聴覚的にきく”映画、 陽だまり、 卒業式”
6/26にリリースされたいよわさんの新アルバム”映画、 陽だまり、 卒業式”
他のレビューでは文学的にレビューしてる人が多いのですが、音楽的にこのアルバムが語られてることは少ないので、音楽的にこのアルバムをレビューします(note久しぶりなんで不器用ですが見てくれたら嬉しいです)
このアルバムを聴く上で注目するべき点
このアルバムで注目する点は
・楽器全てが合わさって作られるグルーブ
・実験的なシンセサイザー
・可愛いおもちゃ的なサウンド
・ぐちゃぐちゃな構成
・不安定/重厚なボーカル
・自然な転調
・疾走感
・耳だけで聴いても残る&音の雰囲気と合う歌詞
あとこのアルバムを聴くとき、視覚的ではなく聴覚的に楽しむといつもより違う楽しみがあるので、目を閉じて聴いてみてください
アルバム曲レビュー
1.パジャミィ✴︎
このアルバムを始める重要な一曲。この曲でこのアルバムの全体が見えると思う。不思議と思える浮遊感、そこに残る不安感の全てが詰まってる。注目するべきところを全部押さえてると言える。サビ前の疾走感がこの曲の大きなポイント
2.ゆめみるうろこ
interlude的に見れる曲だが1:34に全てが詰まってるような疾走感と満足感のある曲。歌詞の馴染みやすさもこの曲には欠かせない、人生のスタートみたいに、全てが始まりで、全て新鮮で、全て楽しい、そう感じさせられる
3.わたしは禁忌(2024 ver. )✴︎✴︎
非常に驚いた。迫り来るシンセの波と金属的なサウンドのバックコーラスでこのアルバム独特のグルーブを出している。”ねむるピンクノイズ”のメランコリックな雰囲気を無くしてるのもあって狂気を感じるダークな曲になってる。フェイバリットの一つです
4.異星にいこうね
ダークで可愛らしい曲。歌詞も相まってマイナー調で可愛い曲だなと思ってたんですが”どうして、なんでそんな怖い目で見るの”のあとから音数が減ってビットクラッシャーのような音が誇張されるところで不穏な空気が持ち出される。
5.ぷらいまり✴︎
可愛い♡だけじゃない曲。サウンドエフェクトや歌詞、可不のボーカルも相待って可愛い曲になってるけど注目するべきところはサビのカウンターメロディー。子供が不器用に走ってるようなブラスシンセが裏でごちゃごちゃしてるパーカッションに混ざってグルーブができている。
6.間に合え結婚式
一言で言うと”高級アニメオープニング曲”ファミレスで言ったらロイヤルホストみたいな感覚。歌詞もいよわワールド全開で入りやすい。アニメOP的ではあるもコード進行がエグ味で二番のサビのピロピロシンセで疾走感爆上げ!!!アルバムの中では変わり種な曲です。
7.頬が乾くまで
アプリコットを連想させるようなどこか寂しさがあって、バックコーラスが綺麗な一品。サビのストリングスで儚さがマシマシで以前のいよわさんのピアノプレイより派手さがない。バラードともいえないいい一品
8.キャットファイト✴︎
メトロノーム的なイントロから始まるジャズチックな曲。曲の途中でブレイクが入るところやサビでなっている金属的なぴこぴこシンセがグルーヴィーでかっこいい。2:00から始まるクロマチックが多用されてるシンセソロがイカついのもポイント。
9.ももいろの鍵
サビの三拍子が特徴的な曲。いよわさんのメロディーセンスが一番際立つと言っていいほどキャッチーで覚えやすいメロディー。後半につれてピアノがエグめになるところがポイント。
10.平熱
ももいろの鍵に綺麗に繋がって始まるチルな曲。パーカッションの音数多いけど繊細な感じがたまらない、あと注目するべきはピアノソロ!不器用な感じのピアノソロはいよわさんにしかできへん!!!(打ち込み感のない生感いいよね!!)
11.一千光年(Album ver.)✴︎
全ての曲通して圧がすごい曲。ボカロ界でボカロ大合唱がたくさん出てるけどこの曲以外全部変に聞こえるぐらいボカロを上手く使ってる。それにボカロ主体のような曲なのに間奏で全然飽きさせないような濃厚さがたまらない。
12.新学期
ピアノが際立つ一品。このアルバムの中では珍しくバンドサウンド的なアプローチや邦ロック的なアプローチがあり、曲の展開が前作の”私のヘリテージ”を彷彿とさせる。これを軽音部でやっても違和感はないと思う。
13.深夜怖い✴︎
様々なシンセサイザーが細かくヘッドホンの左右で流れるようなイントロで始まる逸品。曲を通してピッチが高めに設定してあるように聞こえ、曲が終わるたびにピッチとテンポが共に上がっていく、不自然に感じるような曲を作ってしまういよわさん、、、尊敬します🙇
14.バベル
深夜怖いからその重さを引き摺り出してテープで早くして疾走感出してるみたいな曲。重い雰囲気でこんなに疾走感を出してる曲はこの曲以外この世にはないと思う。そこにテトの声がいい感じに歌詞と曲に溶け込んでる。
15.黄金数(2024 ver.)
この曲で良かった、きゅうくらりんじゃなくて良かった、この曲だからこそこのアルバムなんだ、前作では細かい楽器が波のように耳に入ってそれが上手く絡まってマキシマムなサウンドを出しているが、このアルバムでは楽器数が減り、ボーカルの重厚感が出たことによって、激しく動くドラムと不安定なシンセが際立ち、まとまりのあるミニマムなサウンドになった。
16.地球の裏
コードがオシャレ!!!KeyがEmの丸サ進行の最後にD♯maj7が入ることによってコード進行の格がぐんと上がる。テンポもところどころ生命体のように変わっていく、恐怖と洒落た雰囲気のミクスチャーが味わえる一品
17.つづみぐさ
不安定なマリンバのようなサウンドで始まる曲。いよわさんの曲の中でメロディーがJ-pop的で和風的な雰囲気も感じられる。なんなら初期ボカロの雰囲気もある。ぷらいまりがマキシマムならこの曲はミニマムだろう。
18.クリエイトがある✴︎✴︎(一番大事!!!)
憂鬱な雰囲気を持ちつつ破壊してくような曲。いよわさんのクリエイティビティが全て詰まっている。普段のボカロやJ-Popなどと違って心の準備ができていない中人類に早すぎるパワーで憂鬱を吹き飛ばす。インスト(特にパーカッション)に集中すれば疾走感のあるような曲に聞こえるが、メロディーに集中すれば、憂鬱さも感じれる。古臭さもある。一番注目するべき曲
19.花蟷螂(個人ベスト)✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
やばいやばい、ボーカルのしゃがれた感じ、ミステリアスで魅力的な歌詞、ずしずし響くベースと4ビート、サビからのひっくり返るようなジャージービートの使い方、クリエイトがあるのクレイジーにしがみついたまま聴いてると、頭がトリップ状態に陥る、危険だ、アウトだろうがこれはLSDだ、
”よおくよおくご覧なさい、ぽつぽつ零す水”世界観に浸る、ぐちゃぐちゃだ、混沌としてるのに際立つキック、中毒性のある危険な曲だ😱😱😱😱😱😱私は一番好きです
20.大女優さん✴︎
花蟷螂でのトリップ状態から不安定なピアノで始まり、主人公の語りで物語が始まる、”ショートフィルムを撮ろう”でトリップ状態から話に没頭する、不安定でミニマムなインスト、声が機械的でありながら人間らしい曖昧な状態で聞くこの曲、バックのボーカルコーラスが集中力を極限まで上げる、主人公の語りも後半になり歪みが強くなる、狂ってしまう、、、
21.粗大ごみの日
やっと陽気な曲がきたよ、、少し危険な体験が終わった後のこの曲。大女優からの憂鬱があり暗く聞こえるが歌詞とハーモニカで正気に戻る。クリエイトがある、花蟷螂、大女優さんの流れがThe BeatlesでいうRevolution 9だとしたらこの曲はリンゴが歌ったgoodnight,全てが元通り、、、ふわふわしてて直球に言うと可愛い。
22.熱異常✴︎✴︎✴︎
ふわふわして終わりかな、、、と思ったら、、、このアルバムは甘くない、アトラクションのように、この曲一瞬で風景が地球が終わる寸前の砂漠の惑星。この曲の説得力を舐めてはいけない、機械的でありながら悟ったように歌う足立レイ、自我があるように、ごちゃごちゃしたパーカッション、逆再生にも聞こえるピアノ、際立つビート。サビに入ってストリングスシンセが徐々に上がってく、世界が終わってく、聞いてももう説明できない、世界は終わるんだ、、、”死んだ変数で繰り返す”情景が見える、ラスサビ、不自然でもありながら脳が追い詰められるように音がマキシマムになっていく、
23.三十九糎
絶望して悟った後に聞くこの曲。エンドロールのように聞こえる。この曲単体で聴いてそう思うことなんて一生ない、だけど救われていく、聞く度にこの流れに納得できる、投げやりだと思ったのに、、、だけど今までのアルバムの救われ方じゃない、THE GREATEST UNKNOWNの三文小説とは違う新鮮さがある、メランコリーで、どんなエモーションでも聴ける、
24.卒業式
卒業式で”映画、陽たまり、卒業式”という一つの人生というような気持ちの波が締めくくられる、最後のパジャミィのピアノでアルバムの全体像がクリアになる、心が単純になる、子供みたいな気持ちになったり、恐怖を感じたり、リラックスしたり、衝撃でクラクラになったり、その衝撃が残って世界が変に見えて、それで終わりが見えて悟って、最後も綺麗に終わる、これが人生なんだな、、、
聴いた時に考えたこと
ボカロへの向き合い方
ボカロを使って曲を作ってるボカロP、その曲をきく人たち、ほとんどの人がボカロを聴いてる時に思っていることやボカロという音楽を作成して消費しているか、彼らはボカロを”アイドル視”していると思ってる。ボカロを聴いている人々は曲のことも語るがほとんどの評価が”ボーカロイドのキャラクター性”と感じている。だけどいよわさんを聞いてる時は違う。
”ボーカロイドは楽器”という思考に至る。
人間が歌えないように作られていたボカロだったが、現代では一般人がそこの曲に馴染めるようにとボーカルが人間に合わされていく、重音テトSVはボカロと言っていいのか僕でもわからない、その中でいよわさんはボカロの
”本当の使い方”を見つけたんだと思う、一千光年を聞いてばらついてる、違和感があると思わないのはボカロの本質を捉えた上での編曲だからだ。
メロディーで作り上げる”グルーブ”
このアルバムは”メロディーで構成するグルーブの教科書”だと僕は思っている。”ぷらいまり”という楽曲で指摘したサビのブラス。短いスパンの間で山をこけながら走っていくようなメロディー。ここでのグルーブはこれからの音楽で注目すべきところだと僕は思っている。打ち込みでリズムやパーカッションのグルーブを再現するのは無理と言っても過言ではない。新鮮な手法で聴いていて”新時代だ、、、”と思いました。
最後に
このアルバムは2024のアルバムで上位に入るほど好きだった。本当に最高。ボカロ舐めてるやつはこれ聴いて黙ってろ。って感じです
最後まで読んでくれてありがとうございます!!!次もアルバムレビューします!!!