テニスサークルと高円寺のスナックのママの話

けっこう前に高円寺のスナックのママから謎のテニスサークルに誘われて一度行ってみた。

私は運動神経がいいので、テニスがやけに上手かった。

コーチが「君、かなり素質があるよ!」と言って、目を輝かせながらやたら私に指導した。

それを見ていたスナックのママが「ねえ、コーチ、どう?独身よ?」と言い、私は「いえ、コーチは私のテニスの才能に入れ込んでいるだけで、私自身を愛しているわけではないですよ」
とか言ってたら、じゃあ他の男性を紹介すると言ってきた。

なんか、めんどくさいな…となり、テニスには行かなくなった。

それからかなり年月がたち、そのスナックのママに再会した。少しめんどくさい人特有の『意外と細かいことは気にしない』タイプの人だ。私がテニスに行かなくなった事は全く気にしていないようで、嬉々として最近のテニスサークルの状況を私に話してきた。

「男の人が入ってきて、その人は結婚してるんだけど10年子供ができないんだって!」
「はあ…」
「だからさ、奥さんもテニスやりな!って言ったの!」
「え?」
「テニスやって体強くしたら子供できるわよ!って!」
「え?」
「運動しないとだめなのよ!そういうの関係あるのよ!」
「え?」
「運動しないから子供できないのよ!って!」
「え?」
「そしたらさ、その人が奥さんにそれを伝えてさ、すぐ奥さんもテニス始めてさ!」
「え?」
「テニス始めたからこれで子供できるわよ!って」
「え?」
「そしたらさ!できたのよ!すぐに!」
「え!?!?!?」
「10年できなかったのに!すぐに!」
「え!?!?!?!?」
「で、こないだ生まれたの!!」
「え!」
「ほんとによかったねって!」
「それは…本当によかったですね…!」

たぶんテニス関係ないよな、完全にデリカシーも無いし

でも、なんかいい人だな、って思った。
私は、デリカシーの塊みたいな昨今に生きながら、そうやって生きながら、こういう人に少し飢えているのかもしれない。

たまに会うぶんには、ですが…


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