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僕の知ってる『スタンドバイミー』が人のと違った話

 どうもMr_noiseです。
今回はスティーヴン・キングの『スタンドバイミー』を読んだことしかない僕が、小説を原作にした映画版を見た人と話していたら食い違った話をします。小説のネタバレを含む内容になりますので、未読の方は注意をお願いします。

 大学生のころ、何かのきっかけで、先輩と『スタンドバイミー』って映画のが有名だけど、小説しか読んだことないんですよという話になった。先輩は映画の方だけ見たらしく、「小説ってどんな感じなの?」と聞かれた。僕が小説を読んだのは中学生のころだったのでうろ覚えであることをことわったうえで、子供たちが死体を見つけに行く話で、キングの作品の中ではホラー色の薄いものだったと思うと返した。「大筋は変わらなさそうだな」と言われた。

 描写だと、子供たちが発見した死体にカブトムシが湧いてるって表現がエグくてさすがホラーの巨匠だと思ったことも伝えた。身近な虫の負の面を見せられたようできつかったと。「映画でその描写が生かされてたかは覚えてないな」との反応。今思うとたぶんbeetleを日本語訳したのだから、甲虫の中から翻訳者の方がカブトムシを選んだんだろうな。不気味な効果を足しているし、正解な選択だ。

 テレビでたまに子供たちが汽車に追いかけられるシーンが移るけど、小説であったか覚えてない話を僕がし、映画版では子供たちがゴミ捨て場?か何かに忍び込むシーンがあるということを先輩に教えてもらった。

 話しが進んで、僕がそもそも基本的に地味な小説だし、ラストが暗いから何で家族向けの人気映画みたいな感じでテレビでたまに紹介されているかわからないと言ったところ、先輩は「え?ラストが暗い?」みたいな反応になった。それで僕も「え?」となった。どうやら小説と映画はラストが違うらしい。

 「だって主人公以外全員ラストで死にますよね?」「死なないよ……。どういうこと?」

 僕が『スタンドバイミー』を好きなところはその部分なのだけど、どうやら映画では描かれてないらしい。小説の最後で、この物語は年をとった主人公の回想であり、死体を探しに一緒に冒険した仲間はみんなすでに死んでいることが明かされる。たしか回想時の主人公は20代~30代半ばくらいだったかな。死体を発見したから呪いにかかったとか、友達の死に主人公が関わったとかでなく、単純に友達たちは若くして病死や事故死や他殺などで死んでいることが説明される。それでいて主人公は友達たちと疎遠になっていたり、死から何年も経っているため悲しんだりしているわけでもない。ただ無性にあの死体を探しに行ったときのことを思い出すときがあると語り、話はそこで終わる。

 この唐突なラストこそが『スタンドバイミー』だと僕は思っていた。先輩はそれで人気映画になるわけないだろと笑っていたと思う。でも読んでみようかなとも言っていた。

 死体を探しに行っていた子どもだってもしかしたらすぐに死んでしますかも知れないという当然のことの読者への提示。青春っていう瞬間の短さ。ともだちはいつのまにかともだちでなくなってしまうこと。死体を探していた少年も歳を重ねるうえで人の死に慣れっこになってしまうというリアリティ。何をとっても、中学生時の僕には衝撃的でサイコーなラストだった。とくに叙述トリックや信用できない語り手みたいな小説表現の知識を知る前だったため、このラストは予想できず、その分、今でも強く覚えているのだと思う。 

 いつか映画を見ようと思うのだけど、いまだに見れていない。映画を見るよりは小説『スタンドバイミー』を読み返したい。小説は引っ越しの際に手放してしまったままだ。映画を見てないけど、ラストが違うことを認められない時点で、僕はすでに原作信者なのだと思う。中学生の僕はいつか人は死ぬんだなと思ったけど、人の死に何度か触れた僕が読んだら、今どんな気持ちになるのだろうか。

 余談になるが、amazarashiの『夏を待っていました』は『スタンドバイミー』の小説を元にしていると勝手に思ってる。夏前に冒険して、数年後に友達が死ぬ暗い歌だから。発売直後にタワレコで視聴して、スタンドバイミーの歌だと思って、CDを買った覚えがある。僕が知ってる小説の『スタンドバイミー』とより認知度が高い映画版とに違いがあることを知る数年前の出来事だ。その間に、人にスタンドバイミーの歌だよねって言わなくてよかった。

 僕はスタンドバイミーの歌だと思うんだけど、実際どうなんですかね。

#エッセイ #スタンドバイミー #amazarashi #夏を待っていました

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Mr_noise
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