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残暑厳しい東京湾で探鳥:シギチは冬羽に衣替え

休日の早朝。
一度訪ねてみたかった探鳥地に行くため、早起きした。
鳥枯れの時期でも野鳥たちで賑わっているという。
まだまだ残暑厳しく、朝のうちに探鳥を終わらせたい。
その場所は干潟のため、早朝と干潮とが重なる日を狙って訪れる。
京葉線に乗り東京駅から26分。二俣新町駅で降りる。

二俣新町駅に到着。

駅から徒歩20分余りの所にある三番瀬。
バーダーの間でとても有名な探鳥地だ。
東京湾の奥、千葉県の海岸沿いにある。
この時期、シギチたちに会うことができる。
シギチとは、チドリ目に属するシギ科とチドリ科の仲間の総称だ。

7時前、入口に到着

海岸までは徒歩数分。
目の前に広々とした干潟が広がる。
この日の干潮時刻は4時半。
潮が満ちる前に鳥を探そう。

干潟が広がる
サギたちが集まっている

これほど多くのダイサギが集まっているのを見るのは初めて。
安全地帯なのか、皆くつろいでいる。
干潟のあちこちでウミネコが佇み、ニャーニャー鳴いている。
近づいてもあまり逃げない。
人馴れしているのかな。

近い近い

干潟を見渡すと、水際に小さなシギチたちが集まっている。
早速一羽が目の前をトコトコ通り過ぎる。

チュウシャクシギ

初めまして。
くちばしが少し下へ曲がるチュウシャクシギ。
旅の途中に日本に立ち寄ってくれたんだね。
いきなりのライファー(初めて観察できた鳥)登場に、心躍る。

キアシシギさん、おはよう

既にバーダーさんが数名集まっている所に近づいてみる。

オオソリハシシギだ
ペアで行動している

初めまして。
くちばしが反るからソリハシ。
採餌しやすいように進化した。
長いクチバシが邪魔じゃないのかな。

それにしても特徴ある外見ならともかく、集まるシギチたちが私には皆同じにみえる。
それもそのはず。
越冬のため南に向かう途中で日本に立ち寄った旅鳥の彼ら。
繁殖期の夏羽から冬羽に衣替えが始まっている。
みんな地味な茶色や灰色だ。

こんなふうに

シギチ初心者には見分けがつかない。
とりあえず写真に残して、あとで本やGoogleレンズ先生で確認しよう。

彼らは餌探しに夢中で、私たち人間が近寄っても逃げない。
水が引いた砂浜に生き物たちがうごめいている。
夏は潮干狩りで賑わう三番瀬。
彼らの餌となるゴカイやカニが豊富にいるらしい。

小さいカニが歩き回っている
のんびり歩くオバシギ

初めまして、オバシギさん。
名前の由来は諸説あり、尾羽が白くて目立つからだとか、見た目が地味で動作がゆっくりなため「姥(おば)」シギと呼ばれたとか。
大阪のおばちゃんが聞いたら「ちゃうちゃう」と反論しそうだ。

こちらはハマシギ

ハマシギも初めまして。
彼らもくちばしが少し下に曲がっている。
繁殖期は赤茶色になるらしい。

この日多かったのはこちら。

ダイゼン
喉から腹まで黒い夏羽が残っている
こちらは冬羽に生えかわっている。手前にオバシギ。
かわいいなあ

ダイゼンも初めまして。
チドリ目に属し、春と秋に見られる旅鳥だという。
体長29㎝、ハトほどの大きさだ。
その名の由来は平安時代に遡り、宮中の食事を作る「大膳職」がこの鳥を美味と評したことにあるらしい。
味に興味はあるが、こんなかわいい鳥を食べようという気にはなれない。

餌探しに疲れたのか、あちこちで座るシギチ。
可愛らしい様子にキュン死する。

こっちにも
こっちも
可愛くないがウミネコだって座る

可愛すぎやせんか、君たち。
可愛いライファーが続き、暑さを忘れて干潟を歩き回る。

干潟をトコトコ歩く小さい鳥を見つける。

メダイチドリだ
明らかにこちらを警戒している

まだ若いのかな。色が薄い。
チドリ目の中でも目が小さいとされるが、クリっとした目が可愛い。

少し離れて、お腹の白が目立つ小さな鳥が餌を探している。

トウネンだ

初めまして。
トウネンもチドリ目シギ科の仲間。スズメくらいの大きさだ。
名前の由来は、体が小さく「当年生まれの子」と思われたのが由来らしい。
名付けがテキトーだ。
もう少し可愛い名前を付けてあげても良いのにね。

同じようにお腹の白色が目立つ小鳥が集団で歩いている。

ミユビシギのようだ
目の前を駆け足で去っていく

ミユビシギさん、初めまして。
後ろ指が無く3本指だというミユビシギ。
恐ろしく足が速く、トトトトトと目の前を駆け抜けていく。
波打ち際を走り回り採餌するらしい。
こちらもとても可愛い。
一度、冬のモフモフ大集団を見てみたいな。
こんなやつ。

https://www.love-birds.net/2012-01-04sanderling/からお借りしました

少し離れた水辺に黒っぽい鳥が一羽降り立つ。

ミヤコドリだ

初めまして、ミヤコドリさん。
こちらもチドリ目に属し、越冬のためユーラシア大陸からやってくる冬鳥だ。
古くからユリカモメが「都鳥」として作品に読まれていたが、江戸時代にこの鳥が都鳥だと言い張った人がいて、結果的にこちらがミヤコドリと命名されたとか。
いつも思うのだけど、鳥の命名については色んな事情や歴史があるんだね。

ウミネコ集団に交じる、一回り大きな鳥を見つける。

オオセグロカモメの幼鳥のようだ

オオセグロカモメも初めまして。
体長61㎝、羽を広げると150㎝を超えるらしい。
普段は東北地方より北に住んでいる。
ウミネコに混じり1羽ぽつんと佇んでいる。
群れからはぐれてしまったのかな。
初めましての鳥が多すぎて、私の頭はもはやパンクしている。

もちろん、おなじみの鳥も健在だ。

勝手にタイトル「ダイサギの青春」
背中で語るアオサギ先輩
ウミウかカワウの群れが一斉に飛び立つ
潮が満ちてきた

時刻は9時。
この日も熱中症警戒アラートが出ている関東地方。
気温は既に30℃を超えている。
干潟は日を遮るものが無く、汗だくになっている。
もっとバーダーさんが多いと思ったが、この暑さで10名程度しかいなかった。

今回滞在時間は2時間だったけれど、たくさんのシギチに会えた。
ライファーは10種類、結果に大満足。
前日仕事でショックな出来事があり気分が滅入っていたが、鳥を夢中に追っかけているうちにどこかに飛んで行ったようだ。
また季節を変えて、今度は涼しい季節に来てみよう。
三番瀬を後にする。