Review-#014 『うちのメイドがウザすぎる!』

(おっぱいのついた)イケメンでも事案


 ようやく折り返しを迎えた「アニメを観たので感想を書く」コーナー第5弾です。分かりやすいタイトルでいいですね。後々もっと分かりやすいタイトルの作品が登場するんですが。何か自ら公開処刑している感じがして良いね、ここまでくると。

 これは一体どんな作品なのか、と申しますとタイトルの通りです。いわゆるおねロリを題材にした作者曰く「ピュア百合」作品。うーむ、ピュア百合かぁ…
 ただハッキリしているのが ――今回は3作百合系作品を取り上げる結果になりましたが ―― 一番ヤバいのはこの作品だということです。ヤバいというのは別に出来が悪いという意味ではありません。むしろ出来は良いんです、このアニメ。別のベクトルでヤバいんだよ、このアニメ。

 語彙力が低下しそうな気配がぷんぷんと漂っていますが、最後までしっかりと紹介していきたいと思います。

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<今回紹介する2018年秋アニメ一覧>
SSSS.GRIDMAN
青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない
やがて君になる
となりの吸血鬼さん
うちのメイドがウザすぎる! ←いまここ
抱かれたい男1位に脅されています。
宇宙戦艦ティラミスⅡ
ゾンビランドサガ
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うちのメイドがウザすぎる! (2018年10月-12月)

アニメーション制作:動画工房
監督:太田雅彦
シリーズ構成:あおしまたかし

<TVアニメプロモーション映像>

<☟原作コミックもどうぞ>
うちのメイドがウザすぎる! (月刊アクション連載・2016年10月~)

作:中村カンコ

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【ストーリー】ウザいっていうかキモいっていうかヤバい

 何がヤバいのか、を紹介する前に本作のあらすじ。

 元航空自衛官の鴨居つばめ(かもい ―)は、仕事探しの帰りに立ち寄った家にて「家政婦募集」の文字が目に入る。それまで自らの理想と合致した職が見つからなかった彼女はこれに食いつき、早速「高梨家」のメイドとして働くことに。
 しかし高梨家の一人娘、高梨ミーシャ(たかなし ―)はつばめのことが気に入らず追い出そうとする。つばめも負けじと、あの手この手で仲良くなろうとするのだが…。


 …本作を綺麗に書こうとすると、私の文章力ではこれが限界でした。

 何故かと言えば先に述べたように、色々とヤバいからです。第一にヤバいポイントとして、「おねロリ」「ピュア百合」という単語、もっと言えばそもそもの原作者名からある程度想像できる人もいるかと思いますが、鴨居つばめが相当のロリコンだということです。
 どの程度のロリコンかと言えば、第1話の時点で大体把握できます。どうも彼女は同性から告られることが多かったようなのですが、相手をフるための文句が

 「ごめん、初潮過ぎた子に興味はないんだ

 ですよ。最低でしょう、この断り方。


 あらすじの中にある「理想」って、「白人美幼女に自前のフリフリの洋服をとっかえひっかえ着せ替えてキャッキャウフフする」ですからね。これをハロワにて、真っすぐな目で言ってやんの。ねぇよ、そんな求人。でもあっちゃったよそんな求人! まだ洋服をとっかえひっかえ…までは出来ていないようですが。

 原作者の中村カンコ女史、何でもあの幼女とキャッキャウフフする成人向け雑誌『コミックL○』に幾つか作品を出しているそうなんですね。
 …調べました。わぁ…この人ガチや。「女のロリコン!!! 超きもい!」とはミーシャの弁ですが、何これ熱い自虐ネタかな?? 調べる際は自己責任でよろしく。後悔しても知りませんよー。

 それともう一つ、つばめのヤバいポイントは筋肉量。シックスパックにお腹が割れ、腕や脚もムキムキな彼女は、その逞しさを活かしてアクティブにミーシャと触れ合おうとします。時にはコスプレで正体を隠して近づこうとするも、隠しきれない筋肉の御蔭で大体直ぐにバレるのがお約束。一回おまわりさんにしょっぴかれていたり。おい元公務員。

 そうそう、本作のアニメ化に伴い応援団長として採用された腹筋アイドルの才木玲佳女史についても触れておきましょう。
 彼女は生放送や主題歌のMV等で沢山登場しているのですが、こちらも非常に逞しくひょっとしたら2次元以上に凄い女性に見えるかも。どのぐらい凄いのかはとりあえずこちらのOP主題歌のMVを観てもらえれば解るハズ。楽しいカレークッキング、そして逃れられぬ最後の晩餐
 私が観てきた中で、ここ数年において一番曲を聴かせる気のないMVでした。アニメのOP映像で幻覚が視えたら貴方も立派な筋肉中毒者です。


 さて、『ヨルムンガンド』のバルメに似て非なる最強の変態に立ち向かうのはココ・ヘクマティアル…ではなくて、プラチナブロンドの翠眼ロシア系美少女である高梨ミーシャ。

 ミーシャは一般的には男性名「ミハイル」の愛称ですが、この作品のミーシャは正真正銘女の子です。ミーシャの母が大好きなアニメから取った名前なんだそうで。原作コミックのみのシーンですが、つばめも名前の意味を知ったときにミーシャが男の娘なのかと疑ったこともあります。本人はお風呂で見た時に生えてなかったということで納得したみたいですが。最低。

 つばめの前にも何人か家政婦が来ていたものの、お転婆な悪戯(おもむろにバナナを床に設置する、洗濯物に火を放つなど。お転婆…?)で追い払っていました。ここまで余所者を嫌う理由には、彼女自身の幼くも切ない心情が関わっています。
 当然、鴨居つばめに対してもあらゆる手段を講じて追い払おうとするものの、圧倒的な力の暴力には敵うわけもなく…。つばめは「ウザい」…のは確かだけれど、「キモい」とか「ヤバい」の方が勝っている気がします。


 元々原作は「ピュア百合アンソロジー ひらり、」にて『つばくま!』というタイトルで掲載されていたもので、「ひらり、」の休刊にあたって「月刊アクション」に移籍、より分かりやすいタイトルにしようということで現在の作品名になったという経緯があります。
 …ピュア百合、かなぁ? アクションの担当者からは間接的に「汚いおねロリ」扱いされていたようですが。
 月刊アクションと言えば2017年にアニメ化された『小林さんちのメイドラゴン』、こちらもメイドでしたね。因みにコミックス1巻が発売された時の帯ではメイドラゴンであるトールが「このメイドはヤバいですね…」と一言。お前が言うな

 全体としては、一応「ピュア百合」ものとしてはいますが話としてはホームコメディの向きが強いです。高梨家で繰り広げられるミーシャとつばめの攻防戦。家だけではなく、学校などでもやはり繰り広げられています。どういうことか分かるな?


 私がこの作品を観ていて面白いと感じるのは、鴨居つばめ(と周辺)の変人っぷりを抜きにしても楽しいホームコメディになっているという点。

 ミーシャは大好きな母(cv.井上喜久子)を亡くし、日本の学校では自分の外見をじろじろと見られることに抵抗を覚えるなど、心の傷を抱えています。そりゃあ、まだ17歳の母親との突然の別れじゃあ…おいおい。
 ミーシャの父、高梨康弘(たかなし やすひろ)も実は義理の関係で、ミーシャからは「ヤスヒロ」と、パパとはまだ呼んでくれない模様。全体で複雑な事情が取り巻く中、つばめの存在は良くも悪くも高梨家に新たな風を運んでくれるようです。

 鴨居つばめのヤバさはここまでに書いたことだけでも充分伝わったかと思いますが、そこを差し引けば有能な人物でもあります。家事全般をこなし、特に料理の出来は一発でミーシャの胃袋をガッチリと掴むほど。あーあ、それ9割方落ちてるのと同義だよ。

 大人の立場からアドバイスを送りつつも、いつもの変態っぷりで見事に汚名挽回(誤用じゃないよ)を果たすつばめ。そんな彼女に辟易しながらも、少しずつ成長を見せていくミーシャ。基本的にはほっこりしないけど、時々ほっこりしかけることもあり…要は肩の力を抜いて(ほぼ一方的な)キャッキャウフフを楽しめる。そんな感じです。
 万人受けするようなものでもないとは思いますが、少なくともつばめとミーシャの間で一線を越えたことはしていないので、その辺はご安心(?)を。何よりコメディ色が強めの作品なので、変に真に受けることなく観るのが吉。

 登場人物は高梨家以外にもいますが、残念ながら大体変な人ばかりです。特に第6話から登場する鵜飼みどり(うかい ―)の存在が…。人によってはつばめ以上にヤバい印象を受けるかもしれませんね。しかしアニメでありがちな中だるみ現象が、みどりんの登場によって上手い具合に緩和されています。
 何はともあれ賑やかになっていくのですが、ミーシャも話が進んでいくにつれて変質者の扱いに慣れてきたのか諦めたのか、ツッコミのキレが上がっています。小学2年生とは思えない大人びた部分もあれば、美味しいものやふわふわの動物に目がない年相応な部分もあるミーシャ。ロリコンかどうかは関係なしに可愛いと思います。


 贅沢なコトを言うと、アニメオリジナルのパートにもっとキレが欲しかったかなと。
 尺の都合上ということもあるんでしょうけれど、例えばみどりん登場回だとアニメオリジナルの回想&本来だと別のエピソードで語られる話(中身はもちろん通報案件)を織り込んだ為、ちょっとテンポが悪いなぁとは感じました。このアニメの脚本を手掛けるのであれば相当のロリコンになりきらないとダメなのかなぁ。ハードルが高い。

 ついでに、本作の終盤はアニオリ展開です。2話に渡ってシリアスが入ります。ここで難色を示す人もいるかもしれませんが、どこに着地させるかというのは第1話の時点で触れられていたので、そうなった以上真剣にやらざるを得ないよねという面はあると思います。コメディを期待していた人にとっては納得がいかないかもしれないが。まぁ、確かに無理矢理感はあった。シリアスの持って行き方に。
 それでも、(アニオリ解釈が含まれているものの)心の傷を抱えたミーシャと、光を欠いたつばめとの心の距離が、少しだけ縮まる展開にはじーんとくるものがありました。皆が気になる、つばめの眼帯の謎にも触れられているぞ!

 あと惜しいのが筋肉描写が回を重ねるごとに少なくなっていること。
 もっとつばめのマッシブなシーンを入れていいのよ?

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【作画・劇伴等】妙に動いて変態度もパワーアップ!

 本作のアニメーションを手掛けるのは動画工房。夏はなんか物足りないと思ったらそうだ、動画工房のアニメが無かったんだ。
 『干物妹! うまるちゃん』と同じスタッフが多いせいか、うまるちゃんっぽい所がそこかしこに見えたりもします。安心のクオリティは本作でも健在で1話からよく動きます。動くとここまでキモく映るもんなんですね。勿論誉め言葉ですよ。
 それと、作画班には中村女史と同じ系統から来た人も参加しているようで。独特な名前がEDのスタッフクレジットに表記されていたら多分それです。動画工房は同期に『アニマエール!』も手掛けていたこともあり、中盤は崩れてるかなぁと思うところもあったけど、トータルとして見れば良いかと。

 原作コミックの方はある意味、もっと凄いけれどね。アニメでは(惜しくも)映されなかったミーシャやつばめに対する中村女史の「こだわり」が見て取れます。月刊アクションだから大事なところはそれでもボカされているけど、コミックL○だったら間違いなく見えてたぞコレ。恐れ入った。アニメを観て興味が湧いたら是非どうぞ。
 しかしまぁ何故、ちょっとレジカウンターに持って行き辛い表紙デザインなのだろうか…いいけどさ、別に。どっちかっていうと性格みどりんに近いし。

 劇伴で記憶に焼き付くものと言えばみどりんの登場時に流れるあのBGM。
みどりんっていいよなー。出るだけで笑いが取れるんだから。
 ミーシャがロシア系ということもあり、ロシア民謡が使われているのも特徴的です。

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【総括】「ほっこりしない系? ホームコメディ」は伊達じゃない

 百合系の作品の中でもかなり人を選ぶ作品であるということは間違いないでしょう。実際1話からヤバさに耐えきれずにギブアップした人、知っていますし。
 ここまで読んでいただけたなら分かると思いますが、つばめのロリコンっぷりをギャグとして受け止められるかどうかが最初にして最大の関門です。
 ぜってーこれ海外じゃ流せないよ。観ている人結構いるみたいだけど。

 評価がGOODとなっているのはそういった強烈さに因るものです。だからと言って他のGREATやAMAZING評価を付けた作品と比較して魅力に欠けているのかと言われれば、そんなことはありません。
 言動のおかげで距離感はなかなか縮まらないものの、つばめ達によって少しずつ、一度は逃げてしまった外の世界へと目を向けていくミーシャの心の成長。変態あってこその作品ですが、変態という部分を抜かして観てもホームコメディに仕上がっているというのが本作のポイントだと考えています。
 多分、変態っぷりが無ければ深夜じゃなくても放送できそうな内容なんじゃないかなぁ…と思うんですがね。

 視聴する際のハードルは高いけれど、そこさえ乗り越えてしまえば愉快なドタバタ劇が楽しめる、そんな作品です。


 で、この強烈な作品の後にまたしても強烈な作品を紹介するというね。
 順番決めたのは私ですけれど。

 『抱かれたい男1位に脅されています。
 どういう内容を想像します? 貴方なら。

〈了〉

©中村カンコ/双葉社・うちのメイドがウザすぎる!製作委員会