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売れる飲食店の秘訣 #番外編「売上・利益計画を作る」

新しくできている小型飲食店への危惧

 久しぶりに「売れる飲食店」シリーズに投稿しますが、今回は、このところ街で新しくみかける小規模飲食店に対して、私なりに抱いている”危惧”についてお話したいと思います。
 それは何かといいますと、ズバリ「経営計画をちゃんと立てて開業しているのか?」ということです。開業資金をどこから調達してきたのかはわかりませんが、計画も立てずに開業していると思われる小型の新規店舗(しかもなぜかオシャレな店ばかり)が多いような気がします。
 店側にとってみれば大きなお世話かもしれませんが、今後そういった新規店の開業を考えている方への参考になればと思っての投稿です。

半年で休業状態になったカフェ

 まずは、身近にある具体例をお話します。
 杉並区の住宅街(といっても近隣商業地域)にあった戸建住宅の跡地に、一軒家のカフェがオープンしました。詳しく言うと、その店は新築の2階建てで、1階がカフェ、2階がスタジオという構成です。広さは、おそらく20㎡もないくらい。席数ははっきりわかりませんが、(私が利用する前に休業になってしまったため、食べログの店内写真からの想像です)カウンターを入れても14~15席程度と思われる小さなカフェです。ただ、工事期間を1年以上もかけたせいか、地中海の島にあるような白い外壁に緑があしらわれ、落ち着いた木の内装のかなりオシャレな作りになっています。
 外に貼りだしてあったメニューを見れば、こだわりカレーやハンバーグランチの他にガレットなどもありますが、価格もけっこう強気の設定で、誰もが気軽に通えるカフェという感じではありません。
 私の家のすぐ近くにできたため、新聞折込かポスティングなど、何かでオープン告知が入ってくるだろうと待っていましたが、結果として何もなく、開業記念の装花が少し出ていた程度で、ひっそりと始めたという感じです。
 開業後、ランチタイムには近くの会社の社員と思われる女性客をチラホラ見かけましたが、賑わっているという感じは一度もなく、驚いたことに18時になると店を閉めてしまうというありさまでした。(開店は10時)
 …という状況の中で、開業して半年を過ぎたころには何の前触れもなく店を閉めている日が多くなり、今や完全に休業状態になっています。オーナー(であると思われる)女性が玄関前で立ち話をしているのを小耳にはさんだのですが、「店開いても、人件費がかかるしね~」といったことをぼやかれていました。

そういう結果になったのは自明の理

 そのお店の名前は、”友達”を意味する欧米語ですが、なるほど最近の様子を見てみると、たま~に仲間内のパーティなどで使っているようです。開店にあたってはかなりの額の設備投資をされたと思われますが、そういった使われ方だけをしても何の問題も生じないのでしたら、それはそれで良いでしょう。
 ただ、普通のお店ではそうはいきません。当然、新規開店のための先行投資に使った借入金は、日々営業していく中から返していかなければなりませんし、何よりもオーナーは、自らの生業(なりわい)として成り立たせていかなければなりません。(趣味でやっているのなら別ですが…)
 小規模店の場合、オーナーが一人、またはもう一人のパートナーと二人で始めることが多いと思います。毎月の返済金と共に、彼らが食べていくための金額は確保していかなければならないのです。
 その際に必要となるのが、開業前に立てる「売上・利益計画」です。売上目標からでも原価設定からでも、どちらから始めてもよいのですが、とにかう1ヶ月間でどういった金額を動かすべきなのかを試算することです。
 売上目標から始める場合は、「1日で、何をどれくらい売るのか」をまず考えるとよいと思います。土・日・祝日と平日を分けて、想定している商品単価から推定できる客単価平均と、席数×回転数をそれぞれ計算してみます。そして、1日の売上数字が出たら、あとは営業日数を乗じれば1ヶ月の売上予測ができるというわけです。
 一方、原価計算から始める場合は、1ヶ月間に必要になるであろうコストを全て洗い出すことから始めます。家賃や水光熱費など、だいたい毎月同じ金額が必要となる固定費(借入金の返済額などもお忘れなく)と、食材費や人件費等の変動費です。この変動費は「FLコスト」(F:food=食材,L:lober=人)と呼ばれているもので、販売額によって変化しますが、計画段階ではある程度決めた金額で計算します。

売上・利益計算で、店の存続が決まる

 売上目標と原価計算が出来たら、その2つを並べてみます。そして、どこにも無理がなく営業できるようでしたら、そのお店は続いていくものと思われます。さらに、いろいろな工夫を重ねていけば、「繁盛店」になる可能性を秘めたお店ということができます。
 ところが、こういう基本的なことをせずに開業すると、どうなるのか?  オシャレな内外装にして、ウケる(映える?)メニューを考え、SNSで情報発信すればやっていけるだろう…などと始めても、十中八九は失敗すると思います。
 小型店の場合、一番陥りやすいのが、客単価と回転数を考えないことだと思われます。席数は限られるわけですから、目標の売上に到達するためには
1人あたりの客単価を上がるか、回転数を上げるかしかありません。
 ただ、一流有名店からの”のれん分け”とか、他にないオンリーワン商品があるといった特殊な強みでもない限り、新店がいきなり高単価を打ち出す=高額商品で勝負するというのは自殺行為です。そうなると、残りの選択肢はひとつ。回転数を上げることになります。

売れない飲食店にならないための秘訣

 回転数を上げるといっても、当然提供する料理の種類や内容にもよります。客の回転が良い飲食店の代表格のひとつに、立ち食いソバ店がありますが、低単価でも1日中ひっきりなしに客が入れ替わることで、売上数字を確保できる仕組みになっているのです。
 では、さきに挙げたオシャレ系カフェの場合はどうしたら良いでしょうか?  そのヒントは、時間帯によってメニューを変えることにあります。
 まず、ランチタイムですが、短い時間帯の中で回転数を上げるために、料理の手間がかからず、かつ短時間で食べることのできるメニュー優先で提供することです。そうなると必然的に、作り置きのできるカレーや調理に時間のかからないハンバーガーなど、いわゆる”ファストフード”系のメニューになりますが、素材やスパイスなどにこだわりを盛り込んで、大手チェーン店などとの差別化を図ります。また、一人でも気軽に入れる雰囲気を作り、カウンター席なども最大限に活用します。リピーターを育てるために、日替わりメニューの導入も良いかもしれません。
 次に、夕方からの時間帯は、ガラリと変えてバー的なメニュー構成にします。回転率と同時に客単価もある程度追及する作戦になりますが、凝った料理を提供するというよりも、フードは軽めで、お酒を中心に楽しんでもらうショットバー的なコンセプトで営業します。提供する酒類も、珍しいクラフトビールや発泡系の日本酒だけを置くなど、少しこだわりを入れて、単価を少しでも上げるように工夫をします。
 また、昼夜ともに営業するためには、従業員の確保とともに人件費も課題になってきますが、休憩時間をうまく使い、シフトを工夫するなどで乗り切りたいものです。「サッと飲んで、サッと次へ行く」ための店なら、遅い時間帯まで営業する必要はないからです。

 このように、FLコストも考えながら回転数を確保し、安定した売上を保つためには、それなりの知恵を絞る必要があります。他の店はどうしているかを研究しながら、自店の立地とターゲットを考え、売上・利益計画をしっかり立ててから、開業へと臨みたいものです。

 M.R.LABOでは、新規飲食店の開業にあたり、各種ご相談に応じています。
開業の負担にならないよう低額費用で対応させていただいていますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。(お問い合わせはコチラまで。メールでお願いいたします。)

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