美味しさが伝わる文ってどんなんだろう

 どうもMr_noiseです。
もうひと昔前になりますが、グルメ漫画ブームってありましたよね。
登場人物が美味そうなものを美味そうに食って美味いって言うのが面白いっていう三大欲直結型漫画。あの頃、やっぱ絵の力や漫画の表現の力はすごいな。食いたくなるなって思っていたのですが、同時に文章だけでこういうことはできないもんなのかなとも思っていました。

 写真などを使わずに、文章のみでどれだけ美味しいものを美味しそうに表現できるものなのかなと考えていたわけです。文章に表現できないものはないと信じているけど、文を読んで腹減ったな、うまそうだなって思った経験があまりない。ぱっと思い浮かぶのが『十五少年漂流記』のダークバージョンみたいな小説、『蠅の王』で子供たちが無人島で飢餓状態になり、貪り食ってた豚の丸焼きが美味そうだったことくらい。でもこれは文章表現の技術もありますが、無人島でろくなもん食ってないという状況設定があってこそ豚がおいしそうに感じているのだとも思います。エッセイや随筆は基本的にあまり読まないから、美味そうな文が浮かばないのかもしれませんね。自分で書くとなると「美味しさが伝わる文」はハードルが高そう。

 何で「美味しさが伝わる文」が気になるのかと言えば、写真撮りたくないからなんですよ。写真撮ってたら料理が冷めるじゃないですか。冷める前に食いたいです。加えて、動機の順序が逆になるのも嫌なんですよ。料理の写真を撮ると、後で料理の文章を書く前提で食事をすることになるじゃないですか。僕は料理食って美味しかったら文章を書きたいのですよ。他の方の料理の文章と写真はありがたく読ませてもらうけれど、自分は同じことしたくないです。料理に関しては、食い気1番、文章2番でありたい。

そんなわけでどう書いたらいいんだろうと悩みながら、写真なしで焼きガキが美味かった話をしたいと思います。

 先日、家で焼きガキをしたんですよ。BBQセット出して、炭に火をつけて、カキを網の上に置いて放置して、待つ。はよ食いたいと思いながら3分くらい待つ。すると貝殻の中で、ぐつぐつと牡蠣の身が蒸されて、殻が開くころには蒸し焼きにされた身と、身から出たうまみの濃い出汁ができているわけですよ。ああ待ったかいがあったと、それを熱がりながらもまずは何もつけずに牡蠣と出汁を流し込むように頬張る。牡蠣自体の塩味と旨味と生とは違うちょっと弾力の増した触感が幸せです。1回噛めば、喉に入って、カキの風味と旨味だけが口に残る。ああ次をと、大根おろしとポン酢とねぎ、しょうゆ、マヨネーズと一味、スダチと醤油、ラズベリービネガーとエシャロットと手を変え品を変え、次々と開く牡蠣に違う旨味を足して味わい尽くしました。僕は酒が飲めないので、個性が強い牡蠣の味に立ち向かうためにいろいろと用意した訳です。酒が飲めれば、口に残った強い牡蠣の味を酒で流し込めばいいのでしょうが、下戸は色々やらないとずっと牡蠣味の口になって、牡蠣をたくさん食べれなかったりするのです。ただ牡蠣だけではお腹いっぱいにならないので、BBQセットの箸でスキレットにオリーブオイルを入れて温め、にんにくと鷹の爪を投下。オイルに香りが移ったら、マッシュルームと牡蠣を旨味だらけの油に漬からせて、煮えるのを待ちます。牡蠣のアヒージョです。僕はおしゃれ人間ではないので、これやってみたけどうまいんかなと半信半疑で、フランスパンにオイルたっぷりの牡蠣乗せて食ったんですよ。ニンニク味の油うめえ、油吸った牡蠣の身うめえ、パンうめえ。しゃれた料理のはずなのに、なんだこれ、二郎系ラーメンみたいなバカな味すると思いました。知ってる旨味がスクラム組んでタックルしてくるからそりゃ美味いだろって味です。油ギトギトのマッシュルームがまた美味い。面倒なので半分に切って入れたニンニクがほろほろの感じで、具として食っても上手い。いくらオリーブオイルが健康にいいとは言え、フランスパンで油すくって食ったら、体に悪いとは思う。でも何度でもやってしまう。罪の味がする。美味い。本当にこれOLさんとか好き好んで食ってるのかなと思いました。油うめえってなって、明らかに健康に悪い味がしました。満腹。

 結果、夢中だったので一回も写真は撮りませんでした。焼きガキいいよねって書きたいけど、どう書けばいいのだろうと思い、この文章を書いた次第です。どういう表現で文章を書けばいいのだろと思っていたのに、結局「美味い」しか言ってない文になっちまいました。人は料理美味かったらそれで満たされるから凝った文章を書かないのかもしれません。少なくとも自分はそうでした。旨味の前に自分の持ってる少ない語彙とレトリックが死ぬ。美味いしか出てこない。それにしても腹減ったなあ。

おわり。

#雑記 #牡蠣   #焼きガキ  

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Mr_noise
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