ゆる音楽学ラジオ・浦下さんに憧れてチェロを習い始めた話
こんにちは。まるごといちごと申します。
この記事は「ゆる民俗学・音楽学ラジオ非公式Advent Calendar 2024」の16日目の記事です。
タイトル通りの自己紹介で大変恥ずかしいのですが、思い切って行動してみたらおもしろかったよ!という話です。
普段は全く文章を書く習慣がないので、読みづらい部分もあるかと思いますが、ご容赦ください。ゆるく温かい目で見守っていただけると幸いです。
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現在30代の私がJKだったときの話。
私は高校の弦楽部でバイオリンを弾いていました。
弦楽部。珍しい部活だと思います。バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスで合奏するあれです。
きっかけは、部活紹介のイベントで先輩方の演奏を聴いたことでした。初めて間近で聴く弦楽器の音色に魅了されてしまったのです。
「私もあんなふうに弾いてみたい……!」と思い、全くの初心者でしたが、えいやっと入部しました。
15歳で初めて触ったバイオリンは、難しかったですがとても楽しかったです。
ゆる音楽学ラジオ#49 でゲストの山下先生もおっしゃっていましたが、1年生の春に入部して初めて楽器を触った生徒も、数ヶ月後には先輩たちと一緒にステージに立たなくてはいけません。
私の場合、最初のステージは夏の文化祭でした。そして10月には演奏会があり、吹奏楽部と合同でオーケストラ曲を演奏するのが毎年の恒例でした。
初めての演奏会の曲は、ベートーヴェンの序曲「エグモント」でした。
興味がある方は聴いてみてほしいんですが、めっちゃくちゃかっこいい曲です。
でも明らかに、楽器を触って数ヶ月の超初心者が弾く曲じゃないです。
配られた楽譜を眺めてみても、意味不明すぎてただただ呆然とするしかありませんでした。オタマジャクシが多すぎて真っ黒な楽譜。五線の上に何本も加線があって、その上にドレミの何の音だかもわからない音符がずらっと整列しています。
こんなところ、どうやって押さえて弾くんだろう? アレグロ、コン、ブリオ?? 呪文か何かですか???
これは大変なことになったぞ…… と、必死で練習しました。朝練、昼練、放課後の部活、部活がない日も自主練。
でもどんなに練習しても、1年生の頃はそれはそれは下手くそで。小さい頃からバイオリンを習ってた先輩に「弦楽器は3歳とか4歳とかから習いはじめないと弾けるようにならないんだよ」なんて今更どうしようもないことを言われて、悔しくてちょっと泣いたりもしました。
それでもなんとか先輩たちに食らいついて、ド緊張のなか本番を弾き終えてお客さんから拍手をいただいたときの、達成感と安堵感を足して2を掛けたような気持ちを今でも覚えています。
先輩みたいに弾けるようになりたい一心で、夢中になって3年頑張りました。その結果、楽譜はまあまあ読めるようになり、バイオリンもそれなりに弾けるようになりました。
最後の1年は部長を務め、コンサートマスターも経験し、楽しく部活漬けの高校生活を送りました。
高校卒業後もバイオリンを続けたかったのですが、高校では学校の楽器を借りて使っていたので、続けるためには自分で楽器を購入しなくてはいけません。
音楽をやるにはお金がかかるんですね。そりゃそうなんですが。
大学生になってバイトはしましたが、楽器を買うための貯金にまで手が回りませんでした。
今度こそ楽器が欲しいなぁと思いながら仕事をしていた社会人1年目、東日本大震災があって、「いつか楽器を買うため」だったわずかな貯金は、生活再建のための資金に消えました。
その後結婚して2人の子どもに恵まれ、慣れない子育てで慌ただしくあっという間に毎日が過ぎていきました。
高校生の頃あんなに大好きだったバイオリンは、いつの間にか手が届かないくらいずっと遠くに離れていってしまいました。「またいつか楽器を弾きたいな」という気持ちも、いつしか思い出さなくなっていました。
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てんやわんやの育児の合間、YouTubeのおすすめ欄で「ゆる言語学ラジオ」に出会い、夜な夜な動画を見るのが楽しみになりました。
ゆる学徒系列の新番組オーディション企画である「ゆる学徒ハウス」も、一次選考から毎日欠かさずチェックしていました。
ある日、「ド~はドーナッツのド~、レ~はレモンのレ~」と歌いながらチェロを奏でる青年の動画が上がりました。ゆる音楽学ラジオのパーソナリティ、浦下拓巳さんの一次選考動画です。
第一印象は、「この人めっちゃ楽しそうだな」でした。話のトピックも面白いし説明もうまい。さすが先生だなぁと思いました。
そして何より、懐かしい擦弦楽器の音色に、私は強烈に惹きつけられました。
その後はみなさんもご存じのとおり、浦下さんは一次審査・二次審査を通過し、「ゆる学徒ハウス」に出演します。
ゆる学徒ハウス#1の中で、浦下さんが個人YouTubeチャンネルの存在を匂わせていたので、個人チャンネルを検索して、上がっている動画を全部観ました。
中でも高校生の頃の思い出の曲、ベートーヴェンの「エグモント」の演奏動画は、懐かしさと「浦下さんもこれを演奏していたんだ!」という嬉しさで、何回も何回も繰り返し観ました。
当時は自分のことだけで必死すぎてチェロのメロディは全然聴けていませんでしたが、改めて聴いたらこの曲、チェロがとてもかっこいいことに気付きました。
私がなんだかんだ言うよりも実際に見て(聴いて)もらったほうが早いので、みなさん動画を見てください。オーケストラ曲にしては短いので(約9分)。
全部通して大好きな曲なのですが、特に3:03からのチェロが好きです。それまでオーケストラを低音で支えていたチェロが主役に躍り出てきて奏でるメロディが、私の心を鷲掴みにして離してくれなくなりました。
曲の雰囲気に合わせて浦下さんの表情も変わって、最初から最後までとにかくずっと楽しそうで。
そう、音楽って楽しいんですよ。
私も昔弾いたバイオリン、とにかく楽しかったんです。
部活の記憶が次々蘇って、ひたすら楽しそうにチェロを弾く浦下さんの姿と混ざって、「私もまた楽器弾きたい」っていう気持ちを久しぶりに思い出しました。浦下さんみたいに、こんなふうに楽しく弾いてみたい!
でも私の心には、高校の頃に先輩に言われた「弦楽器は3歳とか4歳とかから習いはじめないと弾けるようにならないんだよ」という言葉が、抜けないトゲのようにずっとひっかかっていました。
3歳とか4歳とか…… 30年遅かった……
高校生だって遅いって言われてたんだから、今更始めるなんて無茶だよなぁ。
きっと浦下さんも、幼い頃からチェロの英才教育を受けてきたんだろうな。そうじゃなきゃあんなに弾けるわけないもの。
やっぱり弦楽器は、遠い世界の、恵まれた人のためのものなんだなぁ。
うん、もう諦めよう。始めるには遅すぎる。
せっかく思い出した「楽器弾きたい」の気持ちを、心の一番奥にしまいました。
ところが、その矢先に公開されたゆる学徒ハウス#3の雑談動画で、私は衝撃の事実を知るのです。
まじで?????
この人、高校からチェロ始めたの? そんで音楽系の大学に行って、いまチェロ講師の仕事してるの? そんなことできるの??
「雷にバチコーンと打たれたような」衝撃でした。
高校の部活で弦楽器を始めただなんて、条件だけなら私と同じじゃないか。
子どもの頃からチェロを習わせてもらえるような、ラッキーな星のもとに生まれた人だと思っていたけど、違ってた。
私では想像もつかないほどの努力をしてきた人だった。
きっと悔しいこともいっぱいあっただろう。
それに比べて私はなんだ。
いつかやれたらいいなー、恵まれた人はいいなー、って言ってるだけじゃないか。
やりたいと思ったらやらなきゃだめだ。このままだと私はおばあちゃんになってから絶対後悔する。
確かに遅すぎるかもしれない、でも今が一番若いんだ、始めるなら早くしないと!
浦下さんの言葉に勝手に背中を押してもらったような気持ちになり、ずっと心の底でもやもや抱えていた「またいつか楽器を弾きたい」という夢を実現させよう!と決心しました。
はじめはバイオリンをまたやりたいと思っていたはずなのですが、浦下さんの演奏動画を毎日のように観ていたら、すっかりチェロに惚れてしまった私がいました。
はちゃめちゃな高音を奏でるバイオリンも華やかで大好きだけど、チェロはメロディと伴奏の両方いけちゃうんです。なんてオイシイ楽器なの。
それにあの落ち着いた、語りかけてくるような優しい音色も実に良い。あと正直なことを言うと、「浦下さんがとんでもない努力家とはいえ、3年で音楽系の大学に行ったということは、チェロのほうが習得が簡単なんじゃないか? チェロだったら、今から始めてもある程度弾けるようになるかもしれない」ともほんのちょっとだけ思いました。(これは後に「盛大な勘違いだった……!」と身に染みて理解することになります。ただ浦下さんがとんでもない努力家で、とんでもない変態なだけでした)
どうせやるなら新しいことをやってみよう!という気持ちもあり、チェロを始めることにしました。
YouTubeなどを見ながら独学でやろうとも考えましたが、私は生来怠け者の三日坊主。途中で挫折して放り出すのが目に見えています。
ただでさえスタートが遅いんです。ちゃんとプロに習って、最短ルートを教えてもらうことにしました。餅は餅屋です。
通える範囲にあるチェロ教室を探して問い合わせのメールを送り、レッスン枠に空きがあるのがわかると、すぐに体験レッスンを申し込みました。
数日後の体験レッスンで、先生に教えていただいた通りに楽器を構えて開放弦を鳴らすと、柔らかいチェロの音が体中に響き渡りました。チェロは楽器を抱えるようにして体のすぐそばで音を出すので、全身で音を感じることができるんです。
YouTubeで演奏動画を見ているだけじゃ分かりませんでした。初めての感覚に驚くのと同時に、「あ、これは楽しいわ」と思いました。
「30代は若いですよ!60代から始める人もいますよ」という先生の言葉にも勇気をもらい、2022年10月22日にチェロ教室に入会しました。
上記のゆる学徒ハウス#3 雑談動画の公開は10月14日だったので、私が雷にバチコーンと打たれてからチェロ教室に入るまで約1週間でのできごとです。
高校を卒業してから15年くらいウジウジしていた私を、浦下さんはたった1週間でスタートラインに立たせてくれました。
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そんなこんなで、チェロのレッスンに通い始めて丸2年が経過しました。
音辛だなんて言えるほど必死に練習しているわけではないですが、自分のできなさにしょんぼりすることもしょっちゅうあります。
でもそれ以上に楽しいです!なんとなく良い音(当社比)が鳴らせたときや、課題曲にマルがもらえたときは、私もやればできるじゃん!ってニンマリしています。
教えてもらってもすぐに忘れてしまう私に、根気よく2年も教え続けてくれている先生には感謝しかないです。
2年の間に、人前でチェロを弾かせていただく機会も2回ありました。
1回目は母校の同窓会的なイベントに、弦楽部OGとして参加しました。現役の時と楽器が違うので、友人達にツッコまれて面白かったです。
2回目は娘が習っているピアノの発表会に(なぜか)出演させていただき、娘にピアノ伴奏を弾いてもらってチェロを演奏しました。
びっくりするくらい緊張しましたが、とっても幸せな時間でした。大好きな娘とステージ上でアンサンブルができるなんて。私はこのためにチェロを始めたのかなって思ったくらいです。娘とはまたどこかで一緒に演奏できる機会があればいいなと思っています。
年末だし、今後の抱負とか語っても許されますかね。
このままチェロを続けて、いつか地元のアマチュアオーケストラに入るのが、今の私の目標です。
これはチェロを始めた当初からの目標だったのですが、6月に伸友フィルハーモニーの演奏会に行って、その思いがますます強くなりました。
今は子どもが小さくて土日の練習には通えないので、実現するのはまだ先になりそうです。もしかしたら10年以上先になるかも。
そもそも始めたばかりで下手だし、課題もたくさんあります。
でもそのくらい先の目標に向かって、ずっと楽しく続けたいと思う楽器に出会えたことが、本当に嬉しいです。
10年なんてあっという間に過ぎちゃうから、練習頑張らないと!
浦下さんがゆる学徒ハウスのオーディションに出ていなかったら、私はこんなに楽しい世界があるなんて知らないままだったと思います。
楽しい世界が意外と近くにあることに気付かせてくれて、先輩に憧れて部活に入った高校1年生のときみたいに、えいやっと飛び込むきっかけをくれたのが浦下さんでした。
「音楽の楽しさを伝えたい」と浦下さんはよくおっしゃっていますが、私にとって浦下さんはそれを教えてくれた恩師です。
心から感謝しています。ありがとうございます。
チェロとっても楽しいです!
いつもサポコミュで練習見守ってくださる壁のみなさんもありがとうございます。
またVCにお邪魔した際はよろしくお願いします。
来年もいっぱいチェロ弾くぞ!
おしまい!とっぴんぱらりのぷぅ。
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