ミスチルと桜井和寿さんを通してKANさんを感じてみる

Mr.Children、桜井和寿さんとシンガーソングライター・KANさんのことを書いています。


■桜井さんとKANさんの出会い

桜井さんとKANさんが初めて会ったのは1993年のこと。
2023年は出会ってちょうど30年だったのですね。
KANさんは、1993年8月、大阪万博公園で行われたFM802の野外イベントMEET THE WORLD BEAT '93でミスチルの演奏を初めて観たそうです。
このイベントに出演はしていなかったKANさんですが、その日の夜、ラジオの生放送終了後、日付が変わった子ろに打ち上げに顔を出したと言います。
打ち上げは二次会~三次会となっていて、ミスチルメンバーをはじめ、アーティストたちはもうかなり出来上がっている状態だったそう。
そんな中で、KANさんと桜井さんの初めての会話が交わされました。
以下、KANさんの証言から再現してます。

ご機嫌桜井さん 「僕はKANさんの大ファンでぇーす!!」
シラフのKANさん 「あそう、ありがとう。ちょっと待ってて。今から飲んで追いつくからちょっと待って」
ご機嫌桜井さん 「大ファンです。でも、言えなかったんです!」
CHARAさん🍺 「桜井なんで言えなかったんだよ!なーんで言えなかったんだよ」」

この後、桜井さんは飲み過ぎて救急車で運ばれていったようです・・・。
翌日、東京に戻り点滴を受け、打ち上げにいたアーティストの各事務所に「大変ご迷惑をおかけしました」というお詫びのファックスを送った桜井さん。
そのファックスに「飲んだら酔っ払うそれは自然の摂理です。点滴がんばってください」と返事をしたKANさん。
桜井さんのファックスに返事をしたのがKANさんだけだったようで、このことで桜井さんはKANさんを「このひとは信頼できる」と思ったそうです。
これが二人の出会いとのことです。


■KANさんから影響を受けたミスチルの楽曲

・Over

「Over」の仮タイトルは「2beatでKAN」で、KANさんの楽曲「言えずのI LOVE YOU」から大きく影響を受けているとされています。
虹ツアーにおける「Over」の弾き語りのMCで桜井さんはKANさんから影響を受けていることを話しています。
このことは、シングル「ヒカリノアトリエ」のシークレットトラックに収録されていますね。

桜井 「まだ歌詞がついていない段階は『2beatでKAN』という仮タイトルがついておりました。このKANというのはK・A・NのKANです。『愛はカツ』のKANです。KANさんですあの一緒にね、ラジオとかやってて、あと、まぁKANさんの曲もすごい好きなんだけど、メロディーに関してはものすごく影響を受けている部分があります」

「Over」がKANさんから影響を受けていると言うのは、KANさんも言及しているので本人公認ですね。

KAN 「(地震の曲から影響を受けているのは)『Over』もそうです。『Over』は『言えずのI LOVE YOU』。それも、確か『2beatでKAN』」という仮タイトルだったという・・・“さん”ぐらいつけろよっていうのがあったんですけど(笑)」

・他にも影響を受けている楽曲がある

アルバム「REFLECTION」に収録されている「運命」の仮タイトルは「ライト マイKAN」ですね。
「everybody goes -秩序のない現代にドロップキック-」の“おりこうさーん”は、KANさんの楽曲「ぼくの彼女はおりこうさん」の“おりこうさーん”のオマージュ。
また、「終わりなき旅」はKANさんの楽曲「MAN」から影響を受けているようです。
桜井さんはKANさんとの対談で「『終わりなき旅』は、『MAN』と『まゆみ』の合体。よく訴えなかったですね」と直接伝えているようです。


■ミスチルが自身の曲をオマージュすることについてのKANさんの気持ち

KAN 「それは僕もとても嬉しいことですし、僕自身も、ほとんどが洋楽ですけど、好きなアーティストがいて、あの曲カッコ良い、あんな曲作りたいと思って作っている曲がたくさんありますので、僕の作品を目標にとかきっかけにあーこんな曲作ってみたいと思ってもらえるのはとても嬉しいことです。もっともっとあからさまにやってほしいですし、で、今だって言う時に訴えてみたいですよね。まさかの訴訟で儲かりたいって言うんですかね。『友達だと思ってたのにー』みたいに(笑)」


■ミスチルから影響を受けたKANさんの楽曲

2016年発売のKANさんの16thアルバム「6×9=53」に収録されている「scene」は、「2000年代のミスチルの曲」を意識して制作した楽曲。
KANさんは、2000年台のミスチルのシングル曲をいくつかピックアップし、メロディーの構造やコード進行の癖などを理論的に分析、その理論をもとに「scene」を作ったようです。

KAN 「Aメロがすごく低いとこから入ってきて、Bメロでじわじわとサビに行く前にちょっとファルセット入れといて、サビでドーンとスピード感を上げるっていう。だけど、サビのメロディーは結構複雑。そういうような考え方で作ってみました。で、最終的に、これも2000年代のミスチルの曲を意識したんですけど、英単語一発でタイトルにするというので、『scene』にしました」

ライブで歌う「scene」では、桜井さんのMCやオーディエンスを煽る叫びを真似したりすることもあって面白かったらしいですね。
ちなみに歌詞はスキマスイッチを意識していて、仮タイトルが「っ全力箒星」だったそうです。


■KANさん、ミスチルの楽曲の大きさを語る

KAN 「Mr.Childrenのコンサートは色んなとこで何度も観せていただいてますけど、やはり凄く感じるのは、悔しいと思うのは、曲がデカい。曲がデカいって言うのは、例えば、ドームで観るとするじゃないですか。すると、当然、実際に演奏しているMr.Childrenは物凄い遠くにいて、肉眼では凄く小さいわけじゃないですか。もちろん左右のなんたらビジョンで顔は映し出されるにしても。凄く遠いけど、楽曲が大きいので、あのドームとかスタジアムっていう規模で凄く気持ちいいというか、凄く合う曲がいっぱいありますよね。それがとても羨ましいですし、そのサイズの曲がいっぱいあるのと、やっぱり、サッカーやってるからでしょうかね、ステージから『いくぞーーっ!』と言って一番後ろまでボール蹴るような感じでやってるって言うんですかね。だから、Mr.Childrenは、ドームで遠くて見えないと言う気持ちにさせないって言う、凄い大きい楽曲、大きいバンドだと思います」


■KANさんが見た「桜井さんの音楽制作へのこだわり」

桜井さんはKANさんにとある曲のデモ音源を聴かせたことがあるそうです。
ドラムマシーンとベースとシンセぐらいの歌詞もまだないシンプルなデモ音源だったようですが、KANさんはその時点で凄く良いと思ったそうです。
しかし、KANさんが良い反応をしても、桜井さんはどこか納得していない様子だったと言います。
その後、曲が完成すると、当初聞いていた以上にすごい曲になっていてKANさんは桜井さんの音楽制作に対する執念みたいなものを感じたようです。
そのような桜井さんの音楽制作をKANさんはこのように評しています。

KAN 「例えば、建物があって、屋上があるじゃないですか。すると、屋上に行こうと思うと思うんですよね。非常階段をバンバン上がって、屋上行って、多くの作り手はそこで満足すると思うんです。その屋上にさらに小さな建物があったとするじゃないですか?アンテナが立っているような。そしたら、桜井さんはあの上まで行かなきゃダメだという感じですかね。ここで満足しないんだ、もっとうへに行かないと嫌なんだって言うような。それを強く感じました。作曲とか作詞もそうですけど、執念と言うか、これじゃダメだっていうのが物凄くあるような気がしますね。リスナーの皆さんにはそんなこと考えさせない曲だと思いますけど、作り手としてはそう言う聴き方をついついしてしまいますし、『GIFT』はそれを強く感じた曲ですね」

KANさんの記憶では、そう思わせた曲は「GIFT」だったとのことですが、一緒にデモ音源を聞いていた音楽ライターの森田恭子さんの記憶では、それは「HANABI」だったのではないかとのことです。


■桜井さんにとっての「KANさんの曲を聴く喜び」

桜井 「KANさんのアルバムを聴く、KANさんの曲を聴く一つの喜びはKANさんの遊び心に振り回されるというか・・・そういう喜びがありますよね」

「遊び心」、この度のKANさんの悲しいお知らせを受けて、さまざまな方がKANさんを語っていましたが、多くの人がKANさんのクリエイティブな面に「遊び心」を感じていましたね。
この桜井さんの発言は2021年1月23日のラジオでのものですが、ラジオではこれが最後の共演になってしまったんですかね?
この放送では、二人で話をしている最中にこんなことがあったんですよね。

携帯 「トットト♪トットットト♪」
KAN 「あっ電話かかってきちゃった!ぐふふ」
桜井 「あはははは」
携帯 「もったいないから♪もったいないから♪」
KAN 「後で、ごめん・・・」(たぶん、着信音が鳴っている携帯にむかって)
桜井 「まだスマホじゃないんですね」
携帯 「いじわるなこともしちゃう~♪」
KAN 「スマホなんて使わないですよ」
桜井 「ちっちゃいっすねぇ~」
携帯 「もったいない♪もったいない…(プチッ)」
KAN 「あのね、着信きゃりーちゃん、待受もきゃりーちゃん・・・」
桜井 「かっこいいー」
KAN 「はいっすいませんでした」

ラジオ収録中に電話がかかってきてしまって、着信音がキャリーパミュパミュ。
お茶目なKANさんらしくて微笑ましいシーンだと想いました。


■桜井さんとKANさんのコラボ

・パイロットとスチュワーデス

音楽ライター・森田恭子さんが制作する音楽カルチャー誌「LuckyRaccoon(ラッキーラクーン)」のイベント「LuckyRaccoonNight」をすることになり、森田さんから「KANくん桜井くん二人で何かやらない?」と提案され、二人で考えて作ったユニット。
ユニット名は、そのイベントに「plane」というバンドや、JUN SKY WALKER(S)の宮田和弥さんが結成していた「ジェット機」というバンドが出演予定だったため、「プレーンとジェット機といえばパイロットとスチュワーデスでは?」というKANさんの発想から名付けられたようです。
その時のやりとりをKANさんの発言から再現しますと・・・

KAN 「プレーンとジェット機というと・・・、パイロットとスチュワーデスじゃない?」
桜井 いいですね!それいい!」
KAN 「名乗った以上着るよ?」
桜井 「ちょっと・・・僕はスチュワーデスには胸板が厚すぎるのでパイロットになります」

そのような経緯から、桜井さんが「機長」、KANさんが「チーフパーサー」という役割&コスチュームとなったようです。
パイロットとスチュワーデスは、LuckyRaccoonNight vol.1(2006年11月、vol.2(2008年5月、vol.5(2010年5月)に出演。
イベントではお互いの楽曲をカバーしたり、オリジナル曲「弾かな語り」の披露、vol.2ではハンドベル伴奏の「いつでも微笑みを」を歌ったりもしていますね。
ハンドベルもパフォーマンスに懲りたがりなKANさんの提案で、物凄いリハーサル量で、リハを覗きに行った森田さんが「桜井くん、大丈夫?』と思うほどだったようです。
パフォーマンスにこだわるのはもちろん、衣装や二人の掛け合いにも定評があり、KANさんとの共演はMr.Children桜井和寿とは別の桜井さんが引き出されてましたね。

・Oxanne −愛しのオクサーヌ−

1998年3月発売のKANさんのアルバム「TIGERSONGWRITER」収録曲。
桜井さんは、キヌガサマサト名義でギター・コーラスで参加。
2010年には、KANさんのライブツアー『芸能生活23周年記念逆特別 BAND LIVE TOUR 2010 【ルックスだけでひっぱって】』Zepp Tokyo公演にシークレットゲストとして出演し、二人でライブで初歌唱。

・安息

2016年2月発売のKANさんのアルバム「6×9=53」収録曲。
桜井さんは作詞で参加、3日で仕上げてきたそう。


・ap bank fes

KANさんは、2007年、2008年、2010年、2011年、2012年、2021年の6回出演していますね(たぶん)。
ap関連で言うと、私は、Bank Band「沿志奏逢2」に収録されている、KANさんをカバーした「何の変哲もないLove Song」が好きです。
初夏の頃や秋のはじまりに毎年聴いてきました。

桜井さんとKANさんはたくさんコラボして、音を楽しむ二人がいましたね。
この他にも二人で生み出してきたものがたくさんあると想います。


■KANタービレ~今夜は帰さナイトフィーバー~

KANさんの命日である2024年11月12日に神奈川・ぴあアリーナMMで行われた、KANさんを慕うアーティストが集うライブイベント「KANタービレ~今夜は帰さナイトフィーバー~」に桜井和寿さんが出演しました。

桜井さんの参加曲は、「5.君が好き胸が痛い(桜井和寿)」、「13.まゆみ(桜井和寿)」、「16.Oxanne‐愛しのオクサーヌ‐(桜井和寿・トータス松本)」、「18.よければ一緒に(全員)」、「20.愛和勝つ(全員)」のようです。

なお、このイベントは、2025年1月19日 21:00~にフジテレビTWOで放送されます。


■最後に一言

この度KANさんの曲を色々聴いていて感じたのは、メロディーが人懐っこくて、本当に受け入れ易いということですね。
そういう感覚はミスチルに対してもあって・・・。
すんなり耳に馴染んでくるミスチルの音楽はKANさんの音楽の流れも受け継いでいるんだなと想いました。


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