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空想旅行

『ねえ、カナ。空を飛んだことある?』

『空?・・・あるよ』

『空って気持ちいいよねー』

『うん。ミホはどんな空が好きなの?』

ここは学校帰りにふたりで寄る馴染みの喫茶店。ミホはいつも私にいろんな心の話をしてくれるんだけど、ここ最近の私たちのブームは空想旅行なんだ。

『青空や夕焼けが好きだけど、雨上がりもいいよね』

『わたしもだいたいおんなじ、夜空もステキだよね』

『うん。じゃあさ、今から一緒に飛んでみようよ』

『おっけー、いいね』

私たちは、手の平を合わせてから、お互いに目をつぶった。

『じゃあさ。まず雲の上に行こう。真っ白でふわふわの雲の上。それから雲の上をゆっくり歩いて、手をつないで一緒に雲から飛び立とう』

私たちが空想旅行と名付けた、この遊びは、一人でも出来るんだけど、二人ですると、とてもおもしろいの。

『すごく心地いい風。ミホ、海へ行かない? 時刻はお昼、晴れでいいかな? 優しい風、あたたかい太陽、そして遠くに大きな海・・・』

『うん。きれいな海が見えてきたね』

空想はひとりでも楽しいけど、ふたりでするとまるで同じ場所に居るような気がするから不思議なの。

いつだったか、旅行はどこでどんな体験をするか計画するときが一番楽しいよねって話をしていて、じゃあ実際に空想しちゃおうってことになって、だんだんと普段できないことをするようになったんだ。

『ねえ、ミホ。空想って不思議だよね。まるで心の世界に一緒にいるみたいだよね』

『うん、いるよ。心って、ほんとすごいよ』

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