【鉄道・公共交通】JR九州 指宿枕崎線(ローカル線)の赤字問題について
JR九州さんは、今年になって2度ほど、赤字額が大きい在来線の区間収支を発表しています。だっしーの地元であり、利用者増を目的とした様々な活動に関わっているJR指宿枕崎線の、枕崎~指宿間は、年間約3.5億円の赤字だそうです。(収入-保守・運転に係る経費)
https://www.jrkyushu.co.jp/company/info/data/senkubetsu.html
本件に関しては、3つの論点があると思います。
<1.鉄道(公共交通)は誰のものか?>
指宿枕崎線はJR九州さんの資産・人員で運営されており、一義的には「鉄道会社のもの」です。
毎年数億円の赤字が出ているのであれば、普通の経営者感覚ではすぐに廃止しても誰も文句は言えない状況です。今まで頑張って運営していただいたJR九州さんには感謝しかありません。
でも、鉄道を始め、バスやタクシーなどの公共交通に、行政や地域住民が関与してくるのは何故でしょうか?
それは、公共交通が、上下水道や福祉・教育などと同じ「公共性の高いインフラ」だからだと思います。
日本は元来鉄道が利益を出しやすい国土条件・人口条件が整っていたため、「利益を出して当然」という考え方もあると思いますが、一方で道路整備(特に国道・県道などの一般道)に関して利益が出ているかどうかという議論はあまり出てきません。
道路は国や地方自治体が管理するのに、何故鉄道は鉄道会社だけの問題になるのでしょうか?
もちろん資金源は税金ですので赤字垂れ流しで良い訳ではありませんが、1事業者が営利事業として維持出来ない部分もあるから「公共事業体」が存在するのだと思います。
国鉄の民営化や、各種公共事業の民営化など、「民営化」が1つの流れとしてありますが、選択肢としては「公営化」という流れがあっても良いと思います。
他の国では、鉄道の資産としての保守・管理は国や公的機関が担当し、運営だけを民間事業者が行う「上下分離方式」なども採られ、日本でもその動きが一部出てきています。
また、運賃収入だけで考えるのではなく、移動してきた人がその地域にもたらす「経済効果」を含めて鉄道の収支を議論すべきだと主張される方も出てきました。確かにその側面も大事です。
そろそろ日本全体で、「鉄道(公共交通)は誰のものか?」「誰が管理すべきか?」を議論すべき時期に来ているのではないでしょうか?
<2.「我が地域の交通」の全体設計をどうするか?(特に「利用者」の関わり方)>
交通(人や物の移動)に関しては、鉄道だけでなく、飛行機、バス、フェリー、そして自動車・バイク・自転車、徒歩など様々な手段があります。
人口や利用者(地域住民・出張観光など地域外の人も含む)の要望や経済状況によって、各地域のよりよい交通体系のあり方(全体最適)は常に考えられるべきです。
枕崎も、「枕崎市内での移動」だけなら、枕崎市だけの検討で済みますが、「枕崎から(へ)の他地域からの移動」を考えれば、南薩4市エリア全体や、南薩以外の地域、特に鹿児島中央駅・鹿児島空港からの移動という観点でより広域的に考える必要が出てきます。
また、日本は地方に行けば行くほど車社会が支配的ですが、今後「公共交通と車の共存」などが環境的・経済的に良い解決方法になりうることだってあります。
南薩住民にとっては、鹿児島市の谷山駅あたりに大きな駐車場や、バスから市電やJRへの乗換が時間的・物理的にスムーズであれば、自家用車を使いつつも、もっともっと公共交通を利用する頻度は増える可能性があります。
このように、色々な地域で検討することは沢山あるのですが、現状では「利用者」が「交通関係者」や「行政」にその責任を押しつけすぎているという印象があります。
交通機関は自社の運用だけで精一杯ですし、行政も所管のエリアや組織権限内での検討に限られ、人事異動もあるので「長期的に全体設計・管理運用する」という環境に十分なっていないと思います。
「ある日突然減便され、利用者がうろたえたり行政や交通機関に文句を言うだけ」という状況で良いのでしょうか。
これを解決するには、「利用者が交通機関・行政とともに持続的に共有・検討できる枠組み作り」が鍵になると思います。最終的にはそれを達成できる人づくり、組織作りでしょうか。
<3.我が路線を残すためには、どうすればいいのか?>
JR指宿枕崎線を残すべきかどうかは我が地域で議論すべきですが、少なくとも私は残したい。残すからには願望だけでなく、我が地域を巻き込みながら結果を残していかないといけないと思います。
今までは、イベント列車の運営など主に観光面でアクションをしてきましたが、コロナ禍もあり不安定な部分もあるので、今後は地域住民の利用促進も考えていかないといけないですね。特に現在の利用者である高校生や、交通弱者である子供や高齢者の利用促進、車を利用する人が公共交通を利用したい(できる)機会を捉えたアクションを考えていきたいですね。
とにかくコツコツ小さくてもアクションして、利用実績を少しでも伸ばせれば、「この路線まだ可能性あるかも」と思う関係者は増えるかもしれません。
また、指宿枕崎線に限らず、南九州には「肥薩線」「吉都線」「日南線」似たような収支状況のJR路線「薩都枕南(さっとまくなん)」や第3セクター「肥薩おれんじ鉄道」などもあります。全国で言えば、100以上のローカル線があります。そこまでくれば一大勢力です。
それぞれは小さいですが、個々の地域・路線で、とにかく稼働を上げるアクションをして、良いこともだめだったことも共有し、できることなら横展開し、励まし合い、時には束になって交通機関や行政関係者の皆様と連携していく。弱者には弱者の戦略もあるのではと思っています。
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