デザインを分解観察することでデザイン力は向上する
デザインを分解するとはなにか?
デザインを分解するというのは、人体模型で人の骨格や筋肉を知ったり、組立図を見て物の構造を理解するというのに近い考え方だと思ってください。
広告などの紙媒体が一番わかり易いのでダミーで作った不動産のチラシを基本に話を勧めていきますが、web媒体などでも基本的な考え方は同じです。
実際に分解してみよう
■要素によって分解
要素というのは言い換えれば「役割」です。
その役割には大きく分けて2つあります。
1,装飾
2,情報
です。
商業デザインとは、突き詰めればいかに情報を思い通りに伝えるかだと思うのですが、「思い通りに(装飾)」+「伝える(情報)」と置き換えることが出来るでしょう。
情報の細分化は、更に細かく分けていくことも可能で
「装飾」の中にもどういった用途で装飾パーツが使われているのか?
「情報」にも重要度は低いが有る方が親切、もしく注目度をあげるため
など色々と分けていくことが出来る。
ただしこの作業にはキリがないくらいに掘り下げが出来るので、そこまで重要ではないので割愛します。
実際にダミーで作った不動産のチラシを情報と装飾に分解してみましょう。
装飾部分にも、もっと細分化していけば情報要素の部分はありますし、逆に情報の部分にも装飾的要素の部分もありますが、その作業自体に大きな意味はないということは上記したとおりなのでここでは触れません。
大まかにそれぞれの目的を考えていきましょう。
紙面全体の印象を作り、デザインの方向性を左右する背景画像は、とても重要な要素です。
「こういったイメージを」と言うように打ち合わせなどで絞られてくるでしょう、情報の配置や全体の構成をを決定づける場合も多くあります。
装飾を省いて情報だけを見てみると、上から下に向かう事で情報の重要性が高くなっている事に気が付きます。
メインと成る「新規分譲開始」は大きく一番目立って、次に価格の数字が大きく、物件の詳細情報はひとかたまりで視線の移動無く読めるように配置されている・・・
と言うようなことが分かりやすくなります。
装飾の方にコピーがあります。これはテキストですが情報ではありません。
紙面のバラン紙を取るために加えられた、極端な言い方をすると「背景画像の一部」です。
左から右に向かって下がっていく建物の画像に対してバランスをとるための要素となっているのが解るかと思います。
背景に入っている「葉っぱ」はそれだけではただの背景の一部ですが、情報を囲う枠にために背景と似たような葉っぱを施すことでどちらにも意味が生まれます。
紙面全体に爽やかな印象を付けるという働きもしています。
このように漠然と眺めるのではなく一つ一つの要素に注目し、そして要素同士の兼ね合いなどを見ていくことでそのデザインの良さや面白さが解ってくると思います。
では次に
■絵として分解
絵として分解とはそのとおり視覚的に分解して行こうというものです。
デザインには見た目の「格好良さ」とか「綺麗」とか「印象的」など視覚的に訴えることも大事です。では格好良さや綺麗さの価値基準は人それぞれですが、なぜそう感じるのかを掘り下げて考えることはデザインの理解には重要です。
先程の紙面のモノクロで見てみましょう。
色が無くなることでテキストが見やすく配置されているか?情報は視線の流れに沿っているか?などの判断がより解りやすく掴めるようになります。先程も書いたように格好良さや綺麗と感じるポイントは人それぞれですが、もう一つ大きな基準となるのが流行です。
近年デザインでは大きく写真を使うことが主流の一つになっています。そういった意味でも今回の紙面は、先ずイメージ写真有りきで構想されていのですが、とは言え情報も適当でいいという訳でなくテキストも見やすく、それていて面白みや創意工夫を施して格好良さや綺麗さを出しています。
文字の強弱やフォントのチョイスなどテキストの見せ方も様々ですが、その根本は見やすく伝わりやすくを大前提にしています。広告のデザインでは特にそれが重要です。土地価格と建物価格を足したら総額がいくらになるか?先ず知りたいのは金額で、その中でも最重要なのが総額な訳なので金額を大きく、総額は更に色を変える。
住む場所にとって大きな要素は近くのスーパや病院より駅だから駅の扱いは大きく、伝えたいのは時間だから数字を大きくして色を付ける。
考えていけば当たり前のことばかりですがそうした装飾を積み重ね、最終的にそれがうるさくならずバランスを整えていくために囲みをつけて切り離すなど更に工夫する。
絵的に捉えていくことで要素的分解ともまた違ったデザインの根拠が見えてきます。
こうした一連の理解行動によって、デザインがどうやって作られているのかを感じ取り、知識の蓄積によって自分のものにしていけば、きっとデザイン制作の糧になるはずです。
一つ大事なこと
この作業によってデザインの根拠を作ることに慣れていってほしいのです。デザインの根拠を作ることは人にそのデザインを伝えるためには非常に重要です。人に伝えるとはプレゼンやコンペなども含まれます。デザイナーとして勝ち抜き成長していく上で、避けては通れない要素に成るでしょう。
次のステップでは上記を踏まえて「デザインの根拠作り」に入ります。
次回の更新までお待ち下さい。