私は最強になる途中(1月後半の日記)
1月17日
彼氏の住む町に一人で散歩しに行った。
いずれは、この町で一緒に生活したいのだけど、私はずっと実家暮らしなので引っ越しの経験がなく、不安もある。
で、今年こそはこの町を一人で散歩して町に慣れたいのだ。彼と一緒だと、彼に頼ってしまうから、あくまで一人で。
この町の素敵なところは、自転車で生活しやすそうなところ。通りには自転車専用レーンもあるし、スーパーの駐輪場も広い。実際に自転車に乗ってる人も多く見かけた。
私の住む茨城は車社会で、車の免許をもたない私は生活のしづらさを感じている。車に乗れる母は、スーパーがたくさんあって便利な町! というけれど、市内に十件ほどあるスーパーのうち、実家から自転車や徒歩で行ける範囲にスーパーは1件しかないし、JRの駅にも行けない。
私が免許を取らない理由は、不安を増やしたくないからなのだけど、どんな理由であれ、車社会で車に乗れない/車を持っていない人は経済力のないダメな奴と思われるのも癪だ。
その点、彼の住む町は私にやさしく思えた。
基本的には静かな住宅街で、フレンドリーに話しかけてくれたお年寄りもいたりして、以前にも増してこの町に住みたくなったし、馴染めそうな予感がした。
まだ慣れたとは言えないけど、私はこの町を少しわかってきた気がする。
1月22日
精神科の通院日。減薬を提案されたけど、冬が苦手で、各種ウイルスのことを考えると不安が強くなるので、減薬は暖かくなってからにしてもらった。春が待ち遠しい。
そろそろ障害者手帳の更新のタイミングなので、診断書をお願いしてきた。
以前は手帳を持つことに抵抗があったけど、今は、もらえるものはもらうぞ! 受けられる割引は受けるぞ! の精神である。強くなったものだ。
不安障害歴二十年以上、もう完治するとは思っていなくて、うまく付き合っていくものだと思っている。私は病気を受け入れ、堂々と障害者手帳を掲げて、千円で映画を見たり、五十円でバスに乗ったりしている。
何も恥じることはない、病気もひっくるめて私なのだから。
1月26日
家族で成田山へ。めちゃくちゃ風が強くて寒かった。
成田山には何十回もお参りしているのだけど、先日、テレビで行ったことのない塔の内部が紹介されていたので行ってみることにした。
テレビで見た塔の最上階は3階くらいかな~と思って登り始めたら、実際は5階まであって、階段しかないので家族一同ぜーはーしながらどうにか辿り着いた。すれ違う人々もみんな息が上がっていた(ほぼ中高年の方々だったせいもあるだろうけど)。
塔の最上階は、正直に言うと、テレビで見たほどの綺麗さはなかった。疲れて余裕がなかったせいかもしれないけど、もしかしたら、テレビって実物よりも良いものに映るのかもしれない。そうだとしたら、女優さんもモデルさんも、テレビを通して見たほうが綺麗だったりするのだろうか……。
階段で登った塔は階段で下りるしかない。すっかり暑くなってマフラーを外した。
父は腰、母は膝が悪いので、同行させたことを申し訳なく思った。たぶん、もう二度と行くことはない場所になるだろう。
おみくじは吉だった。新しいことに積極的に挑戦するのにいい時期らしい。大吉ではないけど、いい内容で嬉しい。
妹も吉だったけど、「いい状態だけどこれ以上は良くならない」というようなことが書かれていて、同じ吉でも嬉しい吉とがっかりする吉があるようだ。妹も、複雑な顔をしていた。
1月27日
彼氏とデート。お気に入りのカフェは相変わらずおいしくて、雰囲気も良くて、間違いない良いカフェだった。
私は、最近の悩みである自分に自信が持てないことについて話したりした。彼とのおしゃべりは楽しくて、あっという間に時間が過ぎる。
そのあとで立ち寄ったユニクロに、国枝慎吾さんのサイン入りTシャツが飾られていて、そこにはサインとともに「オレは最強だ!」と書かれていた。
それを見た瞬間、自信の持てない今の私に必要な言葉だと思った。私に足りないのはこういう気持ちなのだ。
このTシャツの写真をさっそくスマホの壁紙にした。スマホを見るたびに「私は最強だ!」と思うようにしている。まだ最強という言葉がしっくりこなくて、サイズの合わないぶかぶかの服を着ているような感じがするのだけど、私が心から「私は最強だ!」と言える日は来るのだろうか。