【花き】温度・時間値試験結果まとめ

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1.目的

 切り花の品質保持期間を簡易に推定する方法として温度・時間値の利用が提案されている。これは品質保持期間が温度と時間の積により示すことができるとする概念である。そのため、流通に要した温度・時間値をトータルの温度・時間値から減ずることにより、残りの品質保持期間の推定が可能視される。しかし、乾式保管を長時間行った場合などでは、この概念の適用には限界があると考えられる。
 そこで、多数の品目において、温度・時間値が日持ち予測に利用できる可能性について検討した。

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2.調査品目

切り花品目:アルストロメリア、カーネーション、ガーベラ、コデマリ、サクラ、湿地性カラー、スカビオサ、ダリア、トルコギキョウ、バラ、ヒマワリ、ユーカリ、ラナンキュラス(以上13品目)
鉢花品目:シクラメン、マーガレット(以上2品目)

3.結果

(1)湿式保管で適用可能な品目とその保管条件

ガーベラ:5~25℃で4日間保管、保管時の最大温度・時間値は2,400
ダリア:5~15℃で4日間保管、保管時の最大温度・時間値は1,440
トルコギキョウ:15℃~30℃で最長6日間保管、保管時の最大温度・時間値は2,400(25℃で4日間)
バラ:5~25℃で4日間保管、保管時の最大温度・時間値は2,400
ヒマワリ:15℃~30℃で最長6日間保管、保管時の最大温度・時間値は2,400(25℃で4日間)
ラナンキュラス:5℃~15℃で最長7日間保管、保管時の最大温度・時間値は2,520

(2)湿式保管である程度は適用が可能な品目とその保管条件
 

アルストロメリア:5℃~20℃で保管、保管時の温度時間値は480。総温度・時間値に処理間でやや差あり。
カーネーション:5℃~25℃で4日間保管、保管時の最大温度・時間値は2,400。STS前処理により温度・時間値が増加。「ファリダ」は茎折れで日持ち終了、処理間で総温度・時間値に有意差あり。
湿地性カラー:15℃、25℃、15℃と25℃の組合せで保管、保管時の最大・温度時間値は1,800。保管温度が高いと総温度・時間値は減少傾向。
スカビオサ:5℃、10℃で最長6日間保管、保管時の最大温度・時間値は1,440。1品種は処理間で差なし、1品種は温度が高いと総温度・時間値が減少傾向。

(3)湿式保管で適用が困難な品目とその環境条件

コデマリ:2℃~10℃で最長20日間保管、保管時の最大温度・時間値は2,400
サクラ:2℃~10℃で最長20日間保管、保管時の最大温度・時間値は2,400
ユーカリ:5℃~20℃で最長6日間保管、保管時の最大温度・時間値は720

(4)乾式保管で適用が可能な品目とその環境条件

ガーベラ:5~25℃で2日間保管、保管時の最大温度・時間値は1,200
バラ:5~25℃で2日間保管、保管時の最大温度・時間値は1,200
ヒマワリ:15℃~30℃で最長6日間保管、保管時の最大温度・時間値は2,400(25℃で4日間)

(5)乾式保管で適用が困難な品目

湿地性カラー:15℃、25℃、15℃と25℃の組合せで保管、保管時の最大温度時間値は1,800。保管温度が高いと総温度・時間値は減少傾向。
トルコギキョウ:15℃~30℃で最長6日間保管、保管時の最大温度・時間値は2,400(25℃で4日間)。保管温度が高く期間が長いと総温度・時間値は減少。

(6)鉢花で適用が困難な品目

シクラメン:5℃~25℃で最長6日間保管、保管時の最大温度・時間値は3,600
マーガレット:5℃~15℃で最長6日間保管、保管時の最大温度・時間値は2,160

4.まとめ

 大半の品目において、湿式で保管した場合は温度・時間値が日持ちの予測に利用できる可能性が示された。しかし、湿式でも保管期間が極端に長い場合や、茎折れが多発したカーネーション品種のように日持ちの終了が花の老化とは異なる場合には、温度・時間値の適用が困難視された。
乾式で保管した場合、ヒマワリのように温度・時間値が日持ちの予測に利用できる可能性が示された品目がある一方、トルコギキョウのように困難視される品目も存在した。その理由として水ストレスを受けやすいのではないかと考えられる。
 鉢花では2品目のみ試験を行ったが、温度・時間値の適用は困難視された。鉢花は貯蔵糖質が多いことに加えて、光合成が可能であることが原因になっているのではないかと考えられる。

5.説明動画

(MPSオンラインサロン[2021年4月24日] 市村先生の日持ち講座)


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