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「鏡の向こうの亡霊」

朝の静寂が薄暗く裂ける
眠りの残滓が瞼に貼りついたまま
ふらりと立ち、鏡の前に
そこにいたのは、かつての自分ではない

皺が刻むのは時の冷酷さ
白髪が語るのは夢の剥がれ落ちた痕
重ねた年月は、希望の礎ではなく
ただ重荷として背中を沈めるだけ

あの頃の笑顔はどこへ消えた?
瞳の奥の輝きは?
この頬を濡らすものは
いつの間に涙ではなく汗に変わったのか

「これが俺だというのか?」
心の奥底で叫ぶ声
悲しみが胸を締めつけ、嘆きが満ちる
やがて、怒りが拳を握り締める

鏡は裂け、砕け散る
破片が床に広がり、反射する無数の自分
だが、その破片の中に見えるのは
まだ燃える心の炎

今、この時からでも遅くはない
叩き壊すのは鏡ではなく
己を閉じ込める鎖だ
50代の男よ、再び立ち上がれ

年老いた肉体は
新たな魂の舞台
破片の中で新しい自分が
静かに微笑む瞬間を、見逃すな

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