ビール傘
午後22時 駅前居酒屋にて
女同士の飲み会。決まった場所で決まった「久しぶり」を交わす瞬間、溜まっていた疲れがどっと噴き出す。
「マジで無理でさぁーすぐ振ってやったし」
A子の恒例の恋愛トークだ。内容は大して変わらないが相手の男はコロコロと変わる。
「え、マジあり得ないわ…」
B子はレモンサワーを飲み干して言う。
それぞれ飲む酒の種類は違うけれど、私はいつもビールを頼む。A子によく
「おじさんじゃーん(笑)」と言われるが気にしないようにしている。
「ビールってさぁ彼氏いると飲まなくならない?」
A子はいつも私を皮肉るのが上手い。
「そうかなぁ…私ビール好きだしなぁ」
当たり障りのない回答でその場を濁した。
B子「A子前言ってたよね~男は女のビール傘って!」
『ビール傘』変な響きの言葉。
「男がいると浴びるように飲まなくなるからビール傘。どう?いいでしょ」
そんな彼女達を横目に店員さんを呼ぶ。
「生中おかわりで」
店員さんの爽やかな笑顔が忘れられなかった。