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「私たちのワンピース」
真っ赤な作品を受け取る。
どきどき、どくどくする気持ちをおさえて、届けてくれた方にお礼を言う。短いキッチンを抜けてベッドに腰かける。
包みを雑にやぶり、床にそのままにして、触れる。
中をのぞくのは怖かった。こんなにも自分がどう思うのか、自分がどうなるのかわからないと思ったことはなかった。
怖い。どんな世界なのかわからない。楽しみにして、1日を過ごして、届くのを待ち焦がれていたはずなのに、開くのには時間がかかった。
思いきって真っ赤な扉を開く。
そこからもう、わたしは一気に吸い込まれた。
なにがなんだかわからなくて、1ページずつ、そっと触れながらめくる。
ページをめくる手は止められなくなった。結末がみたい。
わからないまま終わってほしくない。どうか、教えて。
そんなことを小さく思いながら、そっと期待しながら触れていく。
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息をするのも忘れて、どくどくが背中を刺す。
痛い。痛くてたまらない。何かが乗り移ったみたいに背中が痛い。
わからない、わからないよ。なんだこれ。ぜんっぜん、なにがなんだかわからないよ。
最後まで観終わって、そっとページを閉じるとき、クレーターがわたしの目に飛び込む。完全に宇宙だ。世界だ。
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大事に膝に抱えて、そっと表紙をなでる。なで続ける。
そしてそのままこれを打っている。この衝撃は、いま、このまま言葉にしないと、このあと絶対に同じ気持ちにはならないと思った。
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でも同じ気持ちにならなくてもいいとも思う。
わからないことをわからないままで過ごしてもいいような気がしている。
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結末はわたしには、わからない。
きっと筆者にしかわからない。
わからなくてもよくて、人それぞれ、結末は違ってもいいとも思う。
いや、結末なんてどうでもいいのかもしれない。それすらわからない。
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でも、わかったことがひとつ。
わたしは、いま、この瞬間、わたしのうしろに佇む大好きな服たちをビリビリにやぶってしまいたくなった。横にかかっている洗濯物の山をやぶってしまいたくなった。
いらない。大切にできる覚悟がないなら、自分の手で殺めてしまったほうがいい。たくさんの服も、この本も、全部、ずたずたにできたら、どれだけわたしの心は楽か、考えてしまっている。
そんなの望んでいないのに、過去のなにも考えていなかった自分が、にたにた笑いながら迫ってくる。
覚悟を持たなくては。この衝撃と気持ちを忘れてはいけない。
こんな考えをする人が、世界でわたしだけになったとしても、わたしはわたしの気持ちを貫きたい。
弱いままのわたしはもう存在してはいけないのだ。
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「私たちのワンピース」347。
明日はわたしの私たちのワンピースをまとって、世界を見つめてみたい。
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