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パイロットになりたい人へ贈る就活体験記

以前のnoteでパイロットの選考を受けたことを書きましたが、実際に選考を受けてみて、情報が錯綜していたり、噂のようなものが多いと感じたので、今年選考を受けた人の最新版の声をお届けしたいと思います。
筆者の個人的な感想、うろ覚えの部分ありなので、鵜呑みにすることは推奨しません!!

JAL 自社養成パイロット インターン

  1. ES
    設問は3つでした。

    ①学生時代の「努力が報われた経験」、「報われなかった経験」のいずれかを記載し、なぜその結果になったかの自分の考察(300文字)
    塾で担当していた受験生を第一志望に合格させてあげられなかったことを書きました。

    ②飛行機を安全に飛ばすためには、どのようなことが大切か(200文字)
    運航に関わる人たちのコミュニケーションが大切だと書きました。

    ③自分の地元をPR(地名は出さなくてもOK)(300文字)
    自然と住宅街の共存、交通の便の良さの2つをアピールしました。

    提出から1週間程度で通過のメール、同時に次のステップの案内も来ました。

  2. テストセンター
    SPIの言語、非言語、英語、性格の4つです。割と適当な対策でもなんとかなっていた気がします、知らんけど。

  3. 心理適正検査
    会場でクレペリン検査と、ロールシャッハ検査を行います。
    前者はただひたすらに1桁の数同士の足し算をするもので、脳みそも手も非常に疲れます。何を見ていたのかはっきりとはわかりませんが、疲れてもパフォーマンスが下がりすぎないか、単純作業に耐えられるかなどを見ていたのだと思います。
    後者は、インクのシミのようなものを見せられ、それが何に見えるか、というものです。選択肢はあらかじめ与えられていますが、中には「血」などネガティブな言葉も含まれており、そのような言葉は選ばないようにするのが無難です。

    心理適正の3日後くらいにSPIの結果と合わせて合否の連絡が来ます。

  4. オンライン面接
    最後は現役パイロット(後のインターンの登壇社員)の方と1対1で面接します。ESの内容に沿って色々聞かれますが、特にこれと言って奇をてらったような質問はなかったように思います。印象よく、普通に受け答えするように心がけました。

    1週間弱で合格の連絡が来ます。これで晴れてインターンに参加できるようになります。なっげ~。

  5. インターンシップ
    オンラインで2日間です。
    1日目はケーススタディや事業紹介で、詳しい内容は伏せますが実際に乗務しているという設定でグループワークを行いました。
    2日目は個人面談という名の1次面接です。インターンの振り返りや、「誰にインタビューしてみたいか」という少し変わった質問が飛んできます。

    この2日間でしっかり選考され、優秀者となった人のみ早期選考の案内が来るそうです。ちなみに自分は来ませんでした。

この後本選考もエントリーしましたが、まさかの書類落ち。インターン参加するために使った時間とお金返してくれ~!


ANAはインターンは出さず、本選考のみ参加したのでその体験談を。


ANA 自社養成パイロット 本選考

ANAの本選考は、まずグループ会社で共通のパイロット適正検査、通称『FCAT』を受験し、その後各会社の選考に進む方式です。まず、FCATについて述べてから、ANA本体の選考について書こうと思います。

FCAT選考

自分はFCATのグループ2で選考を受けてました。グループの違いはESの締切の時期くらいだと思います。番号が早ければ早いほど締切も早いです。

  1. ES
    グループ会社で共通のESです。設問は2つでした。

    ①なぜパイロットという職業を志望するのか?
    文化祭実行委員の経験、身近にパイロットがいたことを理由に挙げました。

    ②大切にしていること
    「人の立場に立って物事を考える」と書きました。

    提出締め切りは11月下旬で、結果通知は2日後くらいに来ました。通過率はそんなに低くなさそうです。

  2. 英語検査
    社会人用のGTECをテストセンターみたいな場所で受験します。リーディング・リスニングはもちろん、ライティング・スピーキングのスキルまで問われました。スピーキングをやらかしたと思いましたが結果は通過していたので、恐らくボーダーはそんなに高くないと思われます。大事なのは相手に伝えようとする姿勢かと(開き直り)。

    受験期限は12月の上旬頃で、結果通知は2週間後くらいにメールが来ます。

  3. 航空適正検査
    マルチタスクの検査に始まり、視野の広さや反射神経、空間把握能力などパイロットに必要な能力を見られます。後半はJALでもやった「ロールシャッハ検査」が行われます。個人的には、ここで結構絞られていたのではないかと思います。これといった対策がないのが難しいところです。

    1月中旬にANA blue baseという訓練施設で実施され、結果通知は2週間後くらいにメールが来ました。

  4. GD&面接
    前半は6人グループでグループディスカッション。お題は社会課題に関連したものが多く、発言が求められることはもちろんですが、個人的には、パイロットに必要な協調性や穏やかな人柄をアピールできるかも重要なのではないかと思います。後半は面接で、所要時間は30分程。最初に聞くことを教えてくれる親切設計でした。これが鬼門と思っていましたが、後に話を聞くとそうでもなさそうでした。

    1月下旬から2月初旬にかけてANA blue baseという場所で実施され、結果通知は1週間ほどで来ました。

  5. 身体検査&SPI(テストセンター)

    この選考はパイロットならではのものだと思います。注意事項が多くあったので、以下に並べておきます。

    <検査前日まで>
    コンタクトレンズを使用している方は前々日より装用しないで下さい。(状態によっては、検査ができない場合があります)
    ・ 検査前日の21時以降の飲食は禁止とします。
    ・ ※口に入れる物は水や、糖分の無いお茶等は可。薬、ガム、ジュース、スポーツドリンク等は不可。
    ※止むを得ず、薬を内服している方は申告して下さい。

    ・ 点鼻薬は前日から使用しないで下さい。

    <検査への持ち物・準備>
    ・ 目薬で瞳孔を開く検査があるため、サングラスがあればご持参頂いても構いません。


    <検査当日>
    ・ 尿検査を実施しますので、身体検査直前のお手洗いは控えて下さい。
    ・ 眼科診察は散瞳しますので数時間見にくくなります。車を運転してのご来場はご遠慮下さい。
    ・ 眼科診察は能力テストではありません。見えたままを正直に回答して下さい。
    ※推測による回答は判定不能となり不合格となることがありますのでご注意下さい。


    他にもいろいろ注意事項がありましたが、この辺りが見慣れないものなんじゃないかなと思います。前日21時~当日12時くらいまで食事禁止なので、結構お腹が空きます。
    散瞳とは、目薬を使って強制的に瞳孔を開くものです。この薬の効果はそれなりに持続するので、帰るときの外がめっちゃまぶしく感じます。

    ①脳波測定(午前)
    頭によくわからないクリームをめちゃくちゃ塗られたのち、仰向けに寝かされて測定します。基本的に目は開けてはいけないし、寝るのもダメ。うなずくのもダメなので頭を動かさないようにするのが1番大変でした。検査自体は3分くらいで終わります。

    ②耳鼻科(午前検診、午後問診)
    耳の中の圧力測定、聴力測定は学校でやったことあるような検査です。
    平衡感覚の測定は、目隠ししながらカタカナの「アイウエオ」を書きます。首を傾けながら書いたりもしました(筆者はその場で再検査を食らった)。もう1個は目を瞑りながら立つ、足を縦に揃えて立つ、足踏みするものです。途中でバランスを崩してもやり直しさせてくれる初見殺しにも優しい仕様です。目隠ししながらまっすぐ歩き、どれほど左右にずれているか見る検査もありました。
    問診は当たり障りのない耳鼻科問診だが、暗闇の中での目の動きを見られました。眼科じゃなくてここでやった理由は不明ですが……。

    ③内科(午前に検診、問診は時間次第で早い人は午前に両方終わる)
    座って血圧測定、寝転んで血圧測定、立って血圧測定、握力検査、心電図、腹囲測定、採血、とやることがたくさんありました。
    問診は聴診器を使うよくあるやつで、他には身体の可動域等に問題がないかなどを見られたり、服用している薬や飲酒・喫煙習慣についても質問された気がします。お酒、タバコはどちらもやっていても全然問題ありませんが、ほどほどにしておくとよいです。

    ④眼科(午前に散瞳以外の検査、午後に散瞳)
    立体感覚見る検査、色覚検査、視野測るやつ、眼圧?測るやつ等々…。
    目薬を差して散瞳後、暗室で眼科医の兄さんに色々見られ散瞳前後での比較などが行われる。
    やはりパイロットは目が命なので1番検査項目も多そうだし、かなり細かいところまで見られました。筆者は、その場でもう一度呼び出され、色覚検査の再検査を食らいました。
    検査してくれた女医さんめっちゃ怖かった。

    ⑤精神科問診(大トリ)
    先生との問診。家族構成なんかも聞かれます。しいて言うなら自分のことをある程度自己認識出来ているかどうかが重要なのでは?という感じです。

    また、午前の検査の好きなタイミングで検尿を提出します。

    ⑥SPI
    性格と能力の2つ確かテストセンター受験。アビームコンサル通った結果をまんま使い回したので、ボーダーは不明です。

    2月最終日曜〜3月の日曜に羽田空港第1ターミナルANA健康保健センターみたいなところで実施。結果通知は10日前後でメールが来ます。合否以外に会社に呼び出されて再検査というものもあるらしい。

会社別選考

  1. ES(全日空)
    設問は3つです。

    ①ANAのパイロットを志望する理由(250文字)
    飛行機の安全で快適な運航を通して人々の特別な機会により多くの満足感を提供したいから、だそうです。

    ②周囲の人から「どんな人」と言われるか(250文字)
    「好奇心旺盛で何でも挑戦している、冷静かつ臨機応変に行動できる」と言われるが、「好奇心で様々なものに手を出しすぎることがある」と指摘されることもある、らしい。へぇ~。

    ③自分自身について紹介し、自分らしさがわかる写真をアップロードしてその写真を選んだ理由も述べる(250文字)
    自分らしさがわかる写真は文化祭のときに撮ってもらった写真をアップロードしました。

    ESの内容が公開されてから締め切りまでたったの3日!短すぎだろとブツクサ文句を言っていました。
    締め切り2日後にメールが来たので恐らく全員通過しているのだと思います。

  2. シミュレーター選考
    ANA blue baseで2日かけて行うもので、実際にシミュレーターを動かして選考を行うものでした。

    最初に操縦方法や諸注意などの講義を受け、その後実際にシミュレーターを動かしてみます。ここでは当然上手くいきませんが、そのあとが大事。
    自らの操縦経験で得られた知見や発見したこと、注意すべきことなどを選考を受けているチームのメンバーにどんどん共有していきます。パイロットの訓練はみんなでレベルアップし、誰も取り残さないようにするものなので、自分の成功・失敗体験は惜しみなく共有する必要があります。そのようなチームワークも見られていることを念頭に置いておいてください。

    2日目は、もう1回シミュレーターを動かし、前日に挙げた課題をどこまで改善できているかの進歩やその姿勢を見られます。また、操縦している途中には全然関係ない質問が飛んできます。
    例えば「昨日の夜ご飯は?」みたいな質問や、掛け算九九などを出されました。
    控室みたいなところで「飛行機の会社だけど、あえて新幹線の駅の順番とか出してきそうだよね~」なんて話してたら、自分が本当にその質問をされました。「東海道新幹線の駅、東京から3駅目は?」って聞かれたので「名古屋!」と即答しましたが、小田原でしたね。のぞみ号しか乗らないから仕方ないね。

    午後は面接でした。普通の面接で、答えるのに困るような質問も特になかったように思います。

    選考から大体10日くらいで結果が出ます。私は残念ながらここで落ちてしまいました。7人グループでしたが、通過したのはわずか2人。パイロットの門戸の狭さを実感しました。

  3. 最終選考
    面接と英語のスピーキングの検査らしいです。身体検査で仲良くなった人が最終選考に進んでいましたが、結果は内定。すごすぎる。おめでとう!


選考を受けてみて

面白かったです。普通の就活の選考ではやらないようなことをやったり、珍しい場所にも行ったりしました。身体検査があったり、適性検査があったり、訓練施設に行ってシミュレータを動かすことまでさせてもらえました。いい経験になったと思います。

一方で、運要素が強いというのも1つ言えることだと思います。面接やESは対策のしようがあるものの、心理適性検査や航空適性検査、身体検査はどうしようもないのが実情です。受かっても落ちてもなんでそうなったかわからないし、明確な基準というのもなさそうなので、完全にブラックボックスです。そういう意味では、選考を最後まで突破し、晴れてパイロットになる権利を得る人っていうのは真の意味で"持ってる"人だと思います。

どうしようもないじゃないか、と思うかもしれませんが、そのような運は、日頃の行いだったり、生活習慣だったりで手繰り寄せることができるものだと思っています。そういうものが回りに回って大一番で味方してくれるのかもしれません。最後はどれだけパイロットになりたいか、という熱意だと思います。それが伝われば、多少能力面でマイナスがあっても評価してくれるかもしれません。そういった小さな部分の積み重ねが大きな成果に繋がることを意識してみてください。


ここからは身近にいるパイロット人の話


パイロットは選考も訓練も大変で、なった後もずっと勉強の日々です。大勢の命を預かっているので、プレッシャーも大きい。でも、到着した後にコックピットに手を振りながら降りていく人がいるし、毎回のフライトで見える景色は格別だし、フライト先での休憩でご飯や観光の楽しみだってあるそうです。そういうパイロットでしか得られないものもたくさんあるし、安全運航というプレッシャーはあるけどそれ以上にやりがいがある職業だと言ってます。
あと、給料バカ高いらしい(平均年収2200万円)し、月間フライト時間の上限が法律で定められているので、実働時間に対する給料のコスパはめっちゃいいし、好きな時に休めるらしい。


パイロットになりたくてこれを読んでくれた人もいるだろうし、これを読んでパイロットに興味を持ってくれた人もいるかもしれません。
どんな人にも、パイロットになるチャンスはあります。その第1歩、踏み出してみては?

以上です。最後まで読んでくれてありがとうございました。

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