傷つかない方法
『ねえ、カナ。私ね、心が傷つかない方法を覚えたんだ。知りたい?』
学校帰りにふたりで寄る、馴染みの喫茶店。
ミホはいつも、私にいろんな発見を教えてくれる。
でも、ここ一週間ほどはお互い何かと忙しくてしばらく会ってなかったから、すごく久しぶりな感じ。
だからかな。今日のミホはすっごく嬉しそうな笑顔で、早く私に話したかったんだなってことがすごく伝わってきた。
『ふふ。もちろん。』
私も嬉しくて笑いながらそう答えたら、ミホもさらに楽しそうな笑顔をみせた。
『あーー。カナ、疑ってるなー?』
『ないない。疑ってないよー。』
私は両手を振ってそう答えたけど、私にはミホがいつも真剣だってのも、ちゃんとわかってる。
『じゃあ。ズバリ言うよ。ジャジャーン。答えはコレです』
そう言ってミホが、カバンから取り出したのは1冊の本だった。タイトルは・・・「The Healing Cat」?
表紙は青を基調とした星空のイラストで、三日月の上に青いネコが乗っかってる。
『きれいなイラストだね。それ絵本なの?』
『うん。これ本屋さんで見つけたんだけど、中に書いてある言葉がすっごい素敵なの。でね。私が特に感動したのはここ』
ミホは絵本を開いて、あるページを私に見せてくれた。
だれも きみを
苦しめる ことなんて、できない。
きみは、自分で自分を
苦しめている だけなんだ。
「もう、苦しまなくて いいよ」
そう、自分に 言ってあげなさい。
(※)
『わぁー。すごいね。この言葉』
『でしょ?』
『うん。けど、これって傷ついた後に、自分自身を癒やす方法じゃないの?』
『うん。私も最初はそう思ったんだけど、これってさ。傷つく前にも使えるってことに気づいたんだよね』
ミホはイタズラっ子のような笑顔でそう言ったけど、私はまだピンときてなくてそのまま言葉を返した。
『傷つく前に?』
『うん。簡単だよ。もう、イヤなことがあっっても傷つかなくていいよ。って自分に言ってあげるの』
『え。けど、 傷つくときって、そんな余裕なんかなく、あっという間に傷ついちゃうものじゃない?』
『まあね。傷ついちゃったときはその感情に寄り添ってあげるのがいいんだけど、ここで大事なのは、傷つかない自分も選べるんだってことなんだよ』
『傷つかない自分を選ぶ? そんなことできるの?』
『できるよ。もちろん失敗することもあるけどさ。傷つかなくていいんだよって自分に言ってあげるとすごく効果あるんだから。カナもやってみてよ。絶対にちがうよ』
『そっかー。自分の心は自分のもの、誰のものでもないもんね。ミホ、ありがとう。その絵本、借りてもいい?』
『もちろん。ずっとカナに教えたくて仕方なかったんだ。自分の心は自分のもの。カナ、いいこと言うね』
(※ 引用 「ヒーリング・キャット」より。著者 :葉 祥明)
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