ってないのでこれだけが欲しかったから 「これだけでいい」って言うと、「じゃあ3千円でいいか」って。安いじゃないですか。その時点では鳴るかどうか分かんなかったんだけど、使えたので。そういうのが楽しいですね、フリーマーケットは。
ー これだけ忙しく仕事で音楽に接していても「やっぱり音楽は欠かせない、生活の一部になっている」という。雑多な音楽の中から、引っ掛かるものや面白い要素を見つける名人のような三好さん。9月15日にリリースされるシングル「デジタルミュージックパワー」で、今度はどんな手の内を明かしてくれるのか、楽しみだ。ー
★要チェキ!!!!!