あなたは寝ていい、音楽が寄り添うといい（詩）

不安で眠れない、不安で眠れない夜は、音楽が寄り添うといい…いいな。それはすっごくいいな…。

ピアノの音で始まるといい。かんたんな、よっつの音のくりかえしが、リズムと予兆をつくってくれる、いい…それはいいな…寄り添うみたいにコントラバスのピチカートが…いい…ピチカートがおなじようによっつの音をはじいて…いい…あそばせて…寄り添うと…いい。それはいいな…すっごくいいな…。

ビオラがピアニッシモで歌いはじめると…いい。ひとつのやさしい音を…時間に伴って…やさしい音はもっとやさしくなると…いい…そうして、やさしいということが、やわらかく、かわいた音で、やさしく伝わると…いい…いいな、それは…。

チェロののびやかな音が、ひとつのメロディをくりかえし奏でてもいい…あとで…やってくるヴァイオリンと…きっときてくれるヴァイオリンと…ポリフォニーを作っても…いいな…それは、いいな…。

しずかに、音が重なって…しずかに、音がきえていくと、いい…ピアノがヴァイオリンと重なりあって、ビオラがチェロと寄り添って…いい…

コントラバスチェロ、チェロビオラヴァイオリン、コントラバスビオラピアノ、ピアニッシモ…ピアニッシモ…ピアノヴァイオリン、ヴァイオリンコントラバス…コントラバスチェロピアノヴァイオリン…ヴァイオリンピアノ…ヴァイオリン…ピアノ…ピアノ…ピアニッシモ…ピアニッシッシモ…

パイプ椅子。椅子を引く音…ピアノの蓋が、しまる。ケースの金具が、閉じる。譜面台が束ねられる。楽譜が閉じる…足音。ホールのなかを、靴の音がひびく…コツコツと、百年のノックが、コツコツと…カーテンの裏に…いつかたぶん、また…始まるんだろうな…コツコツと…

私は待っている。つぎの音楽が、鳴り出すのを…待っている。待っているということが、いいことなのかは、わからない。
いつ、始まるのかは、わからない。

わからないな、それは…。