パズル
『ねえ、カナ。私たちって、もともと、ひとつの存在だってこと知ってる?』
ここは学校帰りにふたりで寄る馴染みの喫茶店。ミホはいつも、私にいろんな発見を教えてくれる。世界の不思議、映画や恋愛、そして心のこと。
『ひとつ? ・・・あーもしかして、ちいさなせかいって歌のせーかいーはひーとーつーみたいなこと?』
『あ。そうそう。あの歌、私好きなんだ。でさ、私とカナってひとつだと思う?』
私は、なんでそんな話をするの?とは聞かない。だって、前置きなんていらないこの会話が大好きだから。わかっているから。
『うーん。私とミホは、どう見ても別人だよね』
『だねー。でもさ。心をひとつにすることはできるよね』
『ふふ。ミホは、そういうこと照れずにすぐ言えるからすごいよねー』
『ははは。だってそうじゃん』
『まあ。そうだね』
『でね。私とカナは、今はこうやって分かれてるように見えるけど、実はひとつなんだ。これは私とカナだけじゃなくて世界中が実はひとつの存在なの』
『うーん。けど文字通り、ひとつってことじゃないよね。別々だけど、地球としてはみんなでひとつみたいなことだよね』
『私はね。文字通り、ひとつだと思ってる。わかりやすく言えば、パズルみたいなものなの』
『パズル?』
『うん。パズルって、もともとは1枚の絵でしょ。で、そのパズルをバラバラにして、分かれたのが私たちなの』
『わぁー。ミホはいつもおもしろいこと考えるよね。じゃあ、もう一度ひとつになるめに分かれたの?』
『うん、そうなの。今はバラバラに見えるけどね、私たちはもともとひとつだったんだ』
『そっかー、だとしたら、ひとつひとつのピースにもちゃんと役割があるってことだよね』
『そうそう。ただね、パズルって近くにハマるピースと遠くにハマるピースでは絵柄がぜんぜんちがうじゃない? だから一見するとひとつの存在に思えないことがあるんだよね。それに近くのピースにみえてもちゃんとハマらない場合もあるでしょ。だから大きな視点で見なくちゃだめなの』
『じゃあ。私とミホは近いのかな?』
私はちょっぴり照れながら、そう言ったけど、ミホまったく迷うことなく言葉を返してくれた。
『もちろん。そんなのわかってるじゃん』
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