どっちが上?
『ねえ、カナ。地球ってどっちが上だと思う?』
ここは学校帰りにふたりで寄る馴染みの喫茶店。ミホはいつも、私にいろんな発見を教えてくれるの。世界の不思議、映画や恋愛、そして心のこと。
『えーと。北極が上って言いたいところだけど、別に上も下もないってのが正解じゃない?』
『だよね。わたしもそう思ってたんだ。これって地球だけじゃなくて、世の中のものぜんぶそうだよね。お空も、花や木も、それに、このコップも』
ミホはそう言いながら、アイスティーの入ったコップを持ち上げた。
『ぜんぶ? でも、地表にいる人間から見たら、空はやっぱり上にあるんじゃない?』
『ううん、地球の反対側のお空は下にあるし、逆立ちして見たら反対になるでしょ? 上下なんて見方によって、すぐに入れ替わっちゃうのよ』
『はは。その発想、ミホらしいね。すべては生活する上で、人間が決めたことだよね。年齢の上下、順位の上下、能力の上下、たしかにちがう見方もあるって考えるの大切だよね』
『まあ、コップの上下を間違えたら、中身がこぼれちゃうけどさ。上は上、下は下って決まってると思うときこそ自分の心を解放してあげたらいいと思うの。宇宙には本来、上も下もない。心の成長も、それぞれのオリジナルなんだよね』
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