精索静脈瘤の手術を受けた体験談
今から3ヶ月前の話。
私は東京の「銀座リプロ外科」にて「精索静脈瘤」の手術を受けました。
精索静脈瘤の手術を受けた体験談などの実録は、あまり多くありません。特に、手術を受けた男性自身が書いたものに関してはなおさらです。そんな中でも悩みに悩み、調べに調べ、ざっと70万円以上という高額な費用を選択して手術を受けましたので、この経験を色々な方に共有したいと思い、今回筆を取りました。
病院の内情なども含めて記事を書いたため、記事の途中までは無料で読むことができますが、途中からは恐縮ながら非公開とさせて頂き、有料で全文を読める形とさせて頂きます。(手術費用の足しにしたい、という理由もありますが・・・)
その分、できる限り詳細でボリュームたっぷり、2万5千文字以上の記事に仕上げたつもりです。術後の経過はリアルタイムで更新していきます。
この記事では、
・私が精索静脈瘤だと分かるまで
・なぜ手術を決意したか
・手術する病院選び(10以上の病院を比較し、なぜ30万円以上する病院を選んだか)
・手術を受けるまで
・東邦大学大森病院での精液検査など
・手術当日の様子
・術後
などについて、書いていきます。
ちなみに私は31歳です。同じ病気を持ち、悩む皆さんの力に慣れれば幸いです。
注意事項
この記事は、あくまで私本人の手術記録や感想を書いたものです。私の体験は、すべての人にあてはまるわけではありませんし、私は医師ではありませんので、あくまで参考程度にとどめてください。
できる限り正確な記述を心がけたつもりですが、正しい医療の情報や診断などについては、必ず主治医にご相談ください。私は一切の責任を負うことはできません。
私が精索静脈瘤だと分かるまで
多くの方の場合、ご自身が精索静脈瘤だと判定されるのは「不妊治療の最中」だと思います。
妊娠しない
→女性が検査を受ける
→男性も精液検査を受ける
→精子の所見が悪い
→精索静脈瘤だとわかる
という流れですね。
しかし、私は全く別のルートをたどりました。
私の場合、まず最初の違和感は「勃起不全」つまりEDでした。
いや10代の頃から勃たなかったのです。
私の初経験は18歳の頃でした。男子の初経験というものは、まぁ緊張で勃たないものだと理解していました。
しかし私の場合、回数を重ねてもうまく勃起しません。
10代でEDというのは、なかなかない症状です。ネットで調べても、「心因性」、つまり緊張や不安がもとで勃起しないのだ、といったことが書かれてありました。
ですが私の相手は気の知れた女性です。不安や緊張も特にないのに勃たない。社会人になってからは自由に使えるお金もできたので、バイアグラやレビトラなどの勃起不全治療薬に頼る有り様でした。
この頃は私の生活習慣も悪かったので、「きっと睡眠不足とか栄養不足のせいだろう」と、あまり気にしていませんでした。
しかし20代後半になり、生活を整え出しても私の勃起力は改善しません。
この頃自分が「種無し」なのではないかとちょっと不安になり、スマホで撮影できる精子観察キットのTENGA MEN'S LOUPEなんてものを買ってみて自分の精子を観察し、「おおー!ちゃんと精子いる!動いてる!良かった!」と感動したこともありました。幸いながら種はいたようです。(このときはこのとき撮った動画が手術のきっかけになるとは思いもしませんでした…)
精子はいたものの、勃起力は相変わらず。
更にネットで調べて、「ひょっとして勃起しないのは男性ホルモンがおかしいんじゃないか?」と心配になり、意を決して近所の泌尿器科に行きました。ネットで調べた知識をもとに、テストステロンやプロラクチンなどの「ホルモン検査」をするためです。
テストステロン:男性ホルモンの一種で精巣で作られる。低いと健康には良くない
プロラクチン:勃起を抑えるホルモン
この病院ではこの2種のホルモンに加えて、LHとFSHというホルモンの検査を受けました。
LH(黄体化ホルモン):精巣の細胞(ライディッヒ細胞)に作用してテストステロンの分泌を促す
FSH(卵胞刺激ホルモン):精巣の細胞(セルトリ細胞)に作用して、精子の産出を促す
結果、プロラクチン・LH・FSHは正常でしたが、私のテストステロン(遊離テストステロン)値は9.7と、70代の男性並の低値でした。私の勃起不全の原因が分かったような気がしました。
こちらの病院では漢方薬(補中益気湯)を保険で出して頂き、私の勃起力が少し改善したのは良かったです。
精索静脈瘤を知る
その後も、引き続き勃起力不足について本やネットで調べるうちに、「精索静脈瘤」という病名を知りました。
精巣に血液が逆流し、キンタマが熱を持ち、精巣の活動が鈍るとのこと。
画像引用:広島市立安佐市民病院 http://www.asa-hosp.city.hiroshima.jp/diagnosis-info/section20/1095.html
私には心当たりがありました。今まで特に気にしたことはなかったのですが、私のタマはいつもだらんとしているのです。
本によると、普通の人は正常時にはキンタマってだらんとしてないらしいですね?暑いときにだけ放熱のために、だらんと垂れ下がると書いてありました。私の場合、よほど寒かったり、シャワーで冷水をあてたりしないとシャキンと縮み上がりません。
ひょっとして精索静脈瘤ではないか?と心配になり、同じ病院でエコー検査したところ、心配は的中。左側が「精索静脈瘤」だとわかりました。精索静脈瘤は9割の人が左側の静脈にできるようなので、よくあるパターンのようです。
この時点で、私の精巣がわずかに萎縮していることもわかりました。
とはいえ、この医者がいうには「精液所見が悪くなければ、手術する必要はない」とのこと。
実際にネットなどを調べてみても、正常な男性でも15%は精索静脈瘤を持っており、普通は手術の必要はないと書かれていました。精索静脈瘤があっても、問題なく子供がいる方も多いようです。
なので、この時点ではとりあえず様子を見る(という名の放置ですね)ことにしました。いま後悔していることの1つです。もっと早く受ければよかった。
手術を決心するきっかけ
この1年後、異変が起こります。
下腹部に、痛みが出るようになりました。へその左下あたりから陰嚢あたりにまで、ビリっとした痛みと鈍い痛みがありました。
例の泌尿器科にかかると、「何らかの原因、例えば精索静脈瘤などの影響で前立腺に炎症が起きている可能性がある」とのこと。
「とはいえ、前立腺の炎症は誰にでもあること。セルニルトンって薬を出しておきますよ」と、処方を受けました。
1週間ほど飲み続け、痛みはだいだい引きましたが、その後も下腹部に違和感が残りました。
「そろそろ手術をしなきゃいけないのかな・・」
と思っていた頃、もう1つの出来事が起こります。
知り合いの医学生と話しているとき、話の流れでたまたま精子の話になり、数年前に私が自分のスマホで撮影した自分の精子の映像を見せたのです。
「精子少ないし、あまり動いてなくね?」
友人が言った言葉は、私にとって衝撃の一言でした。
動画を撮った当時の私は気付きませんでしたが、確かに私の精子数は少ないようですし、動きが鈍い。
その場で正常な精子の動画をYouTubeで見てみましたが、私のより何十倍も精子がいますし、元気に動いています。私の精子はYouTubeにあった乏精子症・精子無力症の動画と近しかったのです。「スマホで撮った動画だし、正確なことは検査してみないとわからないけど・・」と友人は慰めてくれましたが、、
これを機に決心しました。
もうやばい。手術を受けよう。
精索静脈瘤とは
ここでちょっと、精索静脈瘤のかんたんな解説をします。
精索静脈瘤とは、精巣(つまりキンタマ)の少し上にある内精静脈の静脈弁が壊れ、血液が正常に流れなくなる病気です。静脈が大きく太くなり、心臓に戻るはずの血液が逆流します。
キンタマの上にある精索という場所に静脈瘤ができるので、精索静脈瘤というそのまんまの名前です。
精巣は、体温より少し低い温度(33〜35℃)で活発に活動するため、体から離れた場所についています。ですが精索静脈瘤だと、体内の温かい血液が逆流して、精巣の温度が上がり、精巣の大事な活動(精子形成や男性ホルモンの産出)ができなくなってしまいます。
精子がうまく作られないことから、不妊の原因になります。また、人によっては睾丸でつくられる男性ホルモンが減少するようです(私もそうかもしれません)
血流が逆流し悪くなることで、精巣に酸素もうまく行き届かなくなり、だんだんと精巣は萎縮(小さくなる)していきます。
とはいえ、精索静脈瘤はかなりメジャーな病気で、正常な男性でも15%は持っていると言われます。精索静脈瘤があっても問題なく子供をもてる方もたくさんいますし、特に日常生活に問題がなければ命に関わる病気ではないので何も治療しない方がほとんどです。不妊だったり、痛みや違和感がある方が治療を受けます。
こんなケースで精索静脈瘤に気づく方が多いようです。
・不妊
・下腹部や陰嚢に痛みや違和感
・陰嚢を触ったり観察していて、血管の膨らみや精巣の萎縮に気づく
また、精索静脈瘤には症状の度合いに応じてグレードがあります。数字が大きいほど症状がひどいということです。Wikipediaにはこう書いてあります。
グレード1:立位腹圧負荷(Valsalva maneuver)で触り、確認できる。
グレード2:立位(患者が立った状態)で触り、確認できる。
グレード3:視診で静脈瘤を確認できる。
私個人の意見ですが、これ、大雑把すぎると思います。精巣が萎縮してるほどの私の精索静脈瘤でも、目で見て静脈瘤があるようには見えません。更に強い症状がある人は、ミミズ腫れのようになっていたり、コブがあるように見えるらしいですが、かなりひどい状態だと思います。
私の場合、お風呂場でタマに冷水をあてて縮み上がらせると、なんとか血管が見えるくらいです。あとはつまんだりすると太い血管があるのがわかります。
精索静脈瘤の治療
精索静脈瘤の治療は手術のみです。精索静脈瘤は、血管の静脈弁が機能していないので薬では治りませんし、自然治癒することもありません。(精子の状態やテストステロン値を良くしたいだけであれば、漢方やコエンザイムQ10の内服などで改善することがあります)
手術の内容としては、問題になっている静脈を結紮(けっさつ。縛ること)するのですが、そのやり方が大きく分けて4種類あります。
・高位結紮術
・顕微鏡低位結紮術
・腹腔鏡下結紮術
・経皮的塞栓術
この中で、術後経過が良いのは顕微鏡低位結紮術です。再発率が低く、手術による合併症の心配も低いです。手術も日帰りで行うことができます。
ただ、顕微鏡低位結紮術は保険適用されていないので、数十万円のお金を払って自費診療を受ける必要があり、高位結紮術を受ける方も多いようです。(いや、正確には2018年から保険適用されたのですが・・・、次章に続く)
精索静脈瘤の手術の病院探し
さて、精索静脈瘤の手術を決心し、病院探しを始めました。
いろいろ調べるうちに、顕微鏡低位結紮術が手術方法として優れており、2018年から保険適用されたので費用も安く済むと考えていました。しかし、実態は違ったのです。
顕微鏡低位結紮術そのものは、保険で12,500点つまり12万5千円と決まっており、3割負担で37,500円ですみます。しかし、この値段だけでこの手術を受けられる病院は多くありません。
その理由として、こんなものがあります。
手術を行える医師が少ない
あまり技量を必要としないので、高位結紮術を行える医師は多いらしいです。
が、顕微鏡低位結紮術は顕微鏡も用いる上に高度な技術を必要とするらしく、まだまだ顕微鏡低位結紮術はを行える泌尿器科医は少ないのです。
ただでさえ男性不妊を専門とする医師も少ないですしね。
病院側の儲けがない(赤字になる)
そして、もう一つの問題は顕微鏡低位結紮術が病院が赤字になるということです。いくら日帰りで済むとはいえ、何人もの医師や看護師などの人手を使い、高価な医療用顕微鏡を使う顕微鏡低位結紮術にはお金がかかります。それなのに病院側が12万5千円しか収入がないのでは、赤字になってしまうらしいです。
なので、病院側としては儲けを出すために、
・他にいろいろと検査を受けさせる
・日帰りの局所麻酔手術ですむところ、全身麻酔にし2泊3日ほど入院させる
・不妊治療を並行して行い、不妊治療のほうで収益をあげる
などの手法を使って、儲けを出しています。あるいは、手術を断られたりします。私もいくつかの病院に問い合わせしましたが、手術を断られたり、入院が必要と言われたりしました。
病院の比較
私は都内に住んでいますので、東京近郊で精索静脈瘤の顕微鏡低位結紮術手術を受けられる病院を探しました。
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