第一夜 (続き②・完)
前のお話
夜の空に、大きな花が咲く。
次の瞬間、どん、と胸に響く音。
毎年見に来ていた花火大会。隣に君はいない。
「今年も、咲いてるかな」
そう思いながら、足元に目を向ける。
二人で見つけた白い花。
「ほら、今年もちゃんと咲いてるよ」
君は毎年嬉しそうに笑っていた。
そっとその花を手のひらに乗せる。繋いだ手の温もりを思い出すように。
***
帰りの列車に揺られる。
窓を少し開けると、夜の風が頬を撫でる。
遠くでまだ花火の音が響いている。
夏の夜の匂い。
ふと、あの頃の君の横顔を思い出す。
「また来年も、一緒に来ようね」
僕は何と答えたんだっけ。
***
朝。
歯を磨き、朝ご飯を食べる。窓の外を見ると、丘の向こうに大きなふくれ雲。
その瞬間、胸の奥がざわつく。
気づけば、足が勝手に動いていた。
白百合が香る道を、夢中で駆ける。
風が背中を押すように、ただまっすぐに。
そして、そこで君に出逢った。
変わらない笑顔で僕を見つめていた。
「ずっと待っていました」
僕の心は激しく震えた。
君の声が、温もりが、確かにそこにあった。
目が覚めた。
窓を開ける。静かな風が吹き込み、夏の朝日がいつもより眩しい。
その時になってはじめて、顔がぐしゃぐしゃにぬれていた事に気づく。
歯を磨き、朝ご飯を済ませる。習慣のように手帳を開き、日付の横に「晴天、風は穏やか」と書き留めた。
※これはヨルシカの楽曲、「第一夜」を元に制作したものです
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