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2.これってどういう罪になる?

こんばんは。今は2020年8月13日の0時19分です。先ほどツイッターで、何やらバチバチしている人を見つけたのでさかのぼってみたところ、

「被害届を出して来るよ♬」


………ほう。

なかなかに興味深い。さらに過去ツイを辿ると、

「検事や弁護士が不起訴・示談で済ませましょうと持ち掛けてきても今まで全員起訴まで持っていった。」

「自分の信念は絶対に曲げない。相手には悪魔に見えるだろうが、自業自得だ。」

参照:https://twitter.com/KING01273779/status/1293223015732228096?s=20

なかなかにやり手とみた。彼が今まで民事・刑事の裁判をそれぞれどのくらいの回数経験しているかはわからないが、「起訴までもっていってる」という彼の誇り高き成果が本当なのだとしたらその気兼ねは賞賛に値するだろう。


・要点整理

それでは、今回私が引用するお二方を紹介する(今更⁉)。

まず、被害を受けたと主張するのは「KING(賢王)」さん(@KING01273779)。そして、今回加害者として晒されてしまっているのは「J.K Balloonmen」さん(@BalloonmenJ)。

事の発端は、KING(賢王)さん(以後「KING氏」)のDMにJ.K Balloonmenさん(以後「風船氏」)が暴言ともとれるDMを送ったことである。その時の内容がこちら。

風船氏:「相変わらずまだTwitterやっているのかよクソオス お前みたいなミソジニーは男の恥だよ」《2020年08月07日 PM11:25》

参照:https://twitter.com/KING01273779/status/1291832030360084480?s=20

......背景がどんなものだったにせよ、DMで唐突にこの文言を送ってこられたらさすがに恐怖を覚えるだろう。無視で対処するKING氏だったが、風船氏はさらに追加で攻撃を仕掛ける。

風船氏:「お前みたいなクソオスは地獄ですら生温いな さっさと死んでくれないか?」《2020年08月11日 PM23:49》

風船氏:「ペニスと金玉を神様に返却してこい」            

    「性犯罪を起こすなよ」《2020年08月11日 PM23: 51》

参照:https://twitter.com/KING01273779/status/1293201650539102213?s=20

散々な物言いである。ここで、KING氏は「これ、警察に届けてもいいよね?」というツイートを投稿。

参照:https://twitter.com/KING01273779/status/1293201650539102213?s=20

すると、風船氏は態度を一変。

風船氏:「不快に思われたら謝罪致します 申し訳ございませんでした」《2020年08月12日 AM0時58分》

風船氏:「リプライでは文字数制限があるの通知も遅いので私はDMを好んで使っています」《2020年08月12日 AM1時00分》

参考:https://twitter.com/KING01273779/status/1293215949860921344?s=20

その後も長文をKING氏に送り付けるも、KING氏は動かず、最終的には風船氏がKING氏をブロックし、KING氏は警察に被害届を出すことを決意しているという状況である。



・検証

では、今回の事件で該当する可能性がある法律をピックアップしていくことにする。

1.名誉棄損罪 
2.侮辱罪 
3.自殺関与・同意殺人罪(内・自殺教唆罪) 
4.脅迫罪 
5.強要罪 
6・迷惑防止条例違反



。。。。思い当たるのはこの6つだろうか。ほかに思い当たらなかったのでひとまずこれで話を進めることにする。


1.名誉棄損罪かどうか

・名誉棄損罪は、刑法第230条により定められたもので、条文は230条第1項、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」というもの。また、違法性阻却理由(この罪に該当する行為だけど、合法として認められる条件)として「公共性があり」「公益を図る目的で」「真実または真実相当性があること」という三点がある。つまり、公共性があり、公益を図る目的があり、その内容が真実/真実だと信じるべき正当な理由や根拠があるならば「名誉毀損罪」として処罰することが出来ないということだ。

 名誉棄損罪の構成要件としての重要な要素に、条文にもある通り「公然と」「事実を適示し」「人の名誉を棄損した」という三点があり、これらに合致しない限りは名誉棄損として訴えることは出来ない。では今回のケースに照らし合わせてみよう。

・「公然と」→早速合致しない。今回のケースはDMという他人の目が介在しない個人間に限定される場所でのやり取りで発生したものであり、不特定多数が閲覧可能ではなかった。また、伝搬可能性(噂として広がる可能性)があったとも言えず、完全に1対1でのケースであったことは明白。

・「事実を適示し」「人の名誉を棄損した」については、上記「公然と」が不合致の時点で説明しても時間と手間の無駄なので端折ることにする。

そもそも、匿名同士であるならば名誉が棄損されたと言い張っても「誰の」名誉が棄損されているのかが第三者から見てわからない。せいぜい「○○と名乗る氏名不詳アカウントに対して」程度であり、実在のアカウント運営者の社会的評価が著しく低下したとは言えないだろう。

さらに、「クソオス」「男の恥」についても、「公然と」の要件を満たさないため不成立である可能性が高い。

これを計算していたのだとするとだいぶ悪賢いようだ。

とすると、名誉棄損罪にはならないことになる。次に行こう。


2.侮辱罪かどうか

・侮辱罪は、刑法第231条により定められたもので、条文は「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。」というもの。「公然」というのは、不特定多数または少数に対してでも、他に広まる可能性があるという場合や、不特定多数に対して知らせるということであり、ネット上の書き込みであっても、実際の閲覧者数によらず該当するものである。

侮辱罪はその罪の形質上、名誉棄損罪と混同されがちだが、一点だけ名誉棄損罪とは大きく異なる箇所がある。それは、「事実を適示していない」状態で適用されるものであるということ。事実の適示というのは、「○○(被害者名)は~~~だ!」というような形で事実(かのように)示すことで、内容が根も葉もないことであっても事実の適示とされる。侮辱罪の構成要件は「事実を摘示しないで」「公然と」「人を侮辱した」の三点。それを踏まえて今回のケースと照らし合わせてみよう。


・「事実を適示しないで」→今回のケースは「死ね」という書き込みであり、事実が適示されてるとは言えない。

・「公然と」→ここで不合致。KING氏がスクショを公開していたとはいえ、行為の段階で公然性があったとは言えない。

不合致が見つかったため以下略。

1点だけ悩むのが、「リスイン」である。リスインとはリストに入れるということだが、風船氏の作成したリストの名前は看過できるものではない。が、それが第三者へ周知されることを伴うかというとそうではないだろう。非常にグレーである。

名誉棄損罪でもなければ侮辱罪にもなりそうにない。次に行こう。



3.自殺関与・同意殺人罪(内・自殺教唆罪)

・名称が長くて混乱すると思うが、自殺関与・同意殺人罪は総称であり、その中に「自殺教唆罪」「自殺ほう助罪」などが含まれる。

今回該当する可能性があるとにらんだのは「自殺教唆罪」である。

・自殺教唆罪は、刑法202条により制定されているものの一部で、その条文は「人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、6月以上7年以下の懲役又は禁錮に処する。」である。

...........だいぶまとめてあるが、「教唆」「幇助」「同意殺人」が一緒くたになった法律である。構成要件はかなり曖昧で、「そもそも自殺の意思がなかった教唆された側が自殺を決意するよう唆し決意させること、または実行させること」。では今回のケースと比較して見てみよう。

「教唆された側が自殺を決意し、実行したか?」→見る限りでは実行しておらず自殺を決意したわけでもなさそうである。ツイートで、

KING氏:「確実につくのは【迷惑行為防止条例違反】、あとは【脅迫罪】と【名誉棄損】で捜査されるようです。」《2020年08月13日 PM02:04》

参照:https://twitter.com/KING01273779/status/1293775510527332352?s=20

うーん、先ほど言ったように「名誉棄損罪」はおそらく適用されないだろうという見解だが、警察は一体どういった視点で名誉棄損該当可能性を示唆したのだろうか、気になるばかりだが、まだまだ検証は道半ば。次に行こう。


4.脅迫罪

・読んで字のごとく。そのまんま。知らない人のほうが少ないんじゃないか思う法律。さて、この「脅迫罪」は刑法第222条に制定されるもので、条文は「1項・生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。2項・親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。」というもの。

・構成要件はちょっと複雑。「実行行為」「結果」「故意」の三つから判断する」..........と長々と説明する前に、はっきりと結論から申し上げる。今回のケースは脅迫罪には該当しないだろう。

脅迫罪の構成要素をわかりやすく端的に言い換えると、「被害者本人や親族の生命、身体、自由、名誉または財産に対して害を加えることを告げて、人を脅迫した場合」となる。そもそも今回のケースでは風船氏が「KING氏のなにかしらに害を加えることを予告している」わけではない。脅迫罪に該当するのは「殺すぞ」「お前の家に火をつけてやる」「ネットでばらまくぞ」などの実行を暗に示すものである。今回の場合で「死ね」という言葉は確かに生命に関することだが、それらに危害を加える旨の発言ではないため「脅迫」の要素があるとは認められないと推察されるのだ。

疑いで立件することは出来ても起訴はできない可能性が高いだろう。

また、「ペニスと金玉を神様に返却してこい」はどうかと考えたが、それも脅迫にはならない(そもそも行為が意味不明)だろう。


...........警察は大丈夫なのだろうか...............追加で睨んでるものが悉く外れてしまってはKING氏も報われないだろうに。。。。

では次に行こう。


5.強要罪

・個人的には一番ありえると踏んでいた「強要罪」。これは、刑法223条にに制定される法律で、条文は「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者」。

構成要件は以下の3つ。

1・生命、自由、身体、財産、名誉に対し害を加えると告げる行為
2・脅迫・暴行を用いる行為
3・義務ではないことを強要したり、権利行使を妨害したりする行為

……どうしたものか、まったく当てはまらないような気がしてきた。

一応照らし合わせてみる。

1→「死ね」は害を加えると告げる行為ではないため不合致

2→脅迫の概念にもよるが、ここはグレーゾーン。

3→死ぬことはKING氏にとって義務ではないため合致する。

構成要件に不合致であるのは明白なので、これもまた不成立になってしまった。


Topics 構成要件の5機能
1・罪刑法定主義的機能 - 処罰される行為を明示する機能
2・犯罪個別化機能 - 成立し得る犯罪の罪名を明らかにする機能
3・違法推定機能-構成要件に該当する行為は原則として違法であり、違法阻却事由があれば例外的に違法性が阻却されるという機能
4・責任推定機能-構成要件に該当する行為は原則として有責であり、責任阻却事由があれば例外的に責任が阻却されるという機能
5・故意規制機能-故意があるというために認識の対象として必要とする客観的事実を示す機能

細かく説明することは避けるので知りたい人はネットで調べてみてほしい。


どうしたものか、用意しておいた論がほとんど不成立である可能性のほうが色濃くなってしまった。

次が最後である。


6.迷惑防止条例違反

出来ることなら触れたくなかったのですけどね(本音)。

・迷惑防止条例違反というのは都道府県の自治体ごとに定められてるもので、すべてが共通事項というわけではないということに留意していただきたい。

仕方がないので東京の迷惑防止条例に絞って論を進めることにする。

参考:https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/about_mpd/keiyaku_horei_kohyo/horei_jorei/meiwaku_jorei.files/meibou.pdf

・・・・・・5回ほど往復した。悪い予感は当たるものである。


「どこにも該当する文言がない!!!!!!」


確かに以前痴漢の件で調べていた時に一通り読んではいたものの、やっぱりなかったかあ…という感想である。

一体KINGさんの担当となった警察官はなにをもって、どこの文面を参考にして、「迷惑防止条例違反である」と断言できたのだろうか。気になるばかりであるが、「他県である」可能性から100%該当しないとは言い切れない。さらに、迷惑防止条例違反で捕まった場合は東京都の場合最大2年の懲役、もしくは100満円以下の罰金という比較的軽い刑であることが多いというのも付け加えておこう。



・まとめ

・・・・・・・・?

もやもやする。書き始めたころは、風船氏がどういう刑罰を受けるのかを推測で話すだけにしようと思っていたが、調べれば調べるほど「あれ....これ罪に問えるのかな.....」と不安さが増していき結局私が挙げたすべての法律・条例で「絶対にこの罪に問えるはず!」というものは無く、逆に「いやこの罪には問えないよね…」というものばかりになってしまった。

そもそも、匿名同士で、しかもDMという閉鎖空間で発せられた言葉が何かの罪に問えると考える方が間違いなのかもしれないと思い至った。調べてみると、「HNから自分が特定されない状態での名誉感情侵害行為によって現実に権利侵害ありと認められるケースは、かなり限定されるのではないかと思う。」《出典:http://aoigyousei.sakura.ne.jp/aoi007/nb004.html》や、「ハンドルネームに対する誹謗中傷は、誰に対する誹謗中傷かが明確となっておらず、被害者の外部的評価を低下させることにならないので、名誉毀損が成立しないのです。要するに、ネット内でのハンドルネームの評価が下がったとしても、現実であなたの社会生活に対する評価が下がることにはならないため、名誉毀損が成立しないということです。」《出典:https://itbengo-pro.com/columns/189/#toc_anchor-1-2》

と、「匿名同士だと権利侵害とは言えない」と明言するものが多くみられた。確かに、風船氏が他人に対して暴言を吐き傷つけたことに変わりはないし、謝罪するべきだろう。だが、今回のケースでは彼が何らかの罪に問われる可能性はかなり低いと考えられるのもまた事実である。


現段階《2020年08月13日 PM06 :54》でKING氏は警察署へ届け出をして、受理番号まで受け取っているそうである。警察は何らかの捜査をするだろうが、一体どういった罪状を念頭に捜査するのか非常に興味深い。

風船氏が今後どういった罪に問われていくのか、はたまた処罰はされないのか。経過を見守っていくことにする。

最後に、本記事は風船氏(@J.K Balloonmen)の無実を保証するものでも、KING氏(@KING01273779)の行動が間違っていると指摘するわけでもありません。ましてや、Twitter上の誹謗中傷行為を推進するものでもありません。あくまで一個人の意見として受け取っていただければと思います。

もし、「この罪に該当するかも!」というご意見がありましたら、TwitterDMまでお寄せください。



2020.08/13 PM07:00

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