日記に短歌 2024.11.20~11.23

11.20

明日は母と妹と一緒に日立まで日帰り旅行へ行くというのに、右足の親指に謎の痛みが出てきて不安になってしまった。
三人で出かけられそうな日は明日しかない。なんで今なのだろうか。何が原因の痛みなのかもわからないし、どうすればいいのだろう……。
「意外とどうにかなるんじゃない?」「そんなにうまくいかないでしょ」私のなかで私Aと私Bがうるさい。

不安が強くなると、私の体そのものが「不安」というかたまりになってゆく気がする。
気持ちが落ち着かないので「不安だよー」と何度も母に言ってみるけど、言葉にしたところで不安が消えるわけでもない。
そう。考えても、言葉にしても、不安はあるし足が痛いことにも変わりはない。でも、言わずにいられないんだよな。
母も慣れてはいるだろうけど、不安だ不安だと言われても困るだろうし、こうなったら明日の私にすべてを任せる。もう寝る!

水風船割るように「心配ごとの九割は起こらない」声に出す



11.21

足の痛みは治っていなかったけど、歩けないわけではなかった。
あんなに不安だったけど、全然問題なく楽しく出かけられた。本当に私の生活は、不安になって、でも大丈夫で、不安が強くなりすぎたと反省する、の繰り返しである。

日立への日帰り旅行は母も妹も楽しんでくれて、よく調べて予定を立てた甲斐があった。
以前から一度行ってみたいと思っていたガラス張りの日立駅は写真で見たとおりのおしゃれな建物で、天気はあまりよくなかったものの駅舎から眺める海にはテンションが上がった。
海から離れた場所で暮らしているので毎回海を見るとテンションが上がってうれしくなるけど、もし海の近くに住んだら海を見慣れてしまうのだろうか。
そう思うと海の近くに住みたくなくなる。私はいつでも新鮮な気持ちで海を見たい。

駅の近くのお店で初めて食べたあんこう鍋も、画面の動きが早くて酔いそうだったプラネタリウムも、妹のおごりで食べたケーキもいい思い出になったけど、印象的だったシーンを思い出そうとしたとき真っ先に浮かんだのは帰りの電車の車窓から見えた光景だった。
まだ十八時前だというのに真っ暗な町で線路沿いの屋内プールだけが明るく浮かび上がり、中にはスイミングスクールの子どもたちが見えた。日立で見てきた広い海と相反する人工的なプールに人間の営みを感じる。そこだけが、ぽんっと夜の暗がりに置かれているようで、現実じゃないみたいだった。

こういう光景を「いいな」と感じるようになったのは恋人の影響だと思う。散歩中に見かけたいい感じの光景や看板や窓なんかをよく二人で「いいね」「いいね」と言いあって歩いているから。
彼に何かお土産を買えばよかったな、と思ったけど時すでに遅し。まぁ、干し芋ぐらいしか売ってなかったけど。

海のそばで育った人も海を見て興奮するの? やわらかな眼で



11.22

冬用のスリッパを出した。ムートン調でもこもこしたあたたかいスリッパ。
ショートブーツも下駄箱から出して玄関前に置き風を通した。着々と冬支度を進めている。

私は冷え性で、冷えるとすぐにお腹が痛くなってしまう。ひどかったときは病院で冷えに効く漢方薬をもらい、夏まで飲んでいたこともある。
冬はつらい。それでも冬眠するのは難しそうだし、常夏の島に引っ越すわけにもいかないので、腹巻き、あったかい靴下、ヒートテック各種、ひざ掛け、着る毛布、貼るカイロなどを駆使して冬を乗り切らなければならない。婦人科系の持病もあるし、ぜったいに体は冷やしたくない。
ここ数年はお金を使えば寒さ対策はより強力にできるのだとわかってきた。

以前読んだ料理人の方の記事で「料理を嫌わないでほしい。苦手なことはお金を使えば解決できる。いろいろと便利なアイテムが売られているからうまく使ってほしい」というようなことが書かれていた。
寒さ対策も同じだと思う。本当にいろいろなアイテムが売られているから、自分の悩みにあったアイテムをうまく使っていきたい。
苦手な冬を、少しずつでも好きになれるように。

冬が来るにおい こんなによく笑う私が不幸なわけないでしょう



11.23

今日は市内のコミュニティバスが無料の日なので、ショッピングモールまで出かけることにした。
無料だからバスが混んでいる可能性もある。もし混んでいたら、車内で立ったままでは乗り物酔いしやすい私は気持ち悪くなりそうで、若干不安な気持ちでバス停に立つ。よく晴れているけれど北風が冷たい朝だ。
予定時刻より少し遅れてやってきたバスはそこまで混んでおらず、通常通り座れた。よかった、ひと安心だ。
やはりこの町は車社会でみんな車を持っているから、無料でもバスに乗ることはないのだろう。

朝のショッピングモールのだだっ広い駐車場ががらがらに空いている様子を見るのが好きだ。ある意味、田舎ならではの光景。
まだ町が動き出していない時間帯の人の少なさにホッとする。本当に私は人が苦手なのだな。一人では生きて行けないのにね、困ったもんだよ。

今日はカフェでゆっくり読書をすると決めてきた。読みかけの「推し短歌入門」を最後まで読みたい。
カフェでは紅茶を頼むことが多いけど、冷めて渋くなったら嫌なので今日はホットミルクにした。長居する気満々だ。
久しぶりに飲んだホットミルクは思ったほど甘くなく、意外と読書しながら飲むのにちょうどよかった。

「推し短歌入門」は面白くて勉強になる。短歌の作り方、読み方、向き合い方についてわかりやすく書かれている一冊だ。
私は十年以上短歌を作り続けてきているけど、ずっと「こんな感じだよね~」という感覚だけを頼りにやってきてしまい、何も勉強せずにきてしまったんだな……とあらためて反省する。
でも、短歌の勉強をしてこなかったというか、私は元々不登校のひきこもりだったので、短歌に限らず今まで何も勉強してこなかった人生だな……とも思う。
結局、そのときどきでできることを自分のペースでやっていくしかないのだろう。私にはそれが精いっぱいだ。

本を読み終えて、充実した気持ちでモール内のユニクロへ寄ると、感謝祭の真っ最中でかなり混雑していた。買うと決めてきたものだけをささっと買い物かごに入れてレジの行列に並ぶ。
クーポンを持っていたのでお得に買い物をして、そのあと近くのマツモトキヨシへ行き、マツキヨのクーポンも持っていたのでここでもお得に買い物をして、無料のバスに乗って帰る。ちょっとずつのお得でもちゃんとうれしい。
勉強は苦手なままだけど、生活はそれなりにうまくこなせるようになってきた気がする。これでいいのだ。

できることできないことを選り分ける指三本で塩ひとつまみ




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