杉山勝彦さんのミスチル論
乃木坂46や私立恵比寿中学の楽曲を手がける音楽プロデューサー・杉山勝彦さんは、Mr.Childrenから影響を受けた音楽家の一人。
2016年のGolden Circle
で、桜井さんが"良い曲"としてカバーした乃木坂46の「きっかけ」を作曲したのも杉山さんでしたね。
杉山さんは、初めて買ったCDが、「名もなき詩」であり、POPSAURUS 2001で歌う桜井さんの姿を見て音楽の道に進むことを決めたそうです。
そんな杉山さんが語ったミスチルの考察(2017年
●ミスチルについて
【杉山】
困った存在なんですよ、ある意味。作曲家としては、意識しないでやっても、「あれ?ミスチル意識しちゃったの?」って言われちゃうことが多いので。あまりにも影響力が大きすぎてちょっと困っちゃうんですよね
●音楽のセオリーを壊す不良
【杉山】
Mr.Childrenというと、J-POPの王道を走ってるようなイメージがおありだと思うんですけど、実は、音楽のセオリーを壊す不良のようなこともやってるんですよ
『終わりなき旅』という曲ありますよね。それの3Aに集約されてるんですよ。なんの変哲もなさそうに聞こえると思うんですけど、この曲、同じリズムが繰り返されてるんですね。7分4秒に及ぶ超大作なんですけど、その97㌫の6分50秒間も同じリフが繰り返されてるんですよ。で、普通のポップスって、メリハリをつけるじゃないですか。で、印象的な繰り返しを一瞬休ませるシーン作りますよね。3A前まで4分20秒間同じリフを繰り返してるんですよ。普通だったら、3Aで違うリフをやりたくなるんですよ。それを普通にそのままのリフを貫いちゃってるんです。これっていうのは、終わりなき旅というテーマ、止まらない終わりのない足音をこのリフによって表現してるからじゃないかなって僕は思ってるんですね
実際、桜井さん、雑誌で、曲に感動のサブリミナルを入れ込むのが技術だってことをおっしゃってるんですね。今、僕が言ったことがそうかはわからないんですけど、意図してやってるんだと思うんですよ
しかも、この曲、もうひとつあって、9回転調してるんですよ。転調って、普通、多くても4回とかで、1回も転調しないのがベーシックですよね。それは、きっと終わりなき旅である人生の紆余曲折をそれによって表現してるんじゃないかと思うんです
結局、Mr.Childrenっていうのは、セオリーよりもテーマを重視してるんですね。で、20年間以上に渡って、Mr.Childrenが第一線で居続けているっていうのは、王道である"Mr."の部分と、それとセオリーを壊す遊び心を持"Children"の部分を併せ持ってるMr.Childrenだからじゃないかと思っています。デビュー当初からどんどんどんどん音楽性もいろんなトライを繰り返され続けてるんですよね。だから、「深海」ってアルバムが出た時も衝撃的でしたよね。普通だったら、「Tomorrow never knows」があんなにヒットしたんだから、アルバムに入れると思うんです。コンセプトを貫いて、入れなかったんですよ
●ミスチル割り
歌のリズムですごいミスチルぽいって言われてるものがあるんですよ。ぼくわ勝手にそれを「ミスチル割り」って言っちゃってるんですけど。「innocent world」のサビの"いーつの日もー"のリズムなんですよね。これが使われてるミスチルのヒット曲ってめちゃくちゃあるんですよ。たとえばAnyのサビ"いーま僕のー"。「innocent world」が生まれる前に、もうこのリズムは使われてて、それより前にやってた人までミスチルの真似をしてるんじゃないかと言われてしまう…作曲家としては、それをやりすぎると言われちゃうしなみたいな(笑」
◆音楽プロデューサー・本間昭光が語るミスチルの『Mirror』の凄さ
◆歌詞プロデューサー・いしわたり淳治さんが語るミスチル