MPS-ABCで禁止されている農薬『パラコート剤』(茎葉除草剤)と代わりとなる手法について
MPS-ABC(国際環境認証)では、日本国内で普通に使用されている農薬でも、国際的には安全が認められないとして使用禁止されている農薬(MPSブラックリスト)があります。
パラコートは生育中の雑草に散布して枯らす、いわゆる「茎葉除草剤」です。日本では1960年代から全国で使用されていましたが、濫用による事故や事件が増えたため、購入時に身分確認等の手続きが必要な「毒物」に指定されました。現在、日本では混合剤の「プリグロックスL」が販売されていますが、MPSでは禁止農薬です。
パラコートの特徴は散布後すぐに雑草が変色し枯れ始めることで、雨の多い熱帯地域で多用されていますが、十分な防護服を着ていない現地作業者の被曝が問題視されています。またパラコートは土壌鉱物と強力に結合するため、ヨーロッパを中心に土壌への蓄積が懸念されています。
日本では上記の通り簡単に購入できる商品ではないため、使用される機会は少なくなっています。しかし、他の茎葉除草剤で雑草が枯れ残った時など、試しに使われることがあるようです。そこで今回はパラコート以外の茎葉除草剤の特徴と使い方について簡単にご紹介いたします。
パラコート以外の茎葉除草剤の特徴と使い方
主な茎葉除草剤としては、「グリホサート系」と「グルホシネート系」の2種類があります。名前はよく似ていますが作用機構も特徴も異なるため注意が必要です。
〇 グリホサート系除草剤(使用OK)
グリホサート系除草剤は、代表的な「ラウンドアップ」の他にも、ノンブランド商品を含む多種の製品が販売されています。有効成分は葉から吸収され、芽や根の先端に移行して雑草の生長を止めます。葉の一部に薬液が付いただけで雑草全体が枯れるため、少水量でさっと散布しても除草効果を得られます。しかし格安のノンブランド商品では有効成分を雑草に吸収させるための界面活性剤の性能が低く、必要以上の高薬量で使われていることが多いようです。このような製品には除草剤用の展着剤(サーファクタント30)を加用するなどして、適正な薬量で使用してください。
〇 グルホシネート系除草剤(使用OK)
グルホシネート系除草剤の、代表的な商品はバスタ液剤、ザクサ液剤です。効果の発現は早く散布後数時間で雑草が変色します。ただし有効成分は芽や根には移行せず、薬液がかかった部分のみが枯れます。そのため雑草全体がしっかり薬液で濡れるように、散布方法と散布時期を考慮して使用してください。
刈払機による物理的な除草を含め、それぞれの除草方法の特徴を以下にまとめました。同じ除草方法を続けていると特定の雑草が目立って残るようになります。その雑草は、その除草方法では防除しにくい種類と考えられますので、むやみに薬量を増やすより別の除草方法へ切り替えたほうが賢明です。
代用① グリホサート系除草剤(ラウンドアップなど)
効果的な除草方法
・雑草が生えい揃った頃に散布
・適正な薬量の範囲内で使用する
残りやすい雑草
・スギナ、ツユクサ
代用② グルホシネート系除草剤(バスタ、ザクサ)
効果的な除草方法
・葉がまだ重なりあわない時期に散布
・たっぷりの水量を散布する
残りやすい雑草
・イネ科雑草
代用③ 刈払機による除草
効果的な除草方法
・雑草が種子をつける前に除草する
・定期的に複数回作業する
残りやすい雑草
・チガヤ
・ススキ
(掲載記事)
文:彦田岳士(MPS-ABC コーディネーター)
(MPSニュース 2020年8月号 掲載記事)
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