もう少しで幼稚園がオープンできそう

モザンビークでインクルーシブ教育を実践する幼稚園を開設するために準備を進めている。2月5日からオープンということにしている。少し遅れるかもしれない。
もちろんオープンまでにクリアしないといけない課題はまだあるのだが。
 
 2022年の1月から会社を作って自閉症児への個別療育支援を始めた。セッションがあるときに保護者と子どもが教室に来てカウンセラーと2時間ほど時間を過ごすという形態なのだが、そうすると保護者の送迎の負担がどうしても大きくなる。一日子どもを預かれるようにしたいなと思うようになった。
 
 また、日本で私たちがモザンビークで提供しているようなサービスを受けようと思ったら、私たちがこちらで徴収している月謝よりもはるかに安い金額で済むということを教えてもらう機会があった。日本の場合は行政から補助金が出て保護者の負担がかなり軽減されているのだ。行政から民間企業への補助金はモザンビークの場合は期待できない。もしくはそうした支援を引き出すための政治力はない。いずれにせよ保護者からの授業料のみを資金源として運営するのはあまり望ましい形態ではないなと思うようになった。
 
 さらに、教育や福祉の分野では主に非営利団体が活躍しており、民間企業としてはそうした団体と差別化して独自性を打ち出す必要がある。例えば差別化の一つの切り口として超富裕層を対象にするというのが考えられるが、そういうことをしようとすると結構な投資(ラグジュアリーで都心からアクセスのよい教室とか、海外博士号持ちで英語が堪能な専門家とか)が必要そうで全然ピンとこなかった。そういうお金持ちは探せば何かしらサービスがあるだろうし。
 では非営利団体と同じようなカテゴリーで競争をするとなると、免税と寄付や助成金で運営を行う非営利団体と授業料のみの民間企業だと負け確定になる。というわけでじゃあ自分たちも非営利団体を持てばいいんじゃないかということになった。
 
 2022年当時は「来年(2023年)に幼稚園をオープンします」と根拠なく言っていたのだが、様々な要因が重なってどうやらもうすぐ実現しつつある。ちょっと遅れてはいるがそんなもの誤差だ。でもまだ本当に実現するか疑ってもいる。なんせモザンビーク側で申請していた非営利団体(財団)の承認を得るのに一年以上かかっている。2022年の確か10月頃から弁護士に相談を始めて、2023年の12月に一旦承認が出て、若干の修正を経て今週月曜日に修正版が発行された。とんでもなく待った。ちなみに登記に関する諸々をお願いしている弁護士は、「大体三か月ぐらいで完了します」とかなんとか言っていた。
 
 行政側の対応がひどいのはもう普通なのだが、今回は輪をかけてひどくて、やりとりを始めて半年以上してから行政側の担当者が「非営利団体(財団)の承認手続きの進め方がよく分からない」とか言い出して、じゃあこれまで提出してきた諸々は一体なんやったんやと。最初から誰か知っている人同僚に聞けやと、ほんまにどういうことやねん。担当が内部でプロセスを確認後、本当に必要な書類を提出したところ非営利団体(財団)の承認は下りた。担当が引継ぎをせずに長期休暇に入ったとかシステムがダウンしていてプロセスを進められないとか細かいことはあったがまあ承認は下りた。あとは納税者番号の取得や公告や銀行口座の開設など法人設立に当たってのよくあるプロセスを踏むだけだと思っている。もしくはそう願っている、心から。
 
 というわけで非営利団体の登記についてはもうちょっとで終わるはずだ。資金面についてもありがたいことに今回の幼稚園の設立と運営はJICAとの共同事業ということになった。『2023年度世界の人びとのための JICA 基金活用事業』の覚書きを先週取り交わして一年間の事業がスタートした。事業名は、「モザンビーク国マプトにおける合理的配慮のある幼稚園の設立・運営」という。この枠組みは主にエントリーレベルの非営利団体が対象で、一事業当たり100万円の資金と経験豊富な有識者の助言を受けることが出来る。
 
 去年の始め頃に応募したところ、JICA関西の方から連絡が来て、何回かオンラインで打ち合わせを経たのちに6月に採択された旨の連絡が来た。そこまではよかったのだが、採択後「事業を開始するには日本に団体名義の銀行口座が必要」といわれて、これにはかなり困ってしまった。当時は法人格のない任意団体として応募、採択されていた。この応募をする以前に、一度任意団体名義の口座開設を試みたことはあったのだが、指示された資料を提出してしばらく待って口座開設を断られたことがあった。その時断られた銀行はゆうちょ銀行だった。もうちょっと前だと任意団体でも口座開設がやりやすかった時期もあったらしいがここ数年で厳しくなったそうだ。
 去年の6月はまだモザンビークで会社員として勤務しており日本に簡単に戻ることも出来ず、どうしようか保留していたのだが、採択から一年以内に事業が開始できない場合は採択が取り消されるということで、最悪そういうことになるのかなと思いつつも、JICAのプログラムが採択取り消しになったとしたら心証が悪すぎるし、恐らく組織内で記録が残るだろうし、日本の国際協力を行う団体でJICAからの評価が低いというのは、ちょっと想像できないレベルでネガティブなことだろうし、今振り返るに結構ピンチだったかもしれない。
 
 手をこまねいていたというか、仕事でそれどころではなくて放置していたところ、9月末に予期せぬ形で勤務先を退職することになり、失業保険やらの手続きで日本に帰国することになった。この際だからと帰国時に日本で一般社団法人を設立して、任意団体の業務を新しく設立した法人に引き継ぎ、一般社団法人として団体名義の銀行口座を開設した。幸いなことにモザンビークと違って日本での法人設立のプロセスは分かりやすく、ネットで調べて必要な書類を準備して提出したら完了した。協力してくれている友人や家族に感謝している。
 法人化後はネットバンクでわりとすぐに口座開設ができた。ゆうちょ銀行の口座も開設できた。三井住友銀行はなぜか「総合的な判断」により開設をお断りされてしまった。そうしたプロセスを経て無事に覚書の締結に至ったのがつい先週という流れだ。なお2024年度の「世界の人びとのための JICA 基金活用事業」の募集はもう始まっており、募集要項を読んだところ応募の要件として、「事業開始前までに団体名義の銀行口座を用意すること」と記載されていた。運営のアップデートにちょっと貢献できたらしい。
 この事業はJICA関西と進めており、担当者は以前の勤務先がインクルーシブ教育に関連した職場で、個人としてもこの事業に興味があるとのことで、一担当のレベルを超えて面倒を見てくれている。伴走者(NGO経験が長いアドバイザーのような方。事業開始前と事業途中にアドバイスをくれる)も非常にざっくばらんな方で、形式にとらわれず、実質的なアドバイスを頂けている。とんでもなく恵まれている。
 
 幼稚園オープンまでにクリアしなければいけない課題はまだあって、分かりやすいものとしては、ビザと幼稚園を開くライセンスの取得とさらに結構切実なのが集客だ。

 JICAからの事業経費のサポートがあるとはいえ、子どもに来てもらわないことにはすぐに資金がショートしてしまう。なおJICAの資金は三か月毎に領収書を送って清算してもらう形式なので、モザンビークで使ったお金が最初に手元に届くのは4月以降になる。
 
 まあ一個一個クリアするしかない。
 
↓Syncableというサイトから私たちの団体に寄付をすることが出来ます。
よろしければご支援をお願いします。
 
モザンビークの新しい教育を支援する会
https://syncable.biz/associate/education-moz

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