見出し画像

教師の語り その10 〜意識の壁〜

 陸上競技の中でも人気の高かった1マイル(約1600m)走。

 1923年、「空飛ぶフィンランド人」と呼ばれたパーヴォ・ヌル選手が4分10秒3という驚異的な記録をこの種目で打ち立てました。

 これは当時とんでもない記録で「もう2度とこの記録は破られない」「1マイル4分の切るのは、人間の運動能力では不可能である」と言われました。事実、この記録は何十年にも渡って多くのアスリートが全く破れず、医師は「無謀な挑戦は命を落とす」とまで警告し、エヴェレスト登頂や南極点到達よりも難攻不落だと言われたそうです。

 ところが、31年経った1954年。イギリスのロジャ・バニスター選手が3分59秒4という記録でこの常識をぶち破りました。

 ただ多くの人を驚かせたのはこの後。
 なんと、その46日後にオーストラリアのジョン・ランディ選手が3分58秒0を記録し、あっさり世界記録を塗りかえたのです。31年間破ることができなかった記録がわずか46日間で更新されたのです。しかも、その年に23人の選手が1マイル4分を切り、翌年にはさらに約300名もの選手が1マイル4分の壁を破ってしまいました。

 “1マイル4分は人間には切れるはずがない”と思っていたから多くの人が切れなかった。でも、誰かが切れることを証明したら、“なんだ、いけんじゃん”と一斉に4分を切る人が続出する。
 人間は知らぬ間に思い込みや固定概念にとらわれて生きているものなのかもしれません。

いいなと思ったら応援しよう!