どうして遠くのものは小さく見えるの?
『ねえ、カナ。どうして、遠くのものは小さく見えるのかな?』
学校帰りにふたりで寄る、馴染みの喫茶店。
ミホはいつも、私にいろんな疑問を投げかけてくれる。
世界の不思議、映画や恋愛、そして心のこと。
今日もちょっぴり難問みたい。けどそれが最高に嬉しい瞬間でもあるの。
『わぉ。今日は世界の七不思議編だね。』
『うん。こないだ姪っ子に聞かれたんだけどさー、とっさに答えられなかったんだよね。カナなら、どう答える?』
ミホはすっごく楽しそうな表情でそう聞いてくる。この感じだと、もう答えを見つけてるのかもしれない。
『姪っ子ちゃんって、たしか6才くらいだったよね。じゃあ、難しい言葉は使えないね』
『そうそう。でも、うちらに難しい言葉なんて無理でしょ』
『はは。まあそうだけどね。うーん、どうして遠くのものは小さく見えるのか。難問だねー。それはねー、あ、そうよ。人の目には望遠鏡がついてないからでしょ!』
私が人差し指を立てて、これっきゃないって感じで答えたら、ミホは笑ってこう言った。
『ふふ。それ。最高にいいね。カナはやっぱりすごいなー、とっさにそんな風に答えられるなんて』
私はまんざらでもなかったけど、はやくミホの答えも聞きたかったから、ストレートにこう返した。
『でしょー。それで?ミホの答えは?』
『うん。私がいろいろ思って見つけた答えは・・・おっきく見えたら、つまんないから!なんだ』
『つまんない?』
『うん。世界の遠くのものが、ぜんぶおっきく見えたら、きっと、つまらないと思うの』
『どういうこと?』
『だって。お星さまの、あの輝きは遠くのものが小さく見えるからだし、大きな木々が遠くまで広がる美しい森に見えるのは遠くのものが小さく見えるからだよね。そして人間が望遠鏡を作ったのだって、遠くのものを大きく見たいっていう好奇心のおかげでしょ』
そしてミホは急に私に顔を近づけてきて、最後にこう言った。
『それにね。遠くのものが小さく見えるからこそ、近づきたいって思うの。だからこうやって近づいて見るとね、よりいっそうカナの瞳がキレイなこともわかるんだ』
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